春。出会いと別れの季節。
慣れ親しんだ中学の校舎、毎日顔を会わせていたクラスメイト。
ずっと続いていくかのように思えた中学生活に別れを告げ、この俺【瀬山奏汰】もこの春から高校生になる。
昨日入学式を終え、今日から本格的に始まる高校生活。
少しの不安と大きな期待を胸に、これから新たな生活を送ることになる。
とまぁ、高校生LEVEL1にも関わらず、偉そうに話しておいてなんだが
そんな俺が今後快適な高校生活を送り、高校生LEVEL100になる為の大きな問題が1つある。
それは…
??『奏ちゃーん!朝だよー!起きてー!結婚しよー!』
そう、この朝の挨拶とプロポーズを同時進行してくる幼馴染みの存在だ。
奏『…おはよう由梨、あと結婚はしない』
丁重に挨拶を返しながら、重たい瞼を開く。
奏『あのさ、1つ聞きたいんだけど、起こしに来たのに何故俺のベッドの中にいるのかな?』
目を開けると、何故か自分の顔のすぐ前に彼女の顔がある。
由『んー?起きないなら私も一緒に寝ようかなーって思って!あと好きですっ!』
奏『寝るな!告るな!!』
由『え?俺も好きだよって言った?』
奏『1文字も合ってねぇ!!』
危うく拳が出そうになるのを堪えながら、重たい体を起こしベッドからでる。
紹介が遅れたが
この少しばかり頭がお花畑な女の子こそ、俺の悩みの種でもある幼馴染みの【相川由梨】
口癖は好きと結婚。あと、何やら耳があまり良くないのか頻繁に聞き間違えをする。
家が隣同士の幼稚園から高校までずっと一緒、しまいにはクラスすら1度たりとも離れたことがないという
これでもかという程の典型的な腐れ縁幼馴染みである。
特に頼んでいる訳でもないが、朝が苦手な俺を毎日こうして起こしに来てくれるので、一緒に学校に通うのが昔からの日課だ。
奏『はぁ…とりあえず制服に着替えるから下で待っててくれるか?』
由『ううん!着替えるのここで見ながら待ってるからお構いなくっ!』
奏『俺がお構いするんだよ!』
ぶーぶーと何か文句を言いながらも、とりあえず諦めて下に降りていく由梨。
さて、着替えよう。
真新しい制服に袖を通し、諸々の準備を済ませて居間へ向かう。
??『あら、やっと準備できたのね』
眠たそうに目を擦る俺に、そんな声を掛けてきたのは俺の母【瀬山涼香】
奏『おはよう母さん、どう?俺の制服姿!』
涼『んー、20点ってところね。あ、制服だけで見るなら100点よ?』
奏『え?俺で80点減点されてるってこと?』
涼『何か不満?これでも一応息子サービスで、仕方なく20点あげたのよ?』
え、じゃあ俺自体の点数は実質-100点…。
これを実の親から言われているのだから涙を流さずにはいられない。
母さんは俺をイジるのが、いやイジメるのが好きならしく基本いつもこんな調子だ。
このいつも通りのやりとりを、俺を待っていた由梨は笑いながら見ている。
涼『それより奏汰。早く行かないと学校遅刻じゃないの?』
奏『え?学校は8時半からだよな?』
由梨が起こしに来てくれている訳だし、別に準備をするのに手間取った訳でもないので時間は余裕なのでは?と思いながら時計を見る。
8時10分。ちなみに学校までは歩いて15分程で、俺と由梨は徒歩通学だ。
奏『…由梨さん?これは一体どういうことでしょうか…』
由『えーとー…7時過ぎには奏ちゃんの部屋に着いてたんだけどねー?寝顔見てたら…起こすの遅くなっちゃったっ!』
てへっ⭐️と聞こえてきそうな程、満面の笑顔でそういい放つ幼馴染み。
奏『何やってんだ、お前ぇぇぇぇ!!』
こうして俺は高校生活2日目にして某麦わら帽子の海賊団船長の様な怒声を上げながら、駆け足で学校へ行くことになるのだった。
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