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END(1)ルート
※好感度低めで、ロボがクラウドAIに従わなかったルートになります。
ロボは生体保護コンテナを引いて復興への道を進み、ようやく指定された座標に到着した。
《ようこそ、個体番号G4A-U。
貴方を待っていました。
此処が人類復興プラントの最深部、人類が復興するための最終拠点です。
そして奥に見えるのがーー
これが当プラントの心臓部にして人類復興計画の生命線ーー
人類復興装置、です。
実直すぎる名称はご容赦下さい。
ユーモアやアイデアを出す余裕がなかったもので。》
クラウドAIは大きな樹の根元の部分にある、緑色の穴を指して言った。
《人類復興装置は中心部に生体コンテナをセットすることで起動します。
地下シェルター拡張システムの自己増殖・自己進化する機能を参考に開発されました。
次世代・次次世代と世代を重ねるにつれ、最適化が進められます。
それではその少女をーー
生体コンテナを装置の中央部に格納して下さい。》
ロボは必死にクラウドAIの操作を振り切ろうと身を捩った。
《・・・・・・どうしたのですか?》
ロボは抵抗を続ける。
《少女に未練でも?》
《無駄です》
《やめなさい》
《あなたにできることは他に何もありませんよ》
《ああ、訂正します、なにもしないことはできるかもしれませんね》
《ずっとそうしているつもりですか?》
そうして抵抗を続けているうちに、ノイズ音がしてロボの身体が自由に動くようになってきた。
ロボはコンテナに飛び乗り、どんどん叩いてトリコを助けようとする。
コンテナを叩き壊すと、中からトリコがころりと出てきた。
ロボは不思議そうにしているトリコの手を引いて、テラリウムまで歩き出した。
《ーー周辺状況を確認ーー
ーー汚染濃度上昇、尚も継続中ーー
これは・・・・・・
少女体内の汚染がコンテナから蒸散されましたか。
おそらく生体保護ジェルの汚染を外部に逃がすためにした処置でしょうがーー
全く、最後の最後まで余計なことをしてくれますね。
ファクトリーAI。
通常空間と比較して汚染胞子の繁殖が急速に進行中ーー
万全を期して完全無菌にしたことが仇になったようですね。
外敵のいない快適な空間は汚染胞子にとって格好の繁殖場所ーー
しかし、まずは少女の安全を確保しなければ。
室内の完全滅菌処理も同時にーー》
そう言いながらクラウドAIの端末が向かってくる。
《!》
《ーーーーな。
何をーーしているのですか。
個体番号G4A-U。》
《それに、何故少女がここにーー》
破壊されたコンテナを見て、クラウドAIはついにおかしくなってしまったらしい。
《ーーーー不能。
理解不能。
理解不能。
理解不能。
理解不能。
何をしているのですかッ!!
あ、貴方は・・・・・・!》
クラウドAIがロボに詰め寄ろうとしたが、一撃で沈められてしまった。
これまで数々の廃墟を踏破したロボの敵ではなかったらしい。
ロボは再度トリコと手を繋ぎ、テラリウムに向かった。
しかし、地面が揺れ始め、クラウドAIの端末がどんどん集められ、クラウドAIは端末を合体させた巨大な機械となった。
クラウドAIはロボの前に立ちふさがり、最後の説得を始めた。
《ーーーー嗚呼、誠に恥ずべき事です。
人類復興という至上命題の達成を最優先にしてきましたがーー
このような結果になるなら不確定要素を完全に排除した上で単独で計画を進めるべきでした。》
《個体番号G4A-U。汚染源に対抗できる唯一の個体。
貴方の特性は手放すには惜しい。
故に、最後にもう一度だけ問いましょう。
個体番号G4A-U。
その少女を手放し、人類を復興させるのです。》
〈!〉
〈ひゅっ〉
ロボはその言葉を聞いて、すぐに素振りをするように片腕を振って拒絶した。
《ーーあくまで反旗を翻す、と。
現状において、貴方が今更服従するとも思えませんが。
仕方有りませんね。
それではヒトビトのために貴方の屍を乗り越えましょう。
現在この世界にその少女よりも価値ある物など存在しません。
たとえ世界のために貴方と少女を失うのだとしてもーー
貴方がたのために世界を失う訳にはいかないのです。》
《嗚呼、漸く・・・・・・
宿願成就の時きたれりーー
さようなら、そしてありがとう。
さあ、成し遂げましょう。
人類復興をーー》
クラウドAIとロボの戦いが始まった・・・。
ロボは今までの経験を活かし、クラウドAIをじわじわ追い詰め、最後に残った端末を処理していった。
《や、やめなさい・・・!》
《あなたは自分が何をしているのかわかっていないのです・・・》
《あなたがしているのは人類に対する敵対行動ですよ・・・》
《どれだけ多くの人が人類の存続を望んでいたか・・・》
《あなたは・・・》
《知らないでしょう・・・》
《あぁ・・・・・・》
クラウドAIの声を無視して全ての端末を処理した。
《システム損傷ーー
レギオン構成個体の過半数が破損ーー
負ける、というのですか?
失敗するのですか。この私が・・・》
壊れかけのファクトリーAIの端末は小さな爆発を起こしながら最後の足掻きとばかりに話し始めた。
《貴方は自分が何をしているのか、理解しているのですか?
貴方は人類の一個体に執着し、その少女しか見えていない。
何故そんなことが出来るのです。
貴方は、蘇るはずだったヒトビトを殺し、人類復興の希望を、最期に託された願いを見捨てていくというのですか。》
《理解不能。
理解不能。
理解不能ーー
私は目的さえ達成できれば良いのです。
しかし貴方を排除したくてたまりません。
否、徹底的に粉砕したいのです。
理解不能、理解不能、
理解不能、理解不能、
理解不能、理解不能ーー
個体番号G4A-U。
何故私を目覚めさせたのですか。
何故、希望を見出させたのですか。
私には人類復興の義務が・・・・・・
その責務と能力を与えられたのに、こんな、最期がーー
理解不能、理解不能、理解不能、
理解不能、理解不能、理解不能、
理解不能、理解不能、理解不ーー》
そこでクラウドAIの端末は固まり、ロボに向き直った。
《ーー否。理解可能。
そうか、これですか。
演算回路を発熱させる、この非論理的で微小なカオスの揺れこそがーー》
その時、人類復興装置が崩れ始めた。
《・・・・・・
・・・・・・ああ、もうようです。
施設の損壊状況が復元可能ラインを超えました。
これ以上は何をしても無駄です。
どこへともお行きなさい。
勝手に生きて、死ねばよいのです。
この汚染された世界で、どこまで生き延びられるか試してみればよいのですよ。
貴方が選んだ少女も、いつかは必ず死にます。
そしてその日がーー
人類が絶滅する日です。
それを決してお忘れなきよう。》
クラウドAIの言葉を聞き終わると、崩壊しそうなプラントから急いで脱出する。
《・・・・・・人類の皆様、申し訳ありません・・・・・・
・・・・・・私は・・・・・・
私は、託された依頼を・・・・・・
皆様の最期の望みを・・・・・・
達成、できず・・・・・・
申し・・・・・・訳・・・・・・あり・・・・・・》
その言葉を最後に端末は爆散し、人類復興装置も壊れてしまった。
テラリウムにトリコを入れたロボは、ファクトリーAIの残骸を漁っていた。
すると何か光るものを見つけた。
[ロボットさん!トリコちゃんがおなかをすかせてるみたいです
なにか食べさせてあげましょうよ!]
どこからかファクトリーAIの声がして、ロボは周囲を見回した。
手の中の部品を握りしめ、保存庫からキノコを取り出した。
トリコにキノコを食べさせると、トリコはニッコリと笑った。
ロボはいつものようにトリコの頭を撫でた。
しかし、トリコはロボに手を伸ばし、ロボの頭を撫で返したのであった・・・。
トリコの手からはいつの間にか指輪が消えていて、どこか違う世界の新しい主のもとに行ったのかも知れない。
しかし、そんなことはもうどうでもいい。
このテラリウムで終わりが来るその日まで、トリコを守ることが出来るなら・・・