俺は寒いのが大嫌いだ。
人間には、「そんなのドールだから平気だろう」なんて言われることもある。だが、こういうのは、心の問題なんだよ。
内側から凍りつくようなあの苦しみは、誰も理解できないさ。
俺達ドールは、20歳ぐらいの体と頭脳を持って生まれる。俺の家系って言うのかな?
俺の兄弟たちはみんな、生まれてから1年ぐらい能力が使えない。
生まれたところは現在のロシア連邦。その時の名前で言ったら、ロシア帝国。
そこの、シベリアで生まれた。冬は凍る程寒い場所だ。
だから、寒いのは馴れている。でも、ダメなんだ。
俺は昔、自分の大切な人を自分の手で壊してしまった事がある。きっと、それが原因なんだ。
あの日、俺は生まれた。
辺り一面白銀の雪に覆われた世界だ。
「お、生まれたのか」
「みたいだな。初めての弟……」
顔を見上げると二人の男がいた。二人とも背が高く、暖かい服装をしている。勿論、俺も温かいコートを着ている。
「俺は主炎帝。お前の兄だ。兄さんと呼んでくれ。俺の主は、此処ロシア帝国の化身だ。よろしくな」
ニコニコと嬉しそうに笑いながら兄さんは簡単な自己紹介をする。
「俺は主炎。お前の兄だ。俺は、ロシア帝国の次の国、ソビエト社会主義共和国連邦の化身……ソ連様に仕えるドールだ」
主炎…………兄貴の表情筋は微動だにしない。いや、口角が少し上がってはいた。
兄さんは俺の頭を雑に、でも優しく撫でた。兄さんの手は、温かくて、安心する。
「兄さん、兄貴、よろしく!」
満面の笑みで挨拶をする。
「お前の名前は?」
兄さんが俺の頭を撫でるのを止めて聞いた。
「俺は、炎露だ。その筈」
自分で名乗っておいて、ちょっと不安になった。
「ハッハッなんだよその筈ってはっきりしろよな」
そう言って、兄貴は大きく口を開けて笑い出した。何が面白いのか俺には全く理解ができないが、兄貴的には面白いのだろう。
兄貴が笑っているのを何故か兄さんは開いた口が閉じないといった様子かと思えば、少し嬉しそうに頬を緩めた。
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