ルームメイトと食器の後片付けをしているとき、電話が鳴った。ハリウッドのチャイニーズ・シアター前の公衆電話からだった。
「バスがいつ来るか分からないんです」奈津美さんの声が震えている。
「時間、調べておかなかったんですか」
「どこで調べたらいいんですか。バス停に、何も書いてないんです」
「こっちのバス停には、時刻表なんか最初から貼ってないです。RTDの事務所に行くと、あてにならない時刻表もらえます」
「そうだったんですか」奈津美さんは小さく咳をした「結構怖そうな人、歩いてるんです。近くの店にでも入って次のバス待った方がいいですか? ここからでは道向こうのピザ屋さんくらいしか開いてなさそうですけど」
今迎えに行きますので、そのまま待っていてもらえますか、と俺は落ち着き払った声で言った。電話を切ると残りの皿をルームメイトに全て任せ、ジーパンの尻で濡れた手を拭き、ランニングシャツを脱いで黒いTシャツに着替え、黒の革ジャンに袖を通し、茶のブーツを履いて階下の駐車場へ走った。
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