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#TS転生
高天原ヒロ
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#魔法
東屋 朧
200
12
兎束作哉
5,492
卒業式の日。
『私の側へ来い。』
『お前となら、未来を共に歩みたい。』
『来年、お前の答えを聞かせてくれ。』
――あの日の言葉が、何度も頭の中でよみがえる。
冴が卒業して一週間。
クリスマスの日に約束していた本を探すため、玲は冴と街へ出かけていた。
「もう、東京へ行く準備はできてるんですか?」
「ああ。来週には向こうへ行く。」
「忙しいのに付き合わせてしまって、すみません……」
「構わない。」
冴は玲を見つめ、ほんの少しだけ口元を緩めた。
「私も、お前とどこかへ行きたいと思っていた。」
「……それなら、良かったです。」
胸の奥が、ふわりと温かくなる。
しばらく歩くと、大きな書店が見えてきた。
木の香りと、紙の匂い。
静かな音楽が店内に流れている。
「玲。」
「はい?」
「今日は、お互いに一冊選ぼう。」
「え?」
「私はお前に贈る本を選ぶ。お前も、私に一冊選んでくれ。」
思わず笑みがこぼれた。
「楽しそうですね!」
冴は迷いなく文芸書のコーナーへ向かう。
玲は児童文学や小説の棚を眺めながら歩き回る。
(冴先輩に読んでほしい本……。)
難しい哲学書じゃない。
でも、きっと冴先輩なら、この物語の優しさを分かってくれる。
一冊の本を手に取る。
表紙を見つめ、自然と笑みが浮かぶ。
(この本、大好きなんだよね。)
一方その頃。
冴は静かに詩集の棚を見つめていた。
何冊も手に取り、戻し、また別の一冊を開く。
そして、一冊の本で指が止まる。
静かにページをめくる。
そこに綴られた人生と言葉。
今の玲には少し難しいかもしれない。
だが――。
きっと、この本は玲の支えになる。
「……これだ。」
冴は小さく呟き、その一冊を抱えた。
しばらくして、二人は待ち合わせていた休憩スペースで再会した。
「選べましたか?」
「ああ。」
二人は顔を見合わせ、小さく笑った。
「開けてもいいですか?」
「ああ。」
玲は丁寧に包装をほどく。
現れたのは、一冊の詩集だった。
「……ゲーテ詩集。」
思わず表紙を見つめる。
「ありがとうございます。でも……少し難しそうですね。」
照れ笑いを浮かべる玲に、冴は穏やかに頷いた。
「本は、その時の自分に必要な言葉だけが心に残る。」
玲は黙って耳を傾ける。
「今は分からなくても構わない。迷った時、苦しい時、立ち止まった時――何年後でもいい。その時、この本がお前の支えになってくれれば、それで十分だ。」
玲は詩集を胸へ抱き寄せた。
「……冴先輩らしいです。」
玲は自分の包みを差し出した。
「開けてください。」
冴は静かに包装紙を開く。
現れたのは、『星の王子さま』だった。
「これは……。」
「大好きな本なんです。」
玲は優しく微笑む。
「子どもの本だって思われることも多いんですけど、大人になってから読むと違った見え方がするんです。」
冴は静かにページをめくる。
玲は続けた。
『大切なものは目に見えないこと。』
『誰かを大切に思うこと。』
『一緒に過ごした時間が、その人を特別にしてくれること。』
「全部、この本が教えてくれました。」
少し照れながら笑う。
「だから、冴先輩が疲れた時……この本を読んで少しだけ肩の力を抜いてもらえたら嬉しいなって。」
静かな沈黙が流れる。
やがて冴が小さく息をついた。
「おもしろいな。……大切にさせてもらう。」
冴は受け取った本を、優しい瞳で見つめる。
その姿を見て、玲は卒業式の日の言葉がもう一度よみがえった。
あの時は、答えが分からなかった。
でも今なら――。
玲はゆっくりと息を吸う。
「……冴先輩。」
「どうした?」
玲は真っ直ぐ冴を見つめた。
「卒業式の時の答えなんですけど……。来年まで、待たなくて大丈夫です。」
冴の瞳がわずかに揺れる。
「今、お返事します……」
静かな時間が流れる。
一歩、冴へ近づく。
「私も……」
玲の瞳が少しだけ潤んだ。
「私も……冴先輩が好きです。」
冴は驚いたように玲を見つめる。
「だから……。私も、冴先輩と一緒に未来を歩きたいって思います。」
「……そうか。」
冴は静かに玲の左手を包み込む。
「では――今日から共に歩こう。」
その言葉とともに、冴は玲の左手をそっと持ち上げる。
そして、誓いを刻むように薬指へ静かに口づけを落とした。
「……っ!」
玲は息を呑む。
冴は薬指から視線を上げ、いたずらっぽく微笑んだ。
「今は、この場所の予約だけしておく。」
「よ、予約って……!」
頬を真っ赤に染める玲。
胸の奥が熱くなり、視界が滲んでいく。
この人は――。
今日だけではなく、その先の未来まで見据えてくれている。
そう思った瞬間、込み上げる想いが涙になってあふれた。
「……はい。」
玲は涙をこぼしながら、幸せそうに微笑んだ。
「ずっと……あなたの側にいます。」
窓の外では――
満開間近の桜が祝福するように春風に舞っていた。
冴End『共に歩む未来へ』
コメント
1件
みぅです🥀 番外編の冴END、めちゃくちゃ良かったです…! 本を贈り合うシーン、お互いの想いが込められてて心が温かくなりました。特に星の王子さまを選んだ玲ちゃんらしい優しさと、冴先輩が薬指にキスする“予約”の仕方に胸がぎゅっとなりました。卒業式の答えを今すぐ伝える玲ちゃん、すごく勇気があって素敵だった。ふたりの未来がずっと幸せでありますように🌙💞