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KamassKRRR (くらリ
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嘘つきな掌
「隠すなよ。……俺にまでウソつくな」
渡辺が静かに言葉を投げかけると、深澤は一瞬だけ目を見開いた。
けれどすぐにまた、目尻を下げていつものようにふはっと笑ってみせる。
「ウソなんかついてないって。たださ……なんか、羨ましいなーって思っちゃっただけ」
「羨ましい……?」
「うん。佐久間、すげー幸せそうだったじゃん。あんな風に誰かと特別になれるの、なんかいいなって。俺たちさ、ずっと3人でバカやってきて……このままでも楽しいけど、あいつが進んじゃうと、取り残された気になっちゃうんだよね」
深澤はポケットに手を突っ込むと、夜空を見上げた。月も出ていない暗い空。
その横顔を見つめながら、渡辺の胸の奥がぎゅっと締め付けられる。
渡辺は知っていた。
深澤が、佐久間のことをずっとどんな目で見ていたか。
幼馴染という「安全地帯」に逃げ込みながら、自分の本当の気持ちをひたすら隠し続けていたことを。
そして――渡辺自身が、そんな深澤をどんな思いで見つめ続けてきたかも。
佐久間に恋をしていた深澤。
そんな深澤に、ずっと届かない恋をしていた渡辺。
「……じゃあさ」
渡辺は、夜風でかじかんだ両手を上着のポケットに押し込み、わざと軽めのトーンで口を開いた。
「俺らで付き合ってみる?」
「……は?」
深澤がピクッと肩を揺らし、目を丸くして渡辺の方へ振り返る。
「何言ってんの、翔太。酔っ払ってんの?」
「酔ってねぇよ。お前も寂しくて、俺もなんか不意に置いてかれた気になってんだろ? 冗談だよ、冗談。佐久間に『俺たち付き合いました〜』とか言ったら、あいつどんな顔すっかなって思って」
あえて意地悪い笑みを浮かべて見せると、深澤は一瞬呆れたような顔をした後、くすっと肩を揺らして笑った。
「うわ、最悪。佐久間絶対『えぇーっ!?』って大騒ぎして目玉飛び出るだろ」
「だろ? だからさ、お試しで付き合ってみよーぜ。俺たち恋人です、って顔してさ」
冗談のフリをした、本気。
渡辺の投げた歪んだ提案に、深澤は街灯の下で少しだけ目を細めた。
深澤もまた、渡辺の「冗談」の裏にある何かに気づいているような、でもそれに触れてはいけないと知っているような、静かな瞳をしていた。
「……いいよ」
「……え?」
「いいよ、付き合おうか。俺たち」
深澤はヘラヘラと笑いながら、渡辺の手をポケットの上からぎゅっと握った。
その手は驚くほど冷たくて、でもどこか縋るような力強さがあった。
こうして、冗談から始まった「お試し」の恋人関係。
佐久間に隠したまま始まったふたりの関係は、驚くほど静かで、そして息が詰まるほど儚かった。
コメント
1件
めんぼうさん、第3話読みました…。 深澤が「冗談」で流そうとしたのに、渡辺が「お試しで付き合ってみる?」って投げたあの台詞、心臓ぎゅってなったよ。冗談のフリした本気、って渡辺の心情が刺さる…。お互いにお互いの気持ちに気づいてるのに、触れないようにしてる空気が切なかった。 ふたりで手を握るシーン、冷たくて縋るような力強さ、っていう描写がもう…。関係性の危うさと儚さが静かに滲んでて、すごく好きです。続き、気になる…!