テラーノベル
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スタジオの休憩時間。元貴と若井が、なにかくだらないことで盛り上がっていた。
若井が元貴のミスを真似しながら笑わせて、元貴が「やめろって!」と肩を叩く。
ふたりとも、声を出して楽しそうで、空気が軽い。
涼ちゃんは、キーボードの前でペットボトルの水を指先で転がしていた。
——いいな、ああいうの。
——なんで、俺は混ざれないんだろう。
ほんの数メートルしか離れてないのに、そこだけ別の部屋みたいに明るかった。
涼ちゃんは自分が無表情になってるのに気づいて、慌てて笑おうとしたけど、頬が動かなかった。
胸の奥がきゅっと絞られたみたいに痛くなる。
最近、何をしても疲れてしまう。
笑うのも、話すのも、気を張ってないと全部落ちてしまう。
元貴がふと気づいたように視線を向けてきた。
「涼ちゃん、どうした?」
声は優しいのに、その優しさすら苦しくなる。
「……なんでもないよ」
涼ちゃんは小さく首を振った。
でも本当は言いたかった。
——なんでもなくない。
——置いていかれたみたいで、ちょっとだけしんどい。
喉の奥までせり上がってくるのに、声にならない。
目の前で笑ってる2人は、本当に楽しそうで、
その輪に入らない自分だけがガラス越しみたいに遠い。
涼ちゃんは立ち上がろうとして、足が一瞬ふらついた。
睡眠不足と食欲の無さが積もっているせいで、体が軽いようで重い。
それでも無理に立ち直して、
「先に練習するね」とだけ言って、スタジオのドアに手を伸ばし個人の楽屋向かった。
ドアの向こうでひとりになった瞬間、
涼ちゃんの目は静かに伏せられ、
さっきまで必死に耐えていた表情がすっと落ちて、
——なんで俺、こんなに苦しいんだろ。
心の声だけが、歩くたびに胸の奥で響いていた。
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