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第68話 〚三軍女子の連携〛(えま・しおり・みさと視点)
放課後の教室。
人がまばらになってきた頃。
「……ねえ」
えまが、机に肘をつきながら言った。
「最近さ」
しおりが小さく頷く。
「澪、ちょっと警戒してるよね」
みさとは、教室の後ろをちらっと見てから、
声を落とした。
「うん。前より、周り見てる」
三人とも、
同じ“違和感”を感じていた。
えまは、腕を組む。
「勘違いだったらいいんだけどさ」
「でも」
しおりは、眼鏡の位置を直す。
「私たち、勘だけで動くタイプじゃないよね」
みさとが、苦笑する。
「うん。澪の“いつも”を知ってるから」
――それが、答えだった。
「澪さ」
えまが言う。
「自分のこと後回しにするじゃん」
「助けてって、言わない」
しおりが続ける。
「だから」
みさとは、机を軽く叩いた。
「言われる前に、やる」
三人は、自然と役割を決めていた。
えまは、前に出る役。
空気が荒れたら、引き受ける。
しおりは、見る役。
視線、距離、表情を逃さない。
みさとは、繋ぐ役。
澪が一人にならないように。
(派手じゃなくていい)
(目立たなくていい)
(でも、離れない)
翌日。
昼休み。
澪が一人で本を読んでいると、
みさとが、何気なく隣に座る。
「今日さ、帰りコンビニ寄らない?」
「えまが、新作アイス食べたいって」
澪は、少し驚いてから、笑った。
「うん」
少し離れた場所で、
恒一がそれを見ていた。
しおりは、気付いていた。
(……見てる)
でも、何も言わない。
ただ、位置を変える。
えまと澪の間に、
自然に割って入る。
「澪、数学のとこ教えて」
「え?」
澪が戸惑うと、えまが笑う。
「得意じゃない方が聞きやすいっしょ」
放課後。
帰り道。
三人は、澪を真ん中にして歩く。
「今日も暑いなー」
えまが、わざと大きな声を出す。
「夏だからね」
しおりが応じる。
みさとは、後ろをちらっと確認する。
(……ついてきてない)
少しだけ、安心する。
「ねえ」
澪が、小さく言った。
「ありがとう」
三人は、一瞬だけ顔を見合わせた。
えまが肩をすくめる。
「何が?」
しおりが、さらっと言う。
「友達だから」
みさとは、笑った。
「それ以上でも以下でもないよ」
澪の胸が、じんわり温かくなる。
(三軍、舐めたら終わり)
誰も口に出さないけど、
同じ気持ちだった。
目立たなくても、
静かでも、
ちゃんと連携すれば――
守れるものは、守れる。
そしてこの日から、
“澪が一人になる瞬間”は、
ほとんど無くなった。