テラーノベル
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アカネが掌に抱いた光の“種”は、まるで生きているかのように、ぽうっと温もりを灯し続けていた。彼女の想いに応えるように、その輝きは徐々に広がり――純白の大地に、ほのかな色彩を落としてゆく。
「……見て、花が咲いてる。」
アカリの声に振り向いた二人は、言葉を失った。
かつては何もなかったレイヤー:イレブンの大地に、ぽつぽつと小さな蕾が姿を現し始めていた。色とりどりの花が、光の種を中心に、静かに、しかし確かに咲き誇っていく。
「このレイヤー……変わってきてる。私たちの感情が、世界を変えてるんだ……!」
ノエルはそっと目を閉じ、微かに笑みを浮かべる。
「“芽”は感情の再生の証。そして、花はその感情が誰かと分かち合われた証だ。君たちが歩いてきた軌跡が、このレイヤーを彩っている。」
風がやさしく吹く。今までのレイヤーとは違い、ここには「痛み」だけでなく、「癒し」や「絆」が息づいていた。
アカネはその中心に立ちながら、改めて仲間たちの顔を見る。
「ねえ……この先のレイヤーも、きっとまだ“何か”が残ってるよね?」
アカリが頷いた。「うん。でも、もう怖くない。だって、私たち――もう一人じゃないもの。」
三人は手を取り合った。小さな温もりが、互いの手の中に宿っている。それは希望であり、これから進む旅の灯でもあった。
ノエルが腕を広げ、光の花畑の中を見渡す。
「この“希望のレイヤー”に、名前をつけよう。君たちが生み出した、新しい始まりだから。」
アカネは少し考えてから、はにかみながら言った。
「……“ハルユメ”。どうかな? 春の夢。まだ遠いけど、確かに手の届く未来って意味で。」
アカリも目を輝かせる。「素敵。ここは“ハルユメ”……私たちの再起の場所だね。」
そうして三人は、花に満ちたその大地に、自分たちの“希望”の名を刻んだ。
そして物語は、再び歩き出す――
コメント
2件
ほんとにゲオとかブックオフにうってそう
これは本になる...絶対できる...