テラーノベル
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「瞬っ!」自分の名前を呼ぶ声に、僕は勢いよく振り向いた。
視界の先、眩しい太陽の光を浴びたひまわり畑の前を、一人の少女がこちらに向かって真っ直ぐに駆け抜けてくる。
車椅子はない。彼女は自分の足で力強く地面を蹴り、髪を風になびかせながら、まっすぐに僕を目指して走っていた。
「葵……!?」
ぼやけた影でも、声だけの存在でもない。
あの最後に奇跡で見つめ合った、世界で一番綺麗な彼女の素顔が、走ってくる弾むような表情とともに鮮明に僕の瞳に映っていた。
「瞬! 瞬……っ!」
勢いよく飛び込んできた葵の体を、僕は両腕でしっかりと受け止めた。
ぎゅっと抱きしめ返すと、彼女の柔らかな髪の匂いと、日だまりのような温もりが僕の胸いっぱいに広がっていく。
「葵……どうして? 君は……」
「言ったでしょ? 『待っててね、すぐに行くから』って」
僕の胸に顔を埋めたまま、葵が小さく笑った。その目からは、ポロポロと大きな涙がこぼれ落ちていたけれど、表情はどこまでも晴れやかだった。
「瞬を一人で寂しい思いなんてさせないよ。……それにね、ここならもう、私も歩けるし、走れるのよっ!瞬だって眼が見えるのよねっ?それにこんなに元気だしっ。」
葵は僕の胸から顔を上げると、溢れる涙を拭いもせず、弾けるような笑顔を見せた。
「見て、瞬! 空がこんなに青くて、ひまわりがこんなに眩しいよ!」
葵が指差す先には、見渡す限りの緑の芝生と、どこまでも続く黄金色のひまわり畑、そして吸い込まれそうなほど澄み渡った青空が広がっていた。
「ああ……本当だ。すごく綺麗な場所だね」
僕たちは自然と手を重ね合わせた。
病の痛みも、見えない恐怖も、歩けないもどかしさも、ここには何一つ存在しない。
「ねえ、瞬。これからどこへ行こうか?」
「葵の行きたいところなら、どこへでも。今度は二人で並んで、自分の足で歩いていこう」
僕がそう答えると、葵は「うん!」と強くうなずき、僕の手をぎゅっと握り返した。
解けることのない手と手を繋ぎ直した僕たちは、永遠の光が降り注ぐひまわり畑の中へ、ゆっくりと歩み出した。
コメント
1件
ひまわり畑で、葵が自分の足で走ってくるシーン、本当に美しかった……。車椅子がなくて、瞬の目も見えて、二人とも元気な姿で向き合えてるのが、読んでてじんわりきました。「ここなら歩ける、走れる」って笑う葵に、私も泣きそうになったよ。最後に手を重ねて並んで歩き出すところ、尊すぎて言葉にならない……永遠の光が似合う二人だね。