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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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ヘアアイロンで髪を整えて、前よりも控えめなナチュラルメイクをして、自分の顔を鏡でチェックする。

「…よし」


「オーカルン!おはよ!」

「あ、綾瀬さん…おはようございます」

いつからだろう、こんな気持ちが芽生えたのは。

最初は「たまたま推しと同姓同名で陰気臭いオカルト好きなヤツ」そうとしか思っていなかった。

けど、一緒に過ごしていくうちに

陰気臭いオカルト好きなヤツから、友達へ。友達から、大切な友達へ。

そして、気づくとオカルンは、ウチにとって大好きな人になっていた。

それ以降、現在進行形で片思い中。いつか振り向いてもらえるように、って頑張ってんの。偉くね?ウチ。

でも、生憎この学校には可愛い子ばっかり。オカルンがいつ目移りしちゃうか不安で仕方ない。

それに、オカルンはウチのことを友達としか思っていないように見える。…今のところは。


まったく、この恋はいつ実るんだか─


「う〜…」

「出た、悶絶タイム」

「またあのオタクくん?お熱うことで」

机に突っ伏し項垂れていると、ミーコとムーコが笑いながら冷やかしてくる。

「ちげぇよ…そんなんじゃないから…」

「「ほんとにぃ〜?」」

「本当だわい!変なこと考えんな!」

「モモー、顔真っ赤だよ?」

「照れてるんだ〜可愛い〜 」

「はぁーー…」


あーもう、マジ調子狂う…。全部オカルンのせいだ。



放課後。オカルンもそろそろ帰るところだろうか と隣のクラスをちらりと覗いてみる。

「あれ〜、オカルン居ない…」

もう帰っちゃったのかな?そんなはずは…

「ねえ、高倉ってさー…」

ふと、廊下から声が聞こえた。

高倉?オカルンのこと?気になり声の方へ行ってみることに。


すると、そこにはオカルンの友達らしき男子とオカルンの姿を目にする。


「オカル…」


…いや、急に割り込んだら迷惑か。それに、なんか話してるっぽいし。

今日は諦めて帰ろう。また明日でも…

「高倉ってさ、…さんのこと好きなの?」



一瞬、体が固まった。肝心な名前の部分は聞こえなかったけど。

『…さんのこと好きなの? 』

どういうこと?オカルン、好きな人いるの?

ウチは壁に身を隠し、こっそり二人の会話を盗み聞きする。


「えっ……い、いや、そんな…  」

「ほらほら、いいから言っちゃいなよ」

「……まあ、はい…」


ズキッ。心の奥が痛んだような気がした。

何してんだよバカオカルン。そこは否定しろよ。


「へえー、具体的にどこが好きなの?」

「え、えっと…優しくて…強くて…あと可愛いくて…」


「…っ」

気づくと、ウチはその場から逃げ出していた。もうこれ以上聞きたくない。


優しくて強くて可愛いとか、何それ。もう勝ち目ないじゃん。ふざけんな。



校舎裏に座り込み、不意に堪えていた涙がポロポロと零れ落ちてくる。

なんだか、たまらなく惨めで恥ずかしくて。そして何よりショックだった。勝手に好きになって変な期待して頑張っちゃったりしてさ。

全部無意味だったんだ。よくある恋愛漫画みたいに現実は上手くいかないもんなんだ。

そう痛いくらいに痛感させられて、抑えようとしても、ぐちゃぐちゃになった気持ちが溢れて止まらない。


最悪だ。こんな思いするなら、最初から好きになるんじゃなかった。


こうして、ウチの恋は儚く散った。



「綾瀬さん!!」


やばい、誰か来た?なんでこんなタイミングで…。

無視する訳にもいかず、涙まみれの顔をゴシゴシと拭いてゆっくり立ち上がる。


「…誰?」


「…!綾瀬さん…良かった!ここに居たんですね…」

「は!?なんでオカルンが…!」

「こっちのセリフですよ!なんでこんな所に…居たと思ったら急にどっか行っちゃう、し、……綾瀬さん?泣きましたか?」

頬に触れられ、思わずその手を振り払ってしまう。


もう良いから。これ以上ウチを惨めにしないで。期待させないで。


「別に…泣いてねーし」

「…嘘。目赤くなってる」

「…っるせぇーなぁ!オカルンには関係ねぇだろうがよ!」


「関係なくないです。大事な人が泣いてるんだから。理由ぐらい聞かせてください」


『大事な人』


そんなことを言われると、嫌でも心が揺らいでしまう。

まだアンタはウチを乱れさせる気か。



「……ごめん。さっきの話、こっそり聞いちゃってて」

途端にオカルンの顔が赤く染まる。

やめて 。他のヤツ考えてそんな顔しないでよ。

「…っ、それで…オカルン、好きな人がいる、って……。なんで黙ってたわけ?」

「……」

「…なんか言えよ」

「おい、オカ…」

「目の前に張本人がいるんだから言えるわけないでしょうが!」


「…は?」



「さっきの話も、ジブンの好きな人も、綾瀬さん、あなたですよ!ジブンの好きな人は綾瀬さんだけ!それなのに綾瀬さん、全然気づいてくれなくて…」


頭の中はハテナだらけ。理解するのに数秒かかった。

…つまり、片思いっていうのはウチの勘違いで。オカルンとウチは、ずっと両思いだったってこと?


「は、はぁ…?何それ…」


一気に顔が熱くなり、バクバクと心臓の鼓動音がうるさいくらいに鳴る。


「だ、だってウチ、今までずっと…てっきり…」

「綾瀬さん」

ウチの手をそっと優しく包み込み、いつもよりずっとまっすぐな瞳で見つめられる。


「綾瀬さん、好きです」


かぁぁっ、と顔が赤くなっていくのが自分でもわかった。

「…綾瀬さんは、どうですか?聞かせてください」

そんなの、聞かなくてもわかるでしょ。オカルンの手を握り返し、じっと見つめ合う。


「…ウチも。オカルンのこと、好き」



それから数年後。当時のことは、今となっては二人の思い出話になっている。

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