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約束どおり、菊田は旅順から帰ってきたが重症のため登別温泉で療養となった。
彼女も無事に第七師団二十七歩兵聯隊の一員になれた。しばらくして網走監獄襲撃に駆り出されたが、なんとか生き延びた。
「ご無沙汰しておりました。菊田特務曹長殿。」
2人はやっと療養所で再会した。その菊田の部屋にて。
「元気にしてたか、にしても逞しくなったなぁ。坊主頭も悪くない。」
「舐めまわすように見るの、やめてください。頭触るな。」
「刈ってしばらくして伸びた髪の何とも言えない感触…。」
「そこまでにし…。」
菊田に抱きしめられ、嬉しさのあまりため息が出た。
「網走監獄で、よく生き延びてくれた。」
「菊田特務曹長こそ、よくぞご無事で。あの、これ以上は…。我々が男色だと噂されると困ります…。」
「おっと、悪いな。お前まさか他のヤツに言い寄られてないだろうな??」
「それが、興味本位でくるヤツらがちらほらいるんです。」
「そうなった時、どうしてるんだ??」
「ちょっとしたお薬で眠ってもらいます。」
「流石だな、抜け目がない。」
「それでもしつこく迫ってくるヤツがいて、困ります。」
「そいつ、後で絞めとくわ。ところで感動の再会がてら、ちょっとひと風呂付き合ってくれねぇか。」
彼女はいぶかしげに頷いて一緒に部屋を出る。
「さっき廊下ですれ違った、アイツだろ。お前に言い寄ってくるヤツ。」
「そうです。」
「お前への好意の目。俺にはあからさまな敵意剥き出しだったな。」
山の傾斜を登りながら雑談したり。
「ずいぶん登ってますが、風呂とは。」
「もうすぐだ。」
とすぐに道が開け、そこには。
「自然の露天風呂ですか。」
「そうだ。温泉地帯だからこう言うのが幾らでもある。こんなところに入るのはアイヌだけだから。」
「人目を気にせず入れますね。」
さっそく脱いで入る彼女を見て、自分も入ることに。そして話を切り出した。
「俺も金塊争奪戦に参戦することになった。」
「そうなんですか!?」
「驚いたか。」
「半ば最終局面ですから、逆に怪しまれないか心配です。」
「あの方とは窮地の仲だからな、なんとか取り入るさ。」
菊田は彼女の背後にまわり、肩に手を回した。
「何もかも全部終わったら外国へ高跳びして一緒に暮らさないか。」
「え、急に何を!?」
次は唇を奪う。
「な、泣いてるのか!?」
「返事したら、菊田様に二度と会えなくなる気がして…。」
さっきより深い口づけをする。
「大丈夫だ。俺は死なない、絶対。だから返事を聞かせてくれ。」
「是非、一緒に暮らしたいです…。」
そこからはもう、お互いに溜まっていたものが噴出し大いに乱れ交じりあった。彼女は声も出なくなるほど菊田を求め、菊田もよがり狂う彼女の姿に理性が利かなくなるほどだった。
時は進み。
「死なないって言ったじゃない…。」
血だらけで息耐えた菊田の前に立ち尽くす。
「さようなら、菊田様…。」
誰かが来る気配を察知し、冷たくなりゆく唇にそっと口づけを。それから菊田の愛銃を2丁抜いて急いでその場を後にした。
さらに時は進んで、世界各国で暗躍するナガンM1895を持った女スパイに用心せよという噂が日本軍にも入ってきた。
「まさかあの時の…??」
手配書の似顔絵を見て、驚きながらも喜びを噛みしめる人物が。
「いつか会える日を楽しみにしてるぞ。」
名前を呼ばれたその人は、その紙を引出しにしまい、部屋を後にした。