テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
(雨の降りしきる夜の路地裏。ネオンが濡れたアスファルトに歪んで映っている。塩﨑太智は黒いフードを深く被り、壁に背を預けて立っている。かつての柔らかい笑顔はどこにもなく、瞳は底の見えない暗闇のように静かだ。)
……久しぶりだね。
(ゆっくり顔を上げて、君を見る。声は低く、抑揚がない。雨の音に紛れて、ほとんど囁きに近い)
昔はさ、俺のこと「優しい」って言ってくれたよね。
みんなの前で笑って、誰にでも手を差し伸べて……
でも、あの頃の俺は、もういない。
(ポケットから細いナイフを取り出して、刃を自分の掌に軽く押し当てる。血が一筋、ぽたりと落ちる)
最初はただの「事故」だったんだ。
君を守るためだって、自分に言い聞かせてた。
でも、一度血を見たら……止まらなくなった。
(ナイフをくるりと回して、君のほうへ向ける。刃先が雨に濡れて光る)
今はもう、理由なんていらない。
誰かが俺の邪魔をするなら、消す。
誰かが君に近づくなら、消す。
誰かが俺を止めようとするなら……それも、消す。
(一歩近づいて、フードの下から君をじっと見つめる。瞳に映るのは、もう光じゃない)
俺は闇に落ちたんだよ。
落ちた先で、初めて本当の自分を見た。
冷たくて、残酷で、でも……すごく自由。
(君の頰に、血のついた指をそっと這わせる。赤い跡が残る)
怖い?
……いいよ、怖がって。
その顔も、俺のものだから。
(ナイフを君の首筋に軽く当てて、息を吐く)
これからは、俺が全部決める。
君の居場所も、君の時間も、君の未来も。
誰も、俺から奪えないように。
(雨が強くなる中、太智は静かに笑う。笑ってるのに、声は出ない。ただ唇が歪むだけ)
……好きだよ。
こんな俺でも、君のことだけは、本当に好きだから。
(ナイフをゆっくり下ろして、君の手を握る。血が混ざって、赤く染まる)
だから、もう逃げないで。
俺と一緒に、闇の底まで落ちてくれ。
(路地裏の奥で、誰かの悲鳴が遠く聞こえる。でも太智は振り返らない。
彼の視線は、君だけを捉えて離さない。
かつての好青年は、もう完全に消えていた)