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#コスプレ
#ドS
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契約結婚が始まって一週間
会社での私たちは、相変わらず「厳格な上司」と「生意気な部下」を完璧に演じていた。
……はずだった。
「真壁、このデータの裏付けが甘いわ。至急、確認して報告しなさい」
「えー手厳しいなあ」
会議室でのやり取り。
部下たちの前で、私はいつもの冷徹な仮面を被り
彼に厳しい指示を出す。
真壁も、いつものように肩をすくめて軽く受け流す。
けれど、誰も見ていないテーブルの下で——。
(……っ!?)
私のパンプスを履いた足に、真壁の革靴が、指先でなぞるように触れてきた。
心臓が跳ね上がる。平静を装いながら彼を睨むが、真壁は涼しい顔で資料をめくっている。
(真壁くんなにして……! バレたら…っ!)
会議が終わり、資料を片付けていると、真壁がさりげなく近づいてきた。
「マネージャー、さっきの件で少し確認が」
「……ええ。私のデスクへ来て」
周囲に怪しまれないよう、事務的な足取りでデスクへ戻る。
しかし、彼が私の背後に立った瞬間。
「……今日のストッキング、昨日俺が選んだやつですよね」
耳元で、他人に聞こえないほどの微かな声が降ってきた。
昨夜、マンションで彼が「これ、明日はいてくださいよ」と強引に渡してきた、少し透け感の強い一足。
「っ……仕事に関係ない話はしないで」
「関係ありますよ。俺のモチベーションに関わりますから」
真壁は「してやったり」という顔で、私のデスクに手を突いた。
客観的に見れば、上司に報告をする熱心な部下の姿。
でも、その指先は、私の書類を隠れ蓑にして、私の指先に一瞬だけ絡まった。
「やめて、誰かに見られる……」
「誰も見てませんよ。みんな自分の仕事で必死ですから」
そのスリルに、背徳的な昂ぶりを感じてしまう自分が一番恐ろしかった。
「氷の女王」として部下を律している私。
その実、デスクの下で年下の部下に翻弄されている私。
「……今日の夜、あの衣装…着てくれます?」
真壁の視線が、一瞬だけ私の唇に落ちる。
コスプレ趣味を隠し通すための契約。
でも、彼との距離が縮まるたびに、守るべき「秘密」が、彼と共有する「快楽」に形を変えていく。
「……帰ってから。ここでは言わないで」
私は顔を伏せ、震える声で答えた。
真壁は満足そうに笑うと、「失礼します」と大きな声で告げて、自分の席へと戻っていった。
公私混同ギリギリの、綱渡りのような時間。
このスリルに、私はいつの間にか、自分から溺れ始めていた。