「ねえ、見た? 転校生、めっちゃイケメンじゃない?」
教室のざわめきが耳に心地よく響く。西岡結衣は、窓際の席から視線をそっと動かした。
黒髪、整った顔立ち、制服の着こなしも完璧。まるで雑誌から抜け出したような子。
でも、何かがおかしい。
例の転校生は自分の席を確認すると淡々と席に座った。まるで結衣の存在が空気であるかのように。
(え、ちょっとなんなのあいつ?今まで誰もが私を一目見た瞬間話しかけてきたのに…?)
(私に気づいてないのかしら?)少し揺さぶってみようと
「ごきげんよう!」ととびっきりの笑顔で声をかける。
しかし転校生は一瞬だけ視線を上げ、「どうも」とだけ言うまた本に目線を落とした。
(冷たっ…!)結衣の胸に小さな棘が刺さる。プライドが、静かに軋んだ。
(冷たい態度をとって悪いな結衣。こっちのほうが都合がいいんだ)そう頭の中でつぶやき本を読む。俺の名前…いや仮名は神崎海斗。コードネーム:ハイド。戦後設置された国家公安委員会情報部の諜報員だ。今は転校生としてこの学園にいる。話は3日前に遡る。_________________________________________________
「先の任務ご苦労さんハイド君」目の前のキャスター付きの椅子に座りコーヒーを飲んでいるのは俺の上司、コードネーム:ユザワ(本名)である。
「数十分前に任務終わったばかりなんですけど。一応公務員ですよね」
「まあそこは気にするな。それに機密組織だし…ところで今回の任務だが」十数枚の資料が渡される。
「護衛任務だ。対象は米国大手軍需企業AMC最高経営責任者、西岡敏夫の娘、西岡結衣12歳、中高一貫千代田学園中の生徒だ」
「例の件の関連ですか」
今年ソ連の水爆ツァーリ・ボンバをも上回る新型兵器をAMCが発明されたことである。それだけでも十分命は危険だが、実はこの兵器は敏夫が米軍の技術士官だった時に作った設計図に少し改良を加えたもので実質敏夫は発射コードを知っているのだ。今敏夫はCIA保護下にある。
「しかしそれならば敏夫の護衛をするべきでは?」
「いやそれはそうなのだが少し上のほうで事情がね…」
「事情ですか?」
「あぁ敏夫がうちの予算の50倍の金額を提示して自分より娘を警護してほしいと言ってきたらしい…」何処も財政は厳しいのである。
「で、他にも生徒として極秘に学園に潜入しながらの警護って何なんです?」
「敏夫が娘には心配をかけたくないから秘密にしてほしいとのことだ」
「というか一番の問題は学生としてですよ。何なんです?俺もう26ですよ」
「それはねえ…」大体わかる。こういう反応をするときは新発明の機械を実践登用しようとする時だ。
「まあそれはともかくあと3日で入学だから頑張って!」といつものように後の事はすべて自分に回すとササっと逃げるように部屋から出ってしまった。_________________
(で、いざ現場に行くとこうである。クラスはうるさいし謎に周りに人が集まる。それにさっきから結衣がよくわからないアピールをしてくる。確かに毎回そっけなく返事をするのは悪いとは思うが自分は遊びに来ているわけではないしそもそも任務は秘匿護衛なのであまりかかわらあいほうが都合がいいのである。バサッ。結衣の教科書が床に落ちる。これで8回目だ。明らかに故意に落としたのはバレバレである。これでストレス発散でもしているのだろうか?)
(もうホントなんなのあいつ!!!拾ってくれるけどそのあと何もなし?!というか周りが邪魔で話しかけずらいんですけど‼ウインクしても無視するし、わざと目の前で転んでもすっと手を引いてくれるだけだし…)
「もうっほんとにあなた私を見て何も感じないの!!!」とつい大声で言ってしまった。クラスに沈黙が走る。
「ごっごめんなさい…」するとすぐまたクラスには活気が帯びてきた。クッ…あいつのせいで大恥かいたわ。でもなんかまだイライラするわねえ…
「でほんとに何も感じないの?」と聞くとしばらくして
「ない」とだけ答えると。また本を読み始めた。
「結衣様あの子と幼馴染なのかな?」「まさかあの子の元カレだったりして」「えー結衣ちゃん俺狙っていたのにー」「ラブコメ始まった?!」なんか変な噂立ち始めてるし…こいつの彼女だって思われるのなんか癪なんですけど。散々私のプライドを傷つけておいて許せないわ。そう私は決めた…
「絶対あんたを落としてみせる!!!」また沈黙が走る。何が何だか分からなくなりとりあえず教室から脱走した。結衣の決意はだれも止められない_____________
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