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「よし!待ってろよエリー!今助けに行くからなっ!」

あれから感情の変化も魔力の暴走も感じられなかったので、晴れてエリー捜索に参加することになった。

「セイさん…どこへ向かうつもりですか?」

「わからんっ!こういうのは気持ちが大切だからな!

聖奈。どこに向かうんだ?」

わからない時は聖奈えもんに聞けば大丈夫。

「はぁ…本当に大丈夫なのかな?まぁいいや。情報と推測を当て嵌めると、首謀者は南西部地域だよ。

侍女のプロフィールは嘘だらけだったけど、街の人への聞き込みでその可能性が高まったの」

「一応理由も聞いておこうか」

聞かなくてもいいんだけど、一応ね?

「行商の商人さんが侍女が持っていたモノを見たんだって」

「その物は、ここにはなくて南西部にあるものだったのか」

「そういうこと。女性用のシースルーの布だよ」

「?なんだそれ?」

パンツかな?

「よくエジプトとか砂漠とかの映画で、女性の踊り子さんが身に纏ってヒラヒラしているやつだよ」

「ああ!何となくわかるぞ!確かにこの国にはそんなモノはないな…」

そんな踊り子さんがいたら俺が知らないわけないしなっ!!

いや…結婚前の話だよ?

「その行商人さんが珍しいから侍女に話しかけたんだって『南西部から来られたのですか?』って。そしたら焦ったように無視してどっかに行ったんだって」

「そいつからしたら何でわかったのか不思議だったんだろうな」

常識は時として人を無能にするからな。

侍女からすればその布はどこにでもあるモノで、こっちからしたら珍しいモノだからな。

特に焦った時はそういうことを見落としがちになるし。

「じゃあ行ってくる」

「ちょっと待って…まだ何も伝えてないよ…」

そうだった。危うくすぐ聞きに帰るという恥ずかしい行動を取るところだった……

「とりあえず正規ルートで進んでね。そしたらライルくんとここで合流出来るから。

それで北西部と南西部の境に着いたら一度転移で戻ってきて」

聖奈が地図を指し示しながら説明してくれた。

「わかった。魔法は使ってもいいんだよな?」

また感情が黒く染まってきたらやだよ?

「うん。でも気を付けて使ってね」

「セイさん。ご無理は…」

「わかった。ミラン、大丈夫だ。もしまた俺が血迷っていたら、次も戻してくれるだろう?」

「も、もちろんですっ!」

俺は二人に手を振りながら転移した。






「爺さん!ライルは来たか!?」

水都の屋敷に転移した俺は、みんなが留守だったので店へと顔を出した。

「ライル?見ておらんのう」

店の護衛として突っ立っていた爺さんに声を掛けたが空振りのようだ。

「そうか!じゃあなっ!」

「ちょっ!?何事じゃあ!?」

何か後ろで叫び声が聞こえた気はするが、気のせいだろう。

俺は水都を後にした。





「確かこの道を真っ直ぐだな」

聖奈から示された場所はナターリア王国とその南の隣国の国境付近だった。

「ライルも水都にくらい寄ればいいのに」

どうやらライルは休憩も取らずに移動しているようだ。

寝ずに移動していたのなら恐らくそろそろ待ち合わせ地点に着いているはず。

ナターリアからエトランゼへ向かった道は東方面。この道は南方面なので初めて通ることになる。

北西部地域で行っていない国は後二つ。その内の一つを通って南西部地域へ向かうことになったのだ。

聞き込みや何か策を弄する時は、聖奈とミランが必要不可欠だが、移動の時ばかりはお荷物になってしまう。


今も全力の身体強化状態で街道を走っている。


「魔導車よりは速いな」


俺には速さを測るメーターは付いてないからわからんが、エリー監修の魔導車よりはスピードが出ていそうだな。







「じゃあ、寝ている間に魔力のうねりが収まったってことか」

何とかその日のうちにライルと合流出来た。

コイツは目の下に大きな隈を作っていたから転移で城に連れて帰り、休ませることにした。

「そういうことだな。とりあえず寝ろよ。明日からはバイクじゃなくて走らないといけないからな」

「そうさせてもらう」

ライルは預けていたバイクで城を出ていた。

バイクも車と同じくエリーに改造してもらっていたから燃料は魔石だ。

現地調達出来るから便利なんだよな。






翌朝、日が昇る前に合流地点へ転移して国境を越えた。

国境のナターリア側の兵士に侍女のことを聞いたが、わからないとの返事だった。




そしてさらに三日後、北西部と南西部を分ける山脈の麓に辿り着いた。

「結局それらしい奴は見つからなかったな」

「そうだな。こことは別のルートを使っているのか、それともまだ辿り着いていないだけなのか…」

考えてもわからん。

こういう時は指示通り動くに限るな。

「よし。聖奈からは正規ルートでって指示があったことだし、ここを登るか」

「そうだな。遅れるなよ?」

俺達は大陸に跨る山脈へと足を踏み入れた。






「おかえりなさい」

転移で帰ってきた俺達を3人が出迎えてくれた。

「指示通り、丁度中間地点くらいで戻ってきたぞ」

聖奈からの指示は山脈のこちら側と向こう側の間。

山頂ってわけじゃないから不確かだけど、俺達はすでに2回目だからそう間違ってはいないだろう。

「向こうの山脈との違いってあった?」

「うーん。少し低いくらいかな?行商の人達にとっては命懸けだけど、なんとか越えれる程度だから、高さも大きくは違わないと思うぞ」

聖奈が言っているのは北東部と南東部の境目の山脈のことだ。

「ありがとう。大体わかったよ」

うん。俺にはなんにもわからん。

「エリーはどこにいるんだ?」

「それはまだわかんないよ。でも、首謀者の見つけ方には心当たりがあるよ」


聖奈の説明はエリーを誘拐した理由に遡った。


「エリーちゃんの発明でこの世界の人を驚かせたのは何だったかな?」

「トンネルですか?」

さすミラ!!

「うん。それでエリーちゃんがトンネルを掘ったのはどんな所だった?」

「山だな。それも人類未到の険しい山だ」

さすオレ!!

「そ。だったら大陸を分断しているけど人が通れる山にも使えるかもって考えた人達がいてもおかしくないよね?」

「……だがそれは」

「うん。多分不可能だと思うよ」

そう。あの山は険しいが、北と南を分ける山脈より大きい訳ではない。

東西を分けるあの山脈では、幾つもの山が連なって出来ているので、その幅は広いが高さはそうでもない。

なので山越えのためのトンネルも山の数だけ必要になるが、その距離は長いトンネルでも10キロ程でしかない。

しかし、南北を分断している山脈は違う。

トンネルを開通させようと思えばかなりの距離になる。

俺達が掘ったトンネルの何倍もの距離を掘れるとは思えない。

もちろん山の途中からとかなら可能かもしれないが、そこまであの魔導具を運べるとは思えん。

「でもこの世界の人達なら、同じ山ならいけると思ってもおかしくないよね?」

「つまり…何かしらの理由でトンネルを掘りたい奴がエリーを拐ったと?」

「うん。南西部の情報を集めたら、危険を冒してまでトンネルを掘りたい山は、その山脈くらいだったよ。

次点で南西部内の国境の山もあるけど、理由はかなり弱くなるね」

しかし、ヒントがそれだけだと、かなりの広さを探さないと首謀者が……あっ!

「もしかして…道か?」

「おっ!半分正解だよ!!」

半分かよっ!!

「エリーちゃんのあの大きな魔導具が通る為の道はもちろん必要だよ。でも、それよりもわかりやすい動きがあるよね?」

「作業員を集めている国か商会ですか?」

「そう。私達はセイくんのチートで楽をさせてもらったけど、他の国や組織はそうはいかないもんね。

拐ってから全てを進めるなんて遅いと思わない?それも、ここまで用意周到に誘拐してきた人達がね」

つまり、もう動き出しているってことか。

あの魔導具が作れる時間も逆算して。

「もしかして例の魔導具の設計図も?」

「うん。盗まれてたよ。もちろんこっちの捜査を分かりづらくする為に、他の魔導具の書類も盗まれていたけどね」

「犯人もすぐにわかるだろうが、タイムリミットもそれ程長くはなさそうだな」

エリーの魔導具には欠点があるからな。

「うん。足回りはこの世界の技術では再現不可能だもんね…あの魔導具のキャタピラの部分も殆どが地球産だし」

「ということは、エリーさんが向こうに着いて製作に取り掛かると、すぐに作れないことがバレてしまうというわけですか?」

「そうだね。この予想が合っていようが合ってなかろうが、急がなきゃね」

聖奈がここまで言うということは・・・

「首謀者はどこだ?」

「恐らく、南西部にある軍事国家『イステーファル連邦』だよ」


遂に連邦制が出てきたか……

〜ぼっちの月の神様の使徒〜

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