テラーノベル
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買い出しに出ていた目黒、宮舘、ラウールの三人はエコバッグを両手いっぱいにいくつも持って車に積み込み、目黒の運転で道を走っている。
🤍「重かったー。今回はずいぶん、買い込んだね」
🖤「阿部ちゃんの分?」
❤️「まあ、そうだね。ファントム以降、誰かしらが阿部の家に泊まるか、誰かの家に阿部が泊まるかってしてるじゃん? 阿部が食事のこと気にしててさ。だから、今は事務所で朝昼晩を食べるようにしてる」
🤍「阿部ちゃん、それも気にしそうだけど」
❤️「そこは、俺と照とふっかで説得した。で、体重を量って50キロを切ったから、食事はほぼ強制的に俺が管理する事になったわけ」
🤍「ああ、それでか。ファントムに捕まってる間にやつれちゃって痩せたでしょ? それで見慣れてたから気付かなかったけど、確かにまだ細いままだもんね」
❤️「そう。俺らも、そこまで気が回ってなかったし」
🖤「阿部ちゃん、元々食べないし痩せてるから気付きにくいですもんね」
🤍「だからこの量なの納得。阿部ちゃん一人用じゃないんでしょ?」
❤️「一人だけ食べるのも気を遣うだろうから、その時に事務所にいる人の分も一緒にね。朝と夜は俺と、照かふっかは確定でいるようにするつもり」
🤍「え、僕も夜は一緒がいいなー。舘さんのご飯、美味しいし栄養バランスもいいし、最高じゃん」
❤️「その為に沢山買ったからね、いいよ」
🤍「やった!」
九人の中では、自炊する者と外食やデリバリーなどで済ませる者がハッキリと分かれており、できれば宮舘の料理を食べたいと思っている者が大多数を占める。むしろ、それ以外の人物はいるのだろうかと思うくらいだ。
けれど、毎日毎食が九人分となると大変なので、人数が多くなりすぎないようにそれぞれで調整をしている。
🤍「そういえば、結局あの合わせ鏡の犯人の女性って、何で僕たちのこと仲違いさせたかったのか、理由って聞けなかったんだっけ?」
🖤「誰かに頼まれたらしいってことくらいって、ふっかさん言ってた」
🤍「あの康二くんもそんなこと言ってたよね。瓦解させるのが俺の役目、なんなら本物と入れ替わるつもりだったって」
❤️「じゃあ、今回は柊とかファントムとは無関係?」
🤍「んー、どうだろ」
🖤「柊もファントムも、誰かに動かされてたっぽい。あの方とか、あの方の願いとか、たまにそんなこと言ってた」
🤍「あの方ってことは、柊とファントムよりも上の人だよね」
❤️「まあ、そうなるね」
🤍「星喰みに阿部ちゃんの捕獲依頼を出してたのも、多分その人だよね。組織ぐるみ、なのかな」
🖤「そこまで分かんの?」
🤍「憶えてないかな? 結構前にさ、僕とめめとしょっぴーが襲われた依頼。小学生みたいな姿の女性の。あれってさ、いくつもの異能が関わってそうって話したじゃん。四つの異能があったからって。事務所襲撃の時の粉っぽいのも含めたら五。それに、柊とファントムって考えたら、大きい組織かもしれないなって」
❤️「じゃあ、また狙いは阿部?」
🤍「どうだろ。仲違いしたからって、阿部ちゃんが一人になるかな? むしろ仲介するでしょ、阿部ちゃんは。実際に最後まで、ちゃんと康二くんの話を聞こうって言ってたの阿部ちゃんだけだったし。結局、芙蓉だってよく分からないままだしね。ファントムのこと知ってそうではあったけど、だから仲間かって言われたら、ファントムを消したのを見るとそうじゃなさそうだし」
❤️「確かにね。今回も、別の可能性もあるわけだ。水族館の時の、俺らに恨みを持ってた浦川とか、前に俺らが壊滅させたグループの連中とかもいるからね」
ほむぺ⋆*
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#あべさく
めかぶぷりん
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🤍「ま、僕らも結構、恨まれてるとは思うよ。厄介な異能力者を相手にすることも多いしね。仲違いさせようなんて、そういう連中が考えそうなことだし」
そんな話をしていると事務所前に到着し、荷物を下ろして二階への階段を上っていった。
ドアを開ければ、ソファで寝転がっている渡辺と、その向かいのソファで本を読んでいる阿部の姿が目に入る。
❤️「ただいま」
💚「おかえり。わ、すごい買ったね」
🤍「そー。めっちゃ重かったー」
💚「めめの蔓に頼んで、窓から入れたら良かったのに」
🤍「あ! その手があるの忘れてた! 頑張って登ってきたのにー」
🖤「最年少がなに言ってんだよ。このくらい頑張れ。大体、ラウールが一番軽いやつ持ってるんだからな」
🤍「はーい」
💙「よし。みんな帰って来たから、俺ちょっと下、行ってくるわ」
そう言って渡辺がソファから立ち上がる。
💚「今日、康二と約束あるんだよね。いてくれてありがとね、翔太」
💙「寝てただけだけどな」
💚「ホントにそうだったから何とも言えないけど、助かったよ」
💙「ん」
ひらひらと手を振って渡辺は事務所から出て行き、疲れてへばっているラウールの代わりに、目黒が全ての袋をキッチン前に持って行った。
冷蔵庫の中に食材を全て入れてから、宮舘が顎に手を当てて冷蔵庫を見ている。
❤️「今日はどうしようかな。リクエスト、ある?」
🤍「僕、お肉が食べたい! でもあんまりガッツリしてないやつ!」
❤️「うーん。じゃあ、豚肉と野菜でいいかな。せいろもあったはずだから、蒸し料理にしたら重くならないし」
🤍「え、聞いただけでお腹空いた」
🖤「早いって」
🤍「僕まだ食べ盛りの育ち盛りだもーん」
メニューが決まってからは早かった。すぐに料理を始めた宮舘は手際が良く、それだけでもショーのようで、目黒もラウールも阿部も思わず見入ってしまった。
暫くして、キッチンカウンターに湯気を立てるせいろが置かれた。蓋を開ければ、ふわりと白い蒸気が広がる。
中には薄切りの豚肉と、キャベツ、アスパラ、ズッキーニ、パプリカ。カボチャやしめじも彩りよく並べられている。蒸された野菜は鮮やかな色を残していて、豚肉から落ちた脂がほどよく馴染んでいた。
横にはポン酢と胡麻だれが用意され、ご飯と、わかめと豆腐の味噌汁。それに冷やしたトマトときゅうりの小鉢まで添えられている。
🤍「うわ、美味しそー!」
💚「野菜いっぱいだね」
❤️「蒸してあるから、見た目よりは軽いよ。好きな方のたれで食べて」
待ちきれない様子でラウールが箸を手に取り、それを見た目黒も笑いながら自分の箸を取った。
ゆっくりと食事を満喫し、食後にのんびりと過ごす。今日は珍しく、外に出ているのは深澤と佐久間と岩本だけ。その岩本が事務所に戻って来たのは13時半を過ぎた頃だった。それからほどなく、向井と渡辺も事務所に入って来る。
平和な日常が流れる中で、一本の電話が岩本に入った。
💛「ふっかからだ。もしもし?」
💜『照、今、事務所?!』
💛「うん、戻って来てる」
💜『街で次々にビルが崩れてる。それもあちこちで同時多発的に!』
聞いて、スピーカーに切り替える。
岩本の表情と空気が変わった事で、他のみんなが近づいてきた。
💛「分かった。ふっかはそのまま、ふーちゃんで避難と、鋼で崩壊を防いでほしい。めめ、康二、舘さんも同じように対処。翔太は避難誘導、ラウは原因を突き止めて。異能なら、別の対処法が必要になるから」
一斉に割り振られ、皆が頷く。
💜『佐久間に迎えに行かせる』
💛「頼む。阿部は、電脳空間で状況の把握をしてほしい。俺は事務所に残って情報の集約をするから、全員、持ってる通信機、付けて」
割り振った直後に佐久間が現れ、目黒と向井を連れ、その後に宮舘と渡辺を連れ、最後にラウールを連れて粒子転移で消えていった。
残った阿部と岩本は即座にコントロールルームに入り、阿部は椅子に座ると電脳空間へと入った。
街は、酷い有様だった。 崩れかけたビル、散乱した瓦礫、陥没した道路、逃げ惑う人々、乗り捨てられた車、泣きじゃくる子ども。
足がすくみそうになるものの、すぐに動き始める。
渡辺は花を生成して、リラックス効果のある成分を撒き、パニック状態になった人々を落ち着かせてから誘導する。
目黒と宮舘はそれぞれ、蔓と氷で建物の倒壊を防ぐ。
向井は重力で瓦礫の撤去をして道を確保しつつ、岩で陥没した道路の穴を塞ぐ。
ラウールは、周囲を確認しながら道具を使って原因を探り始めた。
電脳空間に入った阿部は、防犯カメラや車載カメラから被害範囲を特定して、現場にいるメンバーに伝えていく。
岩本は、阿部のタブレットを借りて地図を広げ、全体を把握しながら状況を確認していく。
皆が、自分にできることを最大限に行っている。避難は順調に進み、警察や消防、救急隊も駆けつけている。
だが、肝心の原因には辿り着けていなかった。
🤍『岩本くん、聞こえる?』
そんな時だった。ラウールから通信が入ったのは。
💛「どうした?」
🤍『異能なのは間違いないよ。同じ痕跡だから、相手は一人だね。爆破みたいに飛び散ってるんじゃなくて、ただ崩れてる』
💛「……どう違うんだ?」
🤍『んー、なんて説明したらいいかな。強い衝撃がある訳じゃなくて、こう、細長い砂の塊に触ったら崩れちゃった感じ? 伝わんない?』
💛「何となくは分かった」
🤍『あ、で、その異能者、この辺りにはもう居ないと思う。奥に続いてるんだけど、向こう側の方が、痕跡が強く残ってるからそっちに移動してるんだと思う』
💛「場所は?」
🤍『特務調査局のある方向!』
💛「こっち?」
直後、車のブレーキ音と、ガシャアン!と激しくぶつかる音が聞こえた。すぐに岩本はコントロールルームを飛び出して、窓の外を見る。
電柱にぶつかり、煙を上げる車。その向こうの道路にはヒビが入っており、その傍には男が一人、立っていた。
🤍『岩本くん? どうしたの?』
💛「……来た。多分、あいつだ」
🤍『えっ!? マズいじゃん! すぐ戻んないと!』
💛「いや、そっちの救助は止めらんねえ。人の命に関わる。ラウも避難誘導に回ってほしい」
🤍『岩本くんと阿部ちゃんは!?』
💛「ラウ。阿部に緊急通話で連絡して、電脳空間から出してくれるか? あいつを止めに行く」
🤍『分かった! でも、無茶しないで!』
通信を切り、岩本は窓から飛び降りると、落ち切る直前に両手に炎を纏い、路面に向かって炎を噴射させることで勢いを殺し、軽く降り立った。
数メートルの距離をあけて、男と対峙する。
「ハッ。なんだ、アイツじゃねえのかよ」
吐き捨てるような男の声。
💛「あいつ?」
「あの植物ヤローだよ。いるだろ? そこの、特務調査局ってとこによ」
💛「……お前、どっかで見たことあると思ったら、前に目黒のことオーバーロードさせた奴じゃねえか。確か……《東海林-しょうじ-》」
「なんだ、オレのこと知ってんのか? じゃあ話は、はえーな。オマエ、あの植物ヤローの仲間だろ? アイツの大事なヤツって、オマエ?」
💛「……だったら?」
「ぶっ壊す。あの植物ヤローの目の前でな! だから大人しく、オレにやられろ!」
飛び出した東海林が、岩本の近くの道路に勢いよく拳を打ち付ける。大きく陥没した道路に、岩本は後方にバク転をして避けた。
「へぇ? ちょっとはやるじゃねーか」
💛「そっちは大したことないな」
「おもしれー。本気出してやるよ!」
目が血走り、嬉々とした表情で殴りかかってくる東海林に対し、岩本は冷静に攻撃をかわしている。
単調な動きの東海林の攻撃を避けるのは造作もない。
「避けてばっかいないで、反撃してみろよ! おらぁ!」
東海林が殴りつけた標識が折れて飛んできたのを、背後に視線を送った岩本は、炎を纏った手で叩き落とした。
それを見て、東海林がこの上なく愉しそうな表情へと変わる。
「ハハーン。なるほどな。オマエ、なんか庇ってやがるな。その建物になんかあんのか」
ピクリと、岩本の表情が強ばる。
「ああ、まだ誰かいんのか、ソコに」
東海林の目が、岩本の後ろにある特務調査局のビルを映し出し、ギラついた。
瞬間的に岩本は耳の通信機に手を当てる。
💛「阿部、出てくんなよ。顔も見せんな。援護も必要ない。コントロールルームから出るな」
低く呟く。
目の前にいる東海林は、明らかに目黒への攻撃手段として岩本を狙っている。最初は目黒自身を捜していたようだが、目的は明らかに『目黒が大事にしている人物』だった。目黒の目の前で痛めつける為。
前に、目黒がオーバーロードしたのも、それが理由だった筈だ。あの時、オーバーロードした目黒を見て腰を抜かしていたというのに、また、同じことをしようとしている。何か策があるのか、それとも一度、目にしているから大丈夫ということなのだろうか。
どちらにせよ、岩本自身は捕まるつもりなど毛頭なく、事務所内にいる阿部を捕らえさせるなど言語道断だ。
今、事務所内に人がいると気付かれたのは迂闊だった。事務所のあるビルに当てたくないと思って叩き落した標識。そして、ほんの一瞬、ビルに視線を向けただけで気付かれた。そういうことに関しては、かなり勘が鋭いらしい。
💛「……最悪だな」
「あ? やられる準備はできたか?」
💛「やる準備ならとっくに出来てるけどな」
フッと、岩本は笑みを浮かべる。
東海林の目が大きく見開かれる。それはまるで、標的を前にしたハイエナのような顔だ。二人が同時に路面を蹴って飛び出した。
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