芹那side
あの日、1人の男の子に声をかけたのはたまたま。呪霊を祓い終えて疲れて機嫌が悪かった時、呪霊をへばり付けたいじめっ子3人組を見つけた。呪霊の種類から言って現在進行形で何かをしていたのは明白。声をかける義理はなかったがなんとなく、ほんとなんとなく声をかけた。そこに居たのは金髪褐色の男の子だった。成程、容姿でからかわれていたのか。ほんとクソだな。こんなクソ野郎を守らなきゃいけない呪術師はクソだな。
いじめっ子3人組が逃げていった。さっさと帰るか。今日も帰ったら稽古だろう。
「待って!!」
「あ?」
「あ、あの!!…そのっ……」
「何」
男の子には悪いが私は今機嫌が悪い。
「あ、ありがとう」
「!」
そうだ。呪術師は感謝される職業では無い。感謝をされるのはなんだか居心地が悪かった。
「助けてくれて…良かったら、友達になって!!」
これまた吃驚だった。友達なんて居なかったから。居なかったのはきっと、私が非呪術師を舐めてたからだろう。それに、私に近づく人間はいつだって下心丸出しのクソ野郎。だから、そう返事したのは気まぐれ。本当に気まぐれだったんだ。
「………いいよ」
これがゼロとの出会いだった。
その日、私のお世話係に話をした。
「鈴木。私、友達出来た」
「本当ですか!」
「うん」
「それは良かったです!芹那様のお友達ですから、きっと素敵な方なんでしょう」
本当に嬉しそうだった。
「…まあ」
私はなんだか恥ずかしかった。
「芹那」
「悟様!」
「何悟」
「父さんが遅いから呼びに行けって」
「ああ、ごめん。今行く。じゃあ行くね鈴木」
「はい!」
稽古だ。体術に術式。そして実地。
「芹那」
「ん?」
「なんかいいことあった?」
「え、ないけど。何?」
「いや、機嫌良かったから」
「ふーん」
その時は認めたくなかっただけで、嬉しかったんだろう。と言うか、鈴木に報告してる時点で浮かれていただろう。
それからゼロとはよく遊ぶようになった。父様にゼロの存在がバレたが任務を全うすれば問題無いと言われた。だからゼロと放課後は沢山遊び、家に帰ったら任務、稽古の毎日だった。ゼロと出会ってから任務も稽古も力を入れるようになった。だって、全う出来なければゼロと縁を切ることになると思ったから。それだけは嫌だった。それに、強くなればゼロを守ることが出来る。
ヒロと出会ったのも気まぐれ。最初、人から隠れるように気配を感じ、暗殺の追っ手かと思った。もしそうならゼロに危害が加わる。友を危険に晒すほど腐ってはいなかった。だが居たのは泣いている男の子。昔の私だったらほっといただろう。だって私には関係ないから。だが、ゼロと出会って人間としての優しさを教えられた。だから声をかけた。
その子は失声症らしい。きっと辛いことがあったのだろう。鈴木に教えてもらった。泣いている人が居たら、寄り添ってあげるといいらしい。
「辛かっただろ」
「!」
「芹那?」
「ごめんね。君に何があったのかは分かってあげられない。でも、よく耐えたね」
「っ、」
「わっ!どうしたんだ?!」
泣き始めたその子をそっと抱きしめた。鈴木、これが寄り添うなの?
それからその子とも仲良くなった。これがヒロとの出会い。そのことをまた鈴木に言った。
「芹那様。私は嬉しゅうございます。それが寄り添うということです」
「そっか。私は寄り添えてたのか」
「立派に成長なさって嬉しゅうございます」
それから少しして、ゼロがヒロの失声症の原因を聞いた。人には聞かれたくないことの一つや二つある。だからゼロを止めた。でもヒロは話してくれた。それはとても勇気のいることだったと思う。だから、
「景光、話してくれてありがとう。とても辛かったね。私は景光が生きていて嬉しい。私達は景光が背負ってる物を一緒に背負いたい」
もうヒロは友達だった。だから背負いたいと思った。
そうしてヒロは泣き出してしまった。何故だろうか。分からなかった。
「…が、と」
「「え!」」
今、声が…!
「あり、が、と、、う。ふたり、、と、も」
「景光!!」
私は嬉しくてヒロを抱きしめた。こうしてヒロの失声症は終わった。
中学でも私が心の底から友と呼べるのは2人だけだった。私は部活には入らず、帰っては任務と稽古に追われていた。段々、暗殺が出来ないと分かったからか追っ手は居なくなった。ただ、懸賞金は増えるばかりだけど。そしてもうひとつ増えたのは、
「貴方よね。五条さんは」
またか。気の強そうな女に取り巻きの3人。
「私が五条だから呼び出したんじゃねーの?分かりきったこと聞くなよ」
「な、生意気ね!」
「てめえもな」
「ま、いいわ!今すぐ降谷君と諸伏君から離れなさい!」
「嫌」
「じゃ、じゃないと痛い目見るわよ!!」
「はあー…あんたらに何が出来んの?私より弱いくせに」
「こ、こんな野蛮な子が近くにいて2人も嫌がってるわよ」
野蛮てw
「だったらとっくに縁切られて仲良くしてないよ。あんたらみたいに」
「な、なんですって!ちょっと可愛いからって調子乗んじゃないわよ!!」
女は拳を振り上げてきた。さて、どうしてやろうか。
「「おい」」
「あ」
「え、ふ、降谷君に諸伏君?!」
「俺らのセリに何してんだよ」
「君達みたいな性格不細工がセリに近づかないでくれる?」
見た目に遭わず、毒舌だなーヒロw
そーだ、見せつけてやろ
「ゼーロ、ヒーロ」
そう言うと私は2人に腕を絡ませる。
「「!!」」
「来てくれてありがと♡」
「「お、おう」」
2人の顔は真っ赤だ。理由はよく分からない。
「セリ、3人でスタバ行きたーい」
「行こうか」
「行くー♡」
「ちょ、ちょっと!」
「金輪際、セリに近づくな不細工が」
「ゼロー。私以外見ないで」
「わ、悪い」
ゼロの顔がまた赤くなった。そんなにこの女に怒ってくれてるのだろうか。嬉しいな。
「行こ」
「「応」」
「大丈夫だったか?セリ」
「うん、来てくれてありがとう」
「せ、セリ。いつまで腕組んでるの?」
「え、嫌?」(無意識な上目遣い
「「嫌じゃない」」
「じゃスタバ行こ…そう言えば部活は?」
「休みになった」
「2人とも?」
「うん」
「じゃあ、スタバ行ける?」
「「行ける」」
「やったー!」
嘘。ほんとは知ってる。私が絡まれるのを見て部活を休んでくれたのを。
………ありがと。
3人で進路の話になった。2人は警察官になりたいらしい。私は呪術師になる他ないだろう。だから、何も言えなかった。
とうとう高校の話になった時、初めて高専のことを話した。そこで別れてしまうけれど、仲良くしてくれると言ってくれた。嬉しかった。
呪術師になるのに理由はなかった。ならなければならないからなる、そんな動機だ。でも、この2人を守れるならどんなことだってやってやる。今はそう思う。
卒業式、たくさんの人から告白された。たくさんの人から第二ボタンを押し付けられた。こんなゴミ渡されてもなー。2人の元に早く行きたいなー。あ、居た。
どうやら2人も告白ラッシュが終わったらしい。誰にもOKしなかったと言った。誰か一人くらいOKしても良かったんじゃない?私もしてないけれど。
「俺の第二ボタン貰ってくれない?」
「え?」
「俺のも」
何故だろうか。意中の相手が居るのに、私が貰っていいのだろうか。愛情より友情?いいの?満更でもない私は2人の第2ボタンを貰った。他の人から押し付けられた第二ボタンよりもずっと嬉しかった。
「じゃあ、またね」
「うん」
「またね」
こうして私達は中学を卒業した。
家に帰った私は2人以外から貰った第二ボタンをゴミ箱へ、ゼロとヒロから貰った第二ボタンは宝箱に入れた。
コメント
1件
宝箱にわざわざ入れるの可愛すぎる