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・・・すると。
「はい。名前呼んだからこれで許してあげる」
そう言って急に両手を上に上げて全部私を掴んでいた手を解放した。
へ? 今度は急に変わられて拍子抜け。
「どう?ドキドキした?」
・・・・え??
「新しい恋愛のカタチ。今度あったらドキドキさせてって言ってたでしょ?」
・・・は???
え、ちょっと待ってちょっと待って。
ひとまず落ち着こう。
えっと。
それってあれだよね。
最初に出会った時のこと言ってるんだよね?
え。それだと何。
これってあの時言ってた新しい恋愛のカタチのドキドキを今私は試されたってこと?
え。それだと今までのこのやり取りはどういう意味?
深い意味なかったってこと?
え。でも私の名前知ってたのは事実だし。
ってかそもそもこの人どこからどこまでそれ試してたの?
「あっ。うん。ちょっと待ってね。今頭の中整理する」
「どうぞ~」
何この余裕。
一瞬でもドキドキさせられたのは事実だけども。
正直思ってた以上にドキドキしたけども。
そもそもどこまでが冗談でどこまでが本気?
いや、そもそもこの人最初から本気なの? 結局冗談なの?
ってかあれ? 私今何しに来たんだっけ?
「どう?落ち着いた?」
そうだ思い出した。
「ねぇ。私、これからあなたと仕事していくんだよね?」
「そうだね~」
「そうだ。新しいプロジェクト。そう。新しいプロジェクトで合同でチーム組むからってなって、それでリーダー同士で・・・」
「そういうことみたいね。 これからよろしく、望月さん」
・・・は?
今度は急にこの人だけ仕事モードに戻って普通の呼び方で呼んで来る。
「全部知ってたの?」
「何が?」
「私の名前も。このプロジェクトで組むことも。出会った時からも」
「・・・さぁ?どうでしょう。 まだそれは秘密」
またこの余裕の表情で怪しく微笑みながら誤魔化す。
うわ~どこまでも焦らすこの男!
なんで私はこんなヤツに振り回されてんのよ!
って、ちょっと待って。
確か・・・私より年下って言ってなかった・・・?
「ねぇ・・・ところで年齢・・いくつ?」
「27歳」
「若っ!」
ちょっ!
待って。そんなに年下だったの!?
いやいや。改めてそこ意識したらとんでもないことしてたわ。
いろいろとそれどうなの?
8つも離れてる年下くんと私は仕事を組むことになって。
そしてそんな相手にすでに色々と翻弄されて、いいようにドキドキさせられて・・・。
いやいや!ダメでしょ!
まぁ仕事相手はいいとしよう。
それはそれで世代が違っても刺激になっていい方向に持って行けるかもしれない。
仕事はどうもエリートでやり手みたいだし、リーダーに選ばれるくらいだからそれなりに頼れるとこはあるはず。
でも、でもよ。
仕事じゃないさっきみたいなのはダメでしょ。
「だったら何?」
「いや、あなたと私随分年離れてるから」
「だから?そんなん最初からわかってるし。仕事は別に影響ない」
「あっ、うん。仕事は大丈夫なんだけど。ほら、ねぇ。さっきみたいなのは・・」
「あぁ。別にそれも問題なくない?」
私が引っかかるところを何も気にしていないかのようにサラッと答える。
「別につき合う訳じゃないし。ただ新しい恋愛のカタチ試していくだけでしょ?」
なぜかその言葉にチクッと胸が痛む。
うん、別につき合うとかそんなの考えてもないけどさ。
でも、なんかそうストレートにそう返されるとさ、なぜかちょっと複雑。
これが年齢差なのか。
30過ぎた女子は何に対しても少し敏感で。
付き合うにしても遊びにしても、簡単に始めることも考えることも出来なくなって。
そんなサラッと言えるような、始められるような年齢・・じゃない。
「そう、なんだけど・・・。ホントにそれ、続けるの?」
まだ現実味がなくてそもそものその提案に疑問を抱く。
「また会ったんだからそれは続けないと」
なんか説得力あるようでないような気もするけど・・・。
「なんかさっきのでオレもそこそこ楽しめたし。なんか新鮮で気に入った」
・・・いや、そこそこって。
新鮮って。
なんかちょっと腑に落ちないモノもあるけど・・・。
「次会えたら運命だって言ってなかったっけ?」
「いや、それは・・・」
なんでそんなとこまでちゃんと覚えてんのよ。
あの時適当に話してただけなのに、なぜよりにもよってこんな・・・。
「まぁこれからは仕事でも同じなワケだし、ゆっくり楽しんでいこうよ。いろいろと」
「いろいろって・・・」
いや、職場でこんなんホントに無理なんですけど。
でもなんか常に余裕で私が何言っても全然気にしてない感じで、この人全然掴めない。
「ってことでこれからはどちらでもよろしく。透子」
「いや、だから名前!」
私がそう反撃してもやっぱり何も気にしていないのか、すでに楽しんでいるような微笑みでこちらを見つめている。
「はぁ~もういいや。とりあえず仕事では、よろしく。早瀬さん」
「ん~どっちかって言ったら仕事は早瀬くんのがいいな~。なんか年上の人から”くん“付けで呼ばれる方がドキドキするし」
ホントかよ。
絶対面白がってんじゃん。
「もうどっちでもいいけど。 なら、はいはい。早瀬くんね」
「何その投げやりな言い方~。またそんなんだとこれからどうなるかわかんないよ?」
はぁ~絶対私と違うところでコイツ楽しんでやがる。
「ならもう一つの方もよろしくね。早瀬くん」
お望み通りの呼び方で、明らかに作り笑いを全面に浮かべて応える。
「あっ、仕事以外では、樹ね?」
「は? 」
「オレこう見えてもプライベートと仕事ちゃんと分けるタイプだから」
いや、そんなドヤ顔で言われても。
結局名前呼ばすんじゃん。
てか、仕事以外で別に会うつもりもないけど。
「じゃあ、またこれからちょくちょく会うことになると思うから。楽しみにしとくよ」
「まぁ、これから仕事で会うこと増えるだろうから・・」
そこはもう仕方ない。
せっかくの新しいプロジェクト、こんな私的感情で失敗させたくないし。
「ん~仕事だけじゃなくて・・・ね」
「えっ?」
「まぁこれからも覚悟しといて」
「ちょっ、どういう意味!」
「じゃあ」
彼はまた怪しく微笑みながらそう告げてその場を離れた。
・・・何だったの、今までの。
その場に取り残された私は、一気にいろんなことが起きすぎて、すぐに仕事モードに戻ることが出来なくて、少し気持ちを整える。
とりあえず・・・。
これから私はこれからあんなのと一緒に仕事を進めていかなきゃいけないワケで・・・。
こんなのまともに出来るのだろうか?
なんかいろいろと疑問に思うことがありすぎるけど・・・。
とにかくこれから仕事も恋愛もどき?の方も、前途多難・・・。