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少し過去を思い出しているような感じの父だった
「やり残した事って?」
私は再び尋ねた
「お前に男を見る目を養わせる事とかかな?」
私は笑った
「今からでも遅くはないと思うわ、でも、もう結婚はこりごりよ 」
「一度の失敗ぐらいでへこたれるな、根性なしめが 」
父も私も笑った
それから久しぶりに私と母で晩御飯の支度をした、私の運転で母を乗せ買い物に出かけた、母は終始婦人会の誰それさんがどうのこうのと噂話をし、相変わらず精力的に人間関係を増やしているようだった
午後からは兄家族もやってきて、久しぶりに私は家族団らんの温かい心地よさを味わった
驚いたことに父は兄と一緒に、ハルのための遊び場を庭に作っており、木製の軽いジェットコースターを設営していた
「海外から取り寄せたんだ」
兄が自慢気に設計図を広げ、父と組み立てていた
「出来上がるまで一年はかかるわよ」
弘美さんが笑いながら言った
「これ対象年齢5歳って書いてるわよ!ちょっと気が早すぎない?」
「ハルのためという大義名分の男達の遊びなのよ 」
母も微笑ましく言った、ハルの誕生で父も母もなんだかとても幸せそうだった
私も変わらないといけない・・・そう感じさせられる光景だった
「離婚にかかるお金や・・・慰謝料は・・・働いて必ず返しますから・・・ 」
晩御飯を食べ終えて、母と弘美さんはハルの沐浴、兄はスポーツニュースを見て、それぞれがくつろいでいる時に私は父に言った
「弘美さんがやってくれてるのかね?」
「ええ・・・ 」
父は葉巻を大きく吸い込んで吐いた、白い煙が雲のように漂った
「彼女は優秀で正当な弁護士だからな・・・しかし私からすればまだまだ彼女も若い・・」
父はため息をついてぼやいた、そして私をまっすぐ見てこう言った
「ここからは私にまかせなさい鈴子、ああいう連中は一度甘い汁を吸わせるとずっと吸いたがる、まるで己の体がぶよぶよに膨れ上がっても吸いつくことをやめないヒルみたいにな」
「パパ・・・・ 」
「ああいった輩にはそれなりの対処の仕方があるのだよ、ここからは私の顧問弁護士が引き受けよう、助けが必要な時にキチンとそれを認められるという事も、強い人間になるには必要な事だ、お前はひとりで結婚を決めて今までひとりで苦労してきた、これからは支えてくれる人や、助けてくれる人に感謝し、恩返しのつもりで頑張りなさい 」
父がいったいどういう方法で俊哉とやり合うのか聞くのは怖かった
でも今では兄や弘美さんではなく、父にこの問題を解決してもらうのが一番良いのではないかと思った
私は素直に父に従い感謝した、止められていたクレジットカードを母から再び返してもらった
「新しい生活をスタートさせるのには色々と必要でしょ、もちろんこの家に一緒に住んでもいいのよ」
母は私にこう言った、ありがたかったけど、私は肩をすくめて言った
「でもこんな山の上に住むには不便すぎるわコンビニもないんですもの 」
母は笑って言った
「同感よ 」