テラーノベル
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「話がそれたな。悪い、元は典華の話だったな」
『そう、だったな』
やっと俺の口から出てきた言葉はたったそれだけだった。
「典華はな、イレギュラーなんだ。ドールは普通、二十歳ぐらいの見た目で地球での生を受ける。なのに彼奴は、赤子の姿で俺の前に現れた」
そっと盟典は典華に視線を向けて話す。
「ただでさえ強力な能力は制御しにくいと言うのに、彼奴は赤子だから、余計に制御が効かなくてな。俺が最終的に封印する事になったんだ」
そう話しながらも盟典は俺とは目を合わせてくれなかった。
外の雨は更に酷くなっている。
「なぁ、彰」
『なんだ?』
そっと盟典が俺の方に視線を向けた。だから、俺もそっと、盟典の瞳に目を向けた。
「いつか、俺が死んで、典華の封印が解ける時が来たら、俺達ドールのリーダー、愛華の所に典華を連れてってくれ」
そっと微笑み盟典はそう話す。「頼んだぞ」と付け足して。
典華は、その後もスクスクと育ち、人間で言う十歳ぐらいの歳になった。
「お兄ちゃん!」
「どうした?典華」
典華は盟典の事を「お兄ちゃん」と呼び、慕っている。
勿論、俺にも懐いてくれた。
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