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皆、一様に天羽さんのことを気の毒がったが、俺はそんな気持ちになれなかった。


俺の知る限り奥さんは俺のチクりもあって、早い段階で天羽さんに

篠原と接触するのを止めてほしいと忠告していたからだ。


なのに、彼らのその後の様子を見る限り、彼は奥さんの忠告など

どこ吹く風で会社での仕事はずっと篠原を伴なっていて、全く

改める素振りもなかったからね。


だが……それでも彼が篠原とただ一緒に出張に行くことを止めず、また一緒に

社外に出て行くことを止めなかったからといって、あの大人しくて聡明な奥さんが

家を飛び出したりするだろうか?


どう考えてもそれは考えにくい。


推察するにだとすると――――

俺なんかの知らないところでもっと決定的な何かを奥さんは知って

しまったのかもしれない。


そのことで話し合いをしたのか、しなかったのか、俺に知る聞く術はない。


いや、俺はこれまでに幾度となく奥さんとメールの遣り取りをしていて、

現に家を出ますという報告は受けていて……聞こうと思えば聞けるのかも

しれないけど、俺が聞いたとしてどうなるっていうんだ。


ただの野次馬なんぞにはなりたくもない。


奥さんを通してとはいえ、前の2人とは違ってちゃんと天羽冬也には

忠告していたのだから、同情の余地などない。



馬鹿な奴だ。


篠原の意図を知らず陥れられた哀れな野ネズミってとこか?


天羽のおっさん、さぁ……どうする?

奥さんを連れ戻すためにせいぜい頑張ってほしいね。


今のところ、俺には 姫苺 さんがいつか送ってきてくれるかもしれない

近況メールを待つくらいしかないが。


さぁさぁ、俺っ……この先どうする?


天羽家の私的な事情ってやつを勝手に情報として

ただ巷に流したままじゃその辺の、人の不幸は蜜の味って

煽るような奴らと同類になっちまうからなぁ。



天羽さんと奥さんとの亀裂が決定的になった途端、お定まりのパターンで

篠原は俺とのことを天羽に見せつけるようにまたもや俺に擦り寄ってきた。


俺がそれとなく周りに流した話から、篠原もここへ来てどうやら

天羽家も前のふたりと同じように離婚話に転がっていきそうだと

気がついたのか?


やはり今回も、そこまで男を自分に振り向かせておきながら

相手が奥さんとの間に決定的な亀裂が入ったと分かるや否や、彼女は

またまた今回も不思議な行動に出た。


前回と寸分たがわぬ、今までの相手へのすり寄り方は何だったのか?

と思うほどの突き放っしぷり。


いつもいつもそういう時、俺と仲良くするっていうのも

何なんだろうなぁ~。


その癖これまで俺にモーションのひとつもかけてきたことはないんだよな。

親し気に話しかけてきたり、ランチぐらいは行くものの。


まっ、同期として仲良くしてるのよっ、ていう感じオーラしか

出さなくってさ。


俺はおれでさ、放っておけばいいのに変に彼女のことが気になって……

篠原の身辺調査などしてしまったわ。


彼女の生い立ちを知り、ある仮説が俺の頭の中に広がっていった。



◇ ◇ ◇ ◇



面白いほど、過去パターンと同じ行動をとり始めた篠原から誘われて、

久しぶりに社食堂で一緒に昼食を摂ることになった。


絶対言おうとかっていうふうに気負ってはなかったのに

気が付くと俺は篠原を諭していた。



「なぁ、もう止めないか?

何か事情があってっていうか、目的があってやってるのかも

しれないけどさ。


天羽 さんで、打ち止めにしとけよ!

篠原のやってること誰も幸せにならないと思う」


「幸せ……っていう言葉、私には遠いよ、とっても」


そんなふうに、彼女にとっては意味のある台詞なのかもしれないけど、

俺からすると明後日方向に向かっているようにしか聞こえない台詞を

彼女は呟やいた。


その声は弱弱しく哀し気だった。



「なっ、俺と幸せにならない?」


「どういうこと? 仲村くんが何言ってんのか、私さっぱり分かんないよ!」


泣きそうな顔で篠原が言った。



「これからは毎日俺と一緒にご飯食べて、話をして一緒に寝ようってこと。

一緒の家で暮らすんだ。


俺はイケメンでも何でもないからそこだけは我慢してもらわないと

いけないけどね。どうこの提案?」


プロポーズだと彼女は分ってくれただろうか。


何せ生まれて初めての女子へのアプローチなもので、果たして上手く

いっただろうか。


やはりここはシンプルにMarry me!と告白したほうが

良かっただろうか……

なんて考えて、心配気に彼女を見ていたら……


「こんな私でいいの?

見ての通りふしだらな女だよ?」


「篠原が真正の淫乱女だったら俺こんなこと言ってない。

何か事情があるんだろ? と思ってる……」



隣にいた篠原が熱く熱く……俺の首に腕を廻して抱きついてきて

俺はいきなりのアタックに……もとい、抱擁に……もとい

いきなりの衝撃に俺の指は対応できなかったようで、持っていた箸を

ポロリと足元へ落としてしまった。


けど、衆人環視の中……っていっても昼の時間がずれてて人は

まばらだったんだけどな。

恥ずかしさよりもうれしさが勝っていた俺は、篠原といいコンビだよな。


なんだかんだといいつつ、きっと俺は同期入社して積極的によく俺を

誘ってきてた篠原のことがずっと気になってて、初めて話した時から

好きだったんだと思う。


だから彼女の今までの行動を知った時は驚きもしたし、衝撃も受けた。

だけど不思議なことに好きな気持ちは変わらなかったようだ。



相性っていうのがあるのかもしれないなぁ。


篠原智子のしてたことを知ったら普通は引くわな。


人を好きになる理由なんかないってことを、実体験で俺は知ることに

なったわけだ。


天羽さんとのことを見てて、もう見てられなくなった。

ここで全身全霊で篠原を説き伏せようって思ったんだ。


篠原が別の反応をしていたなら、俺はもしかしたら友達でいることも

止めていたかもしれない。


それくらいの真剣さで俺は篠原の心に訴えかけたつもり。

篠原が俺に応えるえてくれてほっとした。


篠原がこれまでの経緯を話してくれるというのならぜひとも

時間を作って聞きたいと思う。


そんな風な思いでいた俺は、篠原と金曜の夜から2泊で近場の温泉へ

行くことになった。

注意する都度何もない考え過ぎだと言い張る夫・なのに結局薬局疚しさ満杯だったじゃんか~Bakayaro

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