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誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第16話 〚黙る理由を、言葉にする〛(澪視点)
湊が教室を出て行ったあと、
少しだけ、空気が残った。
「……なんか、避けられた?」
りあが小さく言う。
「嫌われたとかじゃないよね」
えまも首を傾げる。
海翔は何も言わず、
考えるように黙っていた。
私は、一度息を吸ってから、口を開いた。
「違うの」
みんなの視線が集まる。
「湊ね、ああなる時がある」
「どういうこと?」
しおりが聞く。
「信頼してない人の前だと、
コミュ障モードになるの」
「……え?」
玲央が驚いた声を出す。
「正確には、“まだ信用しきれてない人”かな」
言葉を選びながら続ける。
「変に思われるかもしれない、
変人扱いされるかもしれないって思うと、
一気に黙っちゃうの」
みさとが思い出したように言った。
「……あ、確かに小学生の時もそうだったかも」
「仲良くなった人の前だと、
めっちゃ普通に喋ってた」
私は頷く。
「うん。
“この人は友達だ”って心の中で決めたら、
急にコミュ障じゃなくなる」
えまが目を丸くする。
「じゃあ、さっきのは……」
「人が一気に増えたから」
りあが少し申し訳なさそうに言った。
「じゃあ、私たちが来たせい?」
「違う」
即答した。
「誰が悪いとかじゃない」
海翔が、静かに口を開く。
「……時間が必要ってことか」
その言葉に、
胸の奥が少しだけ温かくなる。
「うん」
「急に距離詰められるのが、
多分、苦手なだけ」
「じゃあさ」
玲央が言う。
「ほっとけばいい?」
「……うん。それが一番」
説明し終えたあと、
教室は少し静かになった。
でも、
さっきとは違う静けさ。
「なんかさ」
えまが笑う。
「分かると、逆に安心するね」
「うん」
しおりも頷く。
海翔は、
少しだけ視線を落として考えていた。
(信用されてない、じゃない)
(まだ、判断中)
そう整理している顔だった。
私は、
廊下の方をちらっと見る。
湊は、
今も一人かもしれない。
でも、
もう誤解は生まれない。
それだけで、
十分だった。