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「どうも。隣座っていい?」
すると。
いつの間にかすぐ隣に樹が立っていて、声をかけてきた。
樹!?
まさかここに来るとは。
「あっ、うん。どうぞ」
それなりに空席がある中、騒がれているままの流れで、あえて私の隣に来た樹。
「ちょっ・・こんな空席あるのにわざわざ隣来なくてもさぁ」
樹が来てくれて嬉しい反面、樹の立場と今の状況を考えて、つい気になって伝える。
[なんで?別に良くない?ここ空いてるし、一緒にいれるなら傍にいたいって思うの普通でしょ」
「いや・・それは、そうなんだけどさぁ。ってか今日会社来てたんだね?」
「あ~。さっきお昼食堂で食べるって連絡くれたから会いに来た」
「へっ!?」
いきなり恥ずかしげもなく、堂々とそんなことを言い出す樹に驚いて戸惑う。
いや、確かにさっき樹からどこにいるか連絡来たから、そう伝えはしたけど。
まさかそれ聞いて来るとは思わなかった。
「いや・・ちょっと、ここ会社・・!」
「わーお。ごちそうさまです~」
すかさずそんな私たちに反応する三輪ちゃん。
当然目の前に座っている三輪ちゃんには、一部始終のこの会話も聞かれてるワケで。
私達の関係を唯一知られているとはいえ、目の前でのこのやり取りは恥ずかしすぎる。
「あっ、どうも~。お疲れ様です」
すると、樹の同じ部署の高杉くんが遅れてやって来て声をかけてくる。
「あっ、お疲れ様です」
すかさずこの雰囲気を変えようと高杉くんに挨拶をし返す。
高杉くんグッドタイミング!
そして樹の目の前に高杉くんが座ったと同時に。
「オレは気にしないけど」
まださっきの話の続きをし始める樹。
いや!その話はもう終わったって!
「いや、だから、もういいってその話・・」
そんなん続けてたら高杉くんにバレるって。
「別にもう隠す必要ないでしょ」
「いや・・だって・・」
樹は前以上に社内で話題の注目の人なのに。
そんなことはまったく気にしてない様子で、こっちをじっと見つめながらいつものペースで進める樹。
「えっ?どしたの?何二人でコソコソして隠し事?(笑)」
私達の様子を見て案の定、冗談交じりに高杉くんが反応。
「そっ。今までオレたち秘密の関係だったんだけどさ~。そろそろもうオレがこれ以上隠してるの我慢出来なくなってきて」
イキナリそんな露骨なことを隣で言い出して衝撃を受ける。
「おいおい、早瀬。さすがに望月さん相手にその冗談言えるとかすげーわ」
まさかの樹が二人の関係を打ち明けようとし始めているのがわかる。
だけど、今までの樹の感じと、私相手だと、さすがに高杉くんも信じがたいらしく冗談だと受け取った反応で返答する。
って・・樹、まさかここで関係バラす気じゃないよね?
いや、ここ食堂だし、皆騒いだままだし、こんなとこでそんなんバラすはずないよね。
隣の樹を見ると、高杉くんにそう言いながらその瞬間、怪しく微笑みながら、私に視線を移動させる。
この視線・・・樹、何か企んでる視線だ・・・。
出会った頃、何度も見たこの視線。
この視線をする時、絶対樹は自分の思い通りに私を翻弄させながら事を運ぶ。
少しあの頃のような嫌な予感がしたと同時に。
樹が一瞬立ち上がったと思ったら・・・。
「これでも信じない?」
そう言いながら、気づけば後ろからなぜだか抱き締められている。
えっ??
ちょっと待って。
ここ食堂なんですけど。
今、何が起きてるの??
「はっ!?早瀬、お前何してんの!?えっ、マジでホントに二人そういう関係なの!?お前の相手って、まさかの望月さん!?」
当然その光景を見て驚く高杉くん。
そして高杉くんだけでなく、食堂中が同じく騒ぎ始めているのが、周りを確認しなくてもなんとなくわかる。
というか、樹に後ろからしっかりガードされて周りを確認するどころか、まったく身動きが取れない。
そしてそんな騒いでる周りの状況を確認する勇気も今は・・ない。
「そっ。ホントはずっとこうやって皆に見せつけたかった」
いきなりのこの状況に戸惑いながらも、正直嬉しく感じている自分もいて。
最初は、樹が信じられなくて、どこに本音があるかわからなくて。
気持ちが通じ合ってからも、どこかまだ自信が無くて何かに不安で、素直にもなれなくて。
樹との関係も隠せるうちは隠しておきたいって思ってた。
だけど、今は。
もう樹の言葉にきっとどれも嘘の言葉はなくて。
こうやって樹が気持ちを伝えてくれることも、それをちゃんと言葉にしてくれることも嬉しくて。