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ないこがかすかな声を取り戻したその部屋。
静かな安堵の中で、鏡の奥底がゆっくりと揺れ動いた。
ないこ(心の声):(声が戻った……でも、何かがまだ、俺の中にいる)
視線を鏡に向けると、そこに映る自分の姿がわずかに歪んだ。
鏡の奥から、冷たくも悲しい声が響く。
聲哭:「また、歌ってるな……俺を忘れて」
ないこ:「誰だ?」
鏡の中から現れたのは、ないこの影に潜む新たな闇の人格――聲哭(せいこ)だった。
聲哭は静かに言う。
聲哭:「俺はお前の声になれなかった叫び。
諦めた怒りと悲しみ、声にならなかった感情の化身だ」
ないこはギターを握り締めて応える。
ないこ:「お前も、俺なんだな。全部俺の一部だ」
聲哭はゆっくりと頷き、優しく微笑む。
聲哭:「そうだ。俺たちは分かちがたく、時にぶつかりながらも共にある。
これからは、逃げずに抱えてやれ」
鏡のヒビが光を帯び、部屋に柔らかな輝きが満ちた。
聲哭:「さあ、共に歌おう。俺たちの声で、世界を揺らすために」
次回:「第三十五話:声の共鳴、影の旋律」