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#うりさん
ろのみ🩵🫧
43
19
#年上彼氏
おうか

252
ナンバーを非表示にして、コールした。
「もしもし……」
「あの……」
「湊! 」
「うん」
「ごめん、えっと……大丈夫だったか? 足」
取り付けたように安っぽい心配をする。
「要件は? 」
「……会って話を」
「要件言わないなら、切ります」
「会いに、行くから」
「あそこの会社ね、辞めたの。でね、海外へ行くの。……本当だから。来ても、私はもういないよ」
「何で?」
「建築の勉強。空間とインテリア、色彩もね」
「やりたいって、言ってたやつだな」
懐かしそうに言った。
「要件は? 」
「……あれから……会社にも向こうの彼女にも全部バレた。……で、結婚も破談、会社も辞めさせられた」
自業自得……だけど。何なの。
「ごめん。謝りたくて」
自己満足の謝罪の為に?
自分が罪悪感から逃げたいだけでしょ。こんな人だからこそ、そんな事が出来るのだろうけど。
「二度と、会いたくない」
「ごめん。好きだった。それが……傷つけることになって……」
「もう、何とも思ってない」
「本気だった」
「知らないよ、そんなの。切るよ」
「会ってくれないか? 」
会ってどうするのだろうか。私の顔を見たことでまた戻れるとでも思ったのだろうか。まだ私が自分に未練があるとでも思っているのだろうか。なんで私が会うと、許すと思うのだろう。
「私に悪いと思うなら、誠意を見せて。二度と顔を見せないくらいの」
「……その、通りだ。自分が、3年分のわだかまりを解きたかっただけだ」
ああ、この人も苦しんだんだ。3年も。社会的制裁も受けたのだ。
「電話、出来て良かった。ありがとう。もう、会わない。幸せになって下さい」
「……湊も。ありがとう」
弱くて、勝手な男。もう何の魅力も感じない。これで終わってくれるなら。彼も前を向いて、私なんて忘れてくれれば。
きっと、ここまで言って会いに来るほどの勇気はないだろう。二宮くんにも、吉良くんにも見られているし。体裁を気にする人小さい人だ。大丈夫だろう。冷静に見れる。今なら、馬鹿だったと思う。
──なのに、こんなにも惹き付けられるのはなぜ。この男と同じ様な事をされているのに。あの人にだけは。なぜ冷静に見れないのだろうか。
──会社の昼休み。
あの電話で恐らく大丈夫だと思うし、逆に二宮くんと二人は気まずい。会社からも、清水部長の会社からも、どちらからもそれなりに離れた店に一人で入った。
「部長の奥さん、めちゃめちゃ綺麗ですね」
普段は気にしないのに『部長』という響きに思わず敏感に耳をそば立ててしまった。
「それ……ああ、まぁ、いいや。そうだな。っていつ見たんだ? 」
ドクンと大きく心臓が鳴った。
聞き覚えのある声に、息が……止まるかと思った。
「あのホテルから出てくるの、見ちゃったんですよね~。 その前のカフェに居たんですよ、私」
ホテル……。あの日……やっぱり、代わりだったんだ。奥さんの。……結婚してるのか。
心臓がどくどく嫌な音を立てる。
「ああ、君このへんだっけ? 家」
「へぇ、そんな美人なんだ」
「あ、前に口説いてた人ですよね。めっちゃくちゃ綺麗な人で……」
「いや、それ違うわ」
……耳を……疑うような言葉。
『違う?』『口説いていた?』
「うわ、見てはいけない方でした? 」
「馬鹿、ただの接待だよ」
「そんな風には見えなかった~」
「はいはい、なんとでも」
「悪いな~、結婚前に遊んだんだー」
「なんとでも言え」
『結婚前』?てことは……やはりあの男と一緒だ。
そして……私は、浮気相手ですらないのだろう。私とあのホテルへ行ったのは、たまたまなのだから。
ほとんど食べられずに店から出た。
振り向くと、支払いを済まして、一人で先に出ようとする彼の姿があった。そのまま彼を待ち伏せした。どんな言い訳をするのか興味があった。私が聞いていたと、分かったら。
「やっ!」
片手を上げて、いつかの真似。
「ああ、どうした? 」
「私も、ここで食べてたの」
「おお、そうか」
……全く何もないかのような態度。こうなれば、こっちもとにっこり笑った。
「見られたら、困るね」
会社の人がそこにいる。
「聞こえた? 」
「……うん」
「参ったな、声デカイんだよ。全く」
「……だね」
「……接待、だけど。あと半分以上あいつらのおふざけ」
「うん」
参ったな、なんて言いながら焦る様子もない。誰が信じるのだろう接待だなんて。それに……そっち、なんだ。誤解だと言いたいのは。
『奥さん』のことは、分かってただろ?って事?ほんの少しの期待も、裏切られる。言い訳すら、してもらえない。
そんな関係。
にっこり笑う、もう一度。これが唯一の私の……鎧だから。
「どうしたんだ? それ」
私の足を見てそう言った。良かった、吉良くん黙っててくれてる。
ふざける私に心配する。ちゃんと心配している声で、優しく私を見る。
『キズモノ』だよ。とっくにね。あなたとの関係で。思わず低くなった声に、彼が眉を寄せる。慌てて誤魔化した。
「生クリーム乗ったやつ! センスでお願い致します!」
彼は笑って、私の頭にポンと手を置くとレジへ向かった。帰ってくるまでに、治めないと。じわじわと迫りくる、この……目に溜まるものを。この人の前で泣いていい関係ではないのだから。
「土曜日……どこか行きたいとこ、決まったか? 」
そのまま普通に話し始めた彼に
「んー……日向」
日陰の女に疲れたから。自虐的に言った。
「なんだ、それ? 山とか?」
「アウトドア、似合わないねー」
想像もつかない。私と行くなんて。奥さんと子どもを連れてなら、想像出来る。
「悪かったな。行きたいなら、そうしようか? 」
「……はぁ、おいし」
彼の買ってくれた、なんちゃらフラペチーノ。甘い。でも、苦い。最後に苦味が残る。暑いくらいの今日にピッタリ。私の気分とか、好みは把握してくれてるのにな。
「湊……?」
好きだな。心配そうなこの顔もそっと私の手に触れる、温かで大きな手も。そんな、優しさも。
前を向いて、涙を治めるのに集中した。
昼休みが短くて良かった。
コメント
1件
うわぁ…第7話 side M、めっちゃ胸が締め付けられた😭💔 湊の「キズモノだよ」って自虐、そして部長の前で涙を必死にこらえるシーンが切なすぎて何度も読み返したよ…「日陰の女に疲れたから」って日向って言うとこ、強がってるのに芯が痛くて泣ける🥺 元彼との電話で「もう何とも思ってない」って言い切った強さ、でも最後に「好きだな」って心の中でつぶやく弱さ。この揺れ動く感情がほんとにリアルで、人間味があって好きだな🌸 西原さんの描く湊の心情、繊細で美しすぎる…!続きが気になって仕方ないよ〜😭✨