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#うりさん
ろのみ🩵🫧
43
19
#年上彼氏
おうか

252
傷つく人がいる。今までは直ぐに関係を断ち切れた。私のせいで誰かが傷つくのは嫌だから。だけど、それは……諦められたから。
今は、分かっていても諦められない、考えられなくなる。それほどに焦がれた。自分のものにならない不毛な恋に。一番になれない虚しさを背負ったまま。
せめて、終わりは自分で。
「食事、どうする? 」
そう聞いてきた彼に即答した。
「あの、初めて会った時に行ったとこ! 」
「ああ、いいね。何ならホテルも取れば良かったな」
「それは、いいよ。誰に見られるか分からないし。それに……そんなにしょっちゅう泊まるとこでも、ないよ」
「そうか、じゃあ……行こうか」
何も考えないように、二人の時間を楽しんだ。
「何だ? 今日は妙に明るいな」
「へへ、今日で区切りがついたんだ」
気持ちの。
「俺も……もう少し時間取るようにする」
そう言った彼に少し笑った。
──彼の部屋に入ると
「今日も泊まって行くだろ? 」
彼の言葉に頷いた。
「でも、朝帰るね」
「はあ? 準備持ってこいって言っただろう」
「あのさあ、家そこなのにわざわざ荷物持って会社行くの、おかしくない? 」
「ああ、まぁ、そうだな。じゃあ、一旦帰ってから出かけるか。ピクニックでも」
「あはは! 清水部長のピクニック! めちゃめちゃお父さん感でる!」
「……悪かったな、老けてて」
「そんなところも、大好き」
そう言って、自分からキスをした。
「珍しいな、湊が……」
何か言いかけた彼の口をもう一度塞ぐ。
好きで
好きで
好きで
大嫌い。
たくましい腕の中、何度も揺らされ、何も考えられなくなった。夢なら良かった。そんな夢のような酔いきれない……現実の中で、何度も何度も好きだと言った。
今だけ。ベッドの上でだけなら許される。そんな、私の不毛な恋を吐き出す為に。
「清水部長」
「やめろ、それ」
「知らないもの、私。あなたの名前も」
「……嘘だろ? 」
「教えてくれなかったじゃない」
ずっと……そうとしか、呼んだことなかったじゃない。やっと……気付いたの?
「俊之。呼んで」
「俊之さん」
「“さん”いらない」
「俊之」
「うん」
「俊之、……好き」
「うん、俺もだよ。湊」
そのまま、彼の腕の中で眠った。夢から、覚めるまで。
朝が、来なければいいのに。
夜中に目覚め、そのまま彼の寝顔を見ていた。ずっと……憎らしい程に、愛しい……その顔。
やがて、白んで来た空に彼の顔がはっきりと見えだした。忘れないように、目に焼き付けた。
さようなら、好きになった人。起きるまでに帰ろうか、そう思ったのに往生際悪く、見ていた。
ようやく、9時も近くなった頃、彼は起きた。
「何だよ、起こせよ」
「だって、疲れてそうだし、まだ9時だよ。……帰るね、私」
「ああ、何時から出かける? 」
「着替えたら、戻るね」
「ん……」
「今日で9回目。あれ? 昨日で? だから今日は10回……」
「何のカウントだよ、単純にシた回数ならもうちょっと……」
そう言って、ベッドに引きずりこまれそうになる。
「もう、朝から! 」
「はは、数えるからだ。増やしてやろうかと……」
「これ以上、増やしません!」
10、いっちゃう。今日でこのまま終わり。だから、10はカウントしない。ほんのちょっとの未練すら、立ち切った。
コール音が響く。
「あ、悪い仕事の電話だ」
土曜日に……か。
「帰るね」
「ああ、後で」
さよなら。
聞こえるか、聞こえないかくらいの声で言った。
彼が電話しながら、玄関まで送ってくれる。その彼に抱きついた。
電話の相手に断りを入れて、彼が応えてくれた。
「俊之、大好き」
そう言ってキスをした。
最後の。
それから
「今日で、最後」
できるだけ笑って、そう言うと……彼から離れた。
「え? 湊、何だ? 」
笑顔を作ったまま「ありがとう」そう言って外へ出た。
エレベーターに飛び乗り、早足で駅まで行った。
これで終わった。
今から電車に乗らないといけないのに
滲む景色にうつむくようにやり過ごし、家へ向かった。
社用携帯の履歴を全て消すと、電源を落とした。家に置きっぱなしだったプライベート携帯には1件のメッセージ。
『ちゃんと、話せよ』
吉良くんからだった。
今なら梓の気持ちも分かるなぁ。そっとしといてほしい。特に、彼を連想させるものは、つらい。
余計な事をしていた。それに返事も返せなかった梓の気持ちも、こうなって初めて分かった。
梓が全く関わりのない人を新しい恋人に選んだ理由も。
ごめん。もう、全然ダメだな。恋愛も、人間関係も。どこでどう間違えたのか。
波打ち際に、打ち上げられた海藻のように、1日を過ごした。あ、この例え……うまいな。
はぁ、もう。心機一転……新しい職場。あと、2週間、か。
次は、年下狙おう。
そうなると“脱皆川”作戦は遅くなるだろうけど“脱海藻”作戦にはかえられない。
自分から動こう。海藻のように、流されず、サメのように。
……サメって……肉食?ジョーズ……。
海の食物連鎖のトップ捕食者って何だろう。どうでもいい事を調べた。幼児向けサイトだったのか、“大きい魚”だそうだ。大きい魚になろう、次は。
こんなところで、うちひしがれてないで。うちひしがれながら、翌日に空きのある美容院に予約した。
ベタだけど。発想が稚魚だけど。海藻からは脱出出来る。予定を入れないと、部屋の片付けもせずにずっと海藻だ。
ソファーに寝転ぶ私の15センチ前には引っ越しの段ボール。つまり、段ボールの景色を見ながら海藻。
片付けないと、もう半袖でもいい季節だ。服がない。
浮かんでは消える
浮かんでは消える
彼の笑顔と身体に残る感触。温もりは、とっくに消えたというのに。
コメント
1件
うわあ……切ない。湊さんの「今日で最後」って決めてからの行動、一つひとつが胸にくるわ。特に朝方まで寝顔を見つめて「さようなら、好きになった人」って心の中で言うところとか、エレベーターで涙が滲むところがもう……。 「海藻のような1日」って例えも、なんか妙にリアルで笑っちゃったけど、それでいて前を向こうとしてるのがいい。次はサメになろうって決意、応援したくなるなあ。 9回で終わらせようとして、10回目を作らなかったのも、湊さんなりのけじめなんだろうね。そういう小さなこだわりにグッときたわ。