テラーノベル
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………………
目が覚めるとスマホで見慣れた世界に辿り着いた。
「んん、なんだぁ。」と目を擦り、前を見た。「え!ここってもしかして…テイワット!?」どうやら原神の世界に来てしまったらしい。昨夜、「お願いします!目が覚めたらキィニチくんに会えますように!お願いします!」とベッドの上で蹲ってお願いしたのを思い出した。どうやら願いが届いてしまったらしい。どこか暖かく、ほんのり甘い香りがした。「ここってもしかして、、ナタじゃん!もしかしたら!会えるかも!」とガッツポーズを決めたら草陰からガサガサ、となにか物音がする。怯えながら目線をそっちにやると驚きすぎて声が出なかった。まさかのキィニチくんだったのだ。「おっなんだぁ?まさかキィニチ〜女の子をビビらせてんのか!?」とアハウが喋った。するとキィニチはそんなことはない。と言いながら、アハウを遠くの方に投げた。「大丈夫ですか?どこか怪我はないですか?」と声をかけられた。初対面にしては声のトーンが少し優しすぎる気がした。慌てて「はう、ええ、大丈夫でしゅ、、」と答えた。しまった。噛んだ。噛んだ瞬間キィニチくんはほんの一瞬だけ目を丸くして、すぐに笑った。その笑いはからかいでも呆れでもなく、どこか愛しさを含んでいた。「よかったら、流泉の衆まで一緒に行きませんか?」と提案してくれた。私は噛んだ恥ずかしさと本当にいるキィニチがあまりにもかっこよくて声を出すことができなかったのでコクン、と頷いた。
歩き始めると、どうやらキィニチくんは歩幅を合わせてくれているみたいだ。夢の中や明晰夢なのではないかと思い何回か自分の頬を叩いてみたが、どうやら現実らしい。キィニチくんからみたら急に頬をたたき出す変人に見えるだろう。「どこから来たんですか?見たことない服装だったので。」とキィニチくんが尋ねてきた。「ええっと、い、異世界から来ちゃいました。あはは」と答えた。キィニチくんは驚いたような顔をして考え始めた。すると、「異世界?それはとても興味深いな。前に本で読んだことがある気がする。今度、依頼のついでに探してくる。」と言ってくれた。すぐにありがとうございます!よろしくお願いします!とお礼とお願いをした。それと流泉の衆についたら少しお話がしたいです。とも言ってみた。キィニチくんは快く了承してくれた。「な、名前なんて言うんですか?」と知ってるけど聞いてみた。キィニチくんは「マリポのキィニチだ。キィニチ、とよんでくれて構わない。今はいないが、いつもはうるさいヤツが隣にいる。アイツはクフル・アハウだ。俺は懸木の民という所に住んでいてー」と自分のことについて語ってくれた。相槌を打ちながら聞いていると、「あ、すまない。君に話しかけて貰えたのが嬉しくてつい話しすぎてしまった。」と言って、少し耳を赤くしていた。まさかのここに来てのメロ発言。私もちょっと照れ恥ずかしくなって、「いえ!全然大丈夫です!キィニチくんのことたくさん知れて嬉しかったです!」と早口で返すと「そうか、よかった。」と微笑んでくれた。「それでー、あなたの名前は?」と聞かれた。「私は○○です!そのまま呼んでください!」と言った。「○○、○○。可愛い名前だ。」と繰り返し呼んだ後に、褒めてくれた。まさか推しが自分の名前を褒めてくれると思わず、本当にありがとうございますと言いながら泣いてしまった。キィニチくんは心配してくれて寄り添ってくれた。それがすごく嬉しくてまた泣いてしまった。泣き止むまでキィニチくんは隣で何も言わずに待っていてくれた。私が泣き止むとまた歩き始めた。ただ袖口が触れそうで触れない距離を保って。
しばらく歩いて流泉の衆についた。キィニチくんは「○○、このあと緊急の依頼があるから、ここでしばらく待っていてくれ。」と言った。私は「わかりました!待ってます!依頼頑張ってください〜!」と言った。キィニチくんは振り返り、「必ず今日中に戻る。」と言って、ほんの一瞬目が合った。心臓がバクバクだ。まさかのあのキィニチくんに初っ端から会えると思わなかったのである。キィニチくんに会えたことで忘れていたのだけど、どうやって現実世界に戻るんだろうか。今は楽しいだろうけどいずれは帰りたい気もする。まあ今が楽しければいっか。と思って考えるのをやめた。「わぁ、これってもしかして温泉なのかなぁ。いつか入ってみたいなー!」と思わず口に出してしまった。すると、どこか見覚えのある女の子がニュっと出てきた。その子は水色の髪の毛で肌はこんがりと焼けていて水着のような服を着ていた。あぁ!ムアラニちゃんだ!可愛い!写真撮りたい!と思った。だけど実際に口にしたのは「こ、こんにちは」だけだった。「こんにちはー!君初めましてだね!ここに来るのは初めて?私はムアラニ!よろしくね!」と目をきらきらさせながら一度にたくさん話してくれた。陽キャオーラが眩しすぎる…。「ええっと、私○○です!ここに来るの初めてなんです、」と漏らさずに質問に答えた。ムアラニちゃんは「うんうん!○○ちゃん!!とりあえず温泉入ろー!流泉の衆の温泉は心も体も温まるよー!」と言ってくれた。「えっと、私水着持ってなくて、、。」と言うとムアラニちゃんは驚いたような顔をして「えぇ!?本当に初めてなんだね!私が色々教えてあげるよ!まずは皆同じところじゃなくてあっちのぬるめの温泉から入ってみてー!水着はー、あ!あそこで売ってるから買ってあげる!」と言った。私はすぐに「ええそんな買ってもらうなんて申し訳ないよー。」と返したけれどムアラニちゃんの圧に負けて買ってもらってしまった…。ごめんねムアラニちゃん…。ありがとう…。
買ってもらった水着に着替えたあと、ムアラニちゃんに手を引かれ、流泉の衆の奥にあるぬるめの温泉へ向かった。水面から立ち上る白い湯気が、ほんのり甘い香りと一緒にふわりと漂ってくる。「○○ちゃん!こっちこっち!早く入ってみて!ナタの温泉は最高だよ〜!」元気いっぱいの声に押されるようにして足を入れると、驚くほどやわらかい温度が全身を包んだ。温泉に入った途端、ムアラニちゃんに「どう!?」と聞かれたので、「すごい…気持ちいい……」と答えると「でしょ〜!!私自慢の温泉なんだ!」と返してくれた。可愛すぎる、、。しばらく肩まで浸かっていると、ムアラニちゃんが急にぐぐっと距離を詰めてきた。「でさぁ〜〜さっきキィニチと一緒にいたけど、2人はどんな関係なの〜?」出た。噂の陽キャ恋バナ攻撃。「ええっと、私が迷ってる時に助けてくれた人で、、」と慌てながら答えた。ムアラニちゃんは「ふーん?」と何かを企んだ答え方をした。その後に、「キィニチってさ、他の女の子にはけっこう塩なのに、○○ちゃんには優しかったんだよねー!あれ絶対特別な感情ある気がするんだ!」と言われて混乱しながら「ちがっ……そ、そんなわけないよ!た、たぶん、、。」顔が熱い。温泉のせいじゃない。「しかもね〜?」とムアラニちゃんは声をひそめた。「依頼っていつももっと時間かかるの。キィニチが“今日中に戻る”って言ったの珍しいんだよ?」も続けた。「えっ……そうだったの?」と相槌をするとムアラニちゃんは「うん!!あいつね〜ほんとはめっちゃ不器用なくせに、気になった子には一直線なんだよねぇ、」とやれやれみたいな呆れを含んだポーズをした。そんなはず……と心の中で思っていた、その時。
――タッ、タッ、と誰かが近づく足音がした。
「……○○。」声に振り向くと、そこには依頼に出たはずのキィニチくんがいた。息がほんの少し上がっていて、額に汗がにじんでいる。私はびっくりして、「キ、キィニチくん!? え、はやっ!」思わず叫んでしまった。するとキィニチくんは、「……予定より早く片付いた。様子を見に来ただけだ。」と言った。そっけなく見える言い方なのに、耳の先が微妙に赤い。ムアラニちゃんが口を押さえてニヤニヤしているから、余計に恥ずかしい。キィニチくんはそれに気が付き、「ムっ……ムアラニ、その顔はやめろ。」「別に〜?ただ、心配で走ってきたのかな〜って思っただけだよ?」とムアラニちゃんは言う。すると、キィニチくんは「走ってない。」と即答した。即答したのに、息はまだ整っていない。
見ているこっちの心臓がバクバクだ。キィニチくんに「○○。」と急に呼ばれる。呼ばれた名前に肩が跳ねる。「今日の夜、案内したい場所がある。少し付き合ってくれないか。」と言われ、「えっ……わ、私で良ければ……!」と戸惑いながらも返事をした。「うんうん!行きなよ○○ちゃん!」と後ろでムアラニちゃんが全力の背中押し。「じゃあここら辺で俺は一旦失礼する。○○、また夜。」とキィニチくんが言う。「う、うん!わかった!」と私は元気よく返事をした。夜まではムアラニちゃんと色々な温泉に入ったり、話したり、はしゃいだりして楽しんだ。
そして夜——。
流泉の衆の高台に連れて行かれた。下からは湯気がふわりと上がり、遠くにはナタの灯りが静かに揺れている。
「さっきはムアラニと楽しかったか?」と急に聞かれた。「うん!楽しかったよ!ナタの魅力とかーキィニチくんの裏話聞いたりしてー、、」と答えると、キィニチくんは「そうか。自分の裏話となるとなんだか恥ずかしいものなんだな。まあ、でも○○が楽しめてよかった。」と言った。もうキィニチくんって本当に優しさの塊でかっこよすぎてやばいよ。と思ったけれど口に出さずに「そ、そういえば!ここはどこなの?」と聞いた。「ここは、俺が好きな場所なんだ。」とキィニチくんは空を見上げながら言った。「夜は静かで、余計な声も聞こえない。ゆっくり話ができる。」隣に立つ距離は、袖が触れそうで触れない。だけど今は、その“触れそう”がいつもよりずっと近い。「○○は本当に異世界から来たんだよな。」と聞かれた。「う、うん。なんか気づいたらここにいて……。」と答えた。「……戻りたいのか?」と聞かれた。その問いはやけに真剣で、胸の奥がちくりとした。すぐには答えられなかった。キィニチくんは、ゆっくりとこちらを向いた。その瞳には、さっき温泉でムアラニちゃんが言ってた“真っ直ぐさ”が宿っている気がした。軽く見つめあったあと、「そうか。しばらくはこの世界でゆっくりするといい。」と何かを察したように言ってくれた。「優しくしてくれてありがとう。キィニチくん。」と返した。キィニチくんはあぁ、と相槌し、しばらく間があいた。すると「そ、その○○。初対面で言うのもなんだかおかしな感じがするが、お前と一緒にいるとすごく落ち着く。だから、これからも一緒にいたい。」と目線を合わせながら言われた。キィニチくんの耳がほんのり赤くなっているような気がする。ええええ!?これって告白!?告白なの!?私!!頭動かして!!!「えっ、あ、」と言葉が詰まってしまい思うように言葉が出ない。キィニチくんは、「すまない。変なことを言った。返事はあとででいい。今日はもう遅いから懸木の民の宿まで送ろう。」と言われた。大好きな人の告白にもうまく答えられない自分が情けなくなって涙目でコクン、と頷いた。
高台から懸木の民はかなり近い場所なんだと思う。だけど2人の距離はどこか遠くて、懸木の民まで行くのに静かですごく長い時間歩いていた気がした。
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