「ただいまー」
裕翔はあれから家に帰っていた。
裕翔の声を聞いた裕翔の姉、心菜は、裕翔の変化に気付いていた。
「おかえり〜…裕翔、なんかいつもと違くね〜?」
心菜は裕翔の変化の理由に気付いていながらも、裕翔の反応を楽しむために原因が分からない振りをしているようだった。
「……え?いや…別に……」
裕翔は目が泳いでいる。
「ははーん……もしかして好きな人が出来たとか〜?」
心菜は茶化すように言う。
そして裕翔は顔を赤くしながら、早口でこんなことを言った。
「ちっ、ちげーよ!……なんせ俺はモテるし、好きな人とか出来ないの。分かる?」
心菜はその反応に笑いを堪えている。しかしすぐに笑いが抑えきれなくなり、大声で笑った。
「何がおかしいんだよ!」
裕翔はイラつきながら言う。心菜は笑いが治まらず、床を叩いている。5秒程経った後、心菜はこう言った。
「ヒーヒッ…………いやー姉は騙せねぇーぞー?」
「もういいわ、部屋行く……」
裕翔は顔を赤くしながら言う。
心菜は溜息をつき、つまんないなと言いたげな顔をしていた。
裕翔は、ドアを勢いよく閉め、ため息をついた。
「あのクソ姉め……」
裕翔の胸の奥は少しモヤモヤしていた。その理由は、”好きな人”という言葉に突っかかったからだろう。
裕翔は好きな人が出来たことがないから、その気持ちに気づけなかったのかもしれない。
「鷺沼静香…鷺ちゃんのこと……好きなのかなぁ……」
そんな事をぽつりと呟いた裕翔……ドアの前に姉がいることも知らずに。
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