夜の闇が濃くなって、一軒家からは夕食の匂いがあたりに漂う
あ・・・あのおうちは今日はカレーね・・・
あそこは焼き魚・・・
一つ一つともる家の灯りを眺めながら、ゆっくりと足を進める
どこの家の灯りも温かそうで、幸せそうだった
どこの家の窓からも小さな子供の、笑い声がこぼれて聞こえてきた
今の野良猫のような自分とはかけ離れている、世界だった
顔をあげて夜空に浮かんだばかりの月を見上げる
とっても綺麗・・・今日は満月だわ・・・でもどうして月が二つに見えるのかしら・・・
そこで初めて自分の視界がぶれているのがわかった、どうりで斜めに歩いているわけだ
夜の闇夜にまみれて私はひたすら歩いた
ヘッドライトをつけた車が通り過ぎるたびに、私はビクッと身を震わせた
俊哉が車で追いかけて来ていないか、それだけを恐れていた
時々小さな小道を選んで歩いていたが、やはり大きな通りを通った方が近道ではないかと思った
やがて 俊哉に怪我を覆わされた体が悲鳴を上げだした
警察に呼び止められて職務質問されたりしたら・・・考えただけで恐ろしかった、きっと身元引き取り人は俊哉で彼は言葉巧みに私を悪者にするだろう
そして家に連れて帰られて今度こそ私は殺されるか、一生治らない怪我を負わされるだろう
ううん・・・もしかしたら今そうなってるのかもしれない
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