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無限に続く流転砂漠の中、三人は疲れ切った身体を引きずりながら、砂の波に飲まれそうになりながらも、必死で前へ進んでいた。
リクはふと、アイビーの肩に手を置き、静かに言った。
「……アイビー、大丈夫か?」
アイビーは少し顔を背けて、けれど涙は見せずに答える。
「……あたし、つかれた。リク、もう、すすむのむずかしいよ……」
ロビンはそんな二人を少し離れた場所から見つめていたが、いつもの無口な様子とは違い、優しい眼差しを浮かべた。
「……俺、ここで休も。みんな、ちょっとだけ、だ」
三人は砂に腰を下ろし、無言のまま砂の風に吹かれていた。だが、その沈黙の中で、確かな絆が静かに育まれていた。
リクはポケットから、小さな石を取り出してアイビーに差し出した。
「……これ、覚えてる?あの歪み樹海で拾った石だよ。なんか、不思議と落ち着くんだ」
アイビーは石をじっと見つめて、小さく微笑んだ。
「……うん、ありがとう。リク」
ロビンも小さく頷き、三人はそれぞれの思いを胸に、再び立ち上がる準備をした。
「……さあ、進もう。俺たちなら、まだ先に行ける」
流転砂漠の果てに、何が待ち受けているのかは誰にもわからない。だが、彼らの心は確かに繋がっていた。
砂漠の闇が深くなるにつれて、地面から骨のクリーチャーたちが次々と姿を現した。
数は膨れ上がり、無数の白い骨が月明かりに鈍く光りながら、ゆっくりとリクたちに向かって進んでくる。
「こ、これは……!?」リクが呟く。
「いっぱい……いっぱいでる……」アイビーは小さな身体を震わせていた。
「やるしかねぇな……俺の爆裂矢、準備してるぞ」ロビンが静かに弓を構える。
骨たちは一体の体力は少ないものの、数の暴力で圧倒的だった。
アイビーは強度増幅の力を最大限に発揮し、二人を守るように前に立つ。
「リク、分析使ってくれ!」ロビンが声を張った。
リクはキラキラしたXPを集中して使い、骨たちの動きを解析し始める。
「待って……彼らは光の強い場所を嫌ってる……!」リクは叫ぶ。
急いで周囲の石を集め、鏡の破片で光を反射させる装置を即席で作るリク。
その光が骨の群れに当たると、骨は逃げるように動きを鈍らせた。
「これでなんとか、夜明けまで耐えられるか……」アイビーが息を切らしながら言う。
「みんな、あと少しだ。俺たちで絶対に守る!」リクは拳を握り締めた。
そうして三人は夜明けが来るまで、無限に湧き続ける骨の群れと戦い続けた。
夜明けまで、あと5時間──
砂漠の冷え込みが一段と厳しくなり、疲労の色が濃くなる三人。
アイビーの動きが次第に鈍くなり、足元に倒れこんだ。
「もう…だめ……」小さな声で呟き、体の力が抜けていく。
「アイビー!」リクが駆け寄り、彼女の肩を支える。
「しっかりしろ、まだ俺たちにお前が必要だ!」
しかしアイビーの呼吸は浅く、目もうつろだ。
「力が…出ない……」彼女の声は震え、小さな体が震えた。
ロビンは冷静に矢を握りしめながらも、焦りを隠せない。
「リク、今が正念場だ……俺たちでなんとかするしかねぇ!」
リクはXPの力を使い、アイビーに少しでも回復の助けになるよう集中を試みる。
しかし、体力の限界は明らかだった。
「あと少し、夜明けまで…なんとか耐えよう…!」リクは自分に言い聞かせるように呟いた。
夜の砂漠に骨のクリーチャーたちが無数に湧き出し、冷たい風が吹き荒れる中、リクは倒れたアイビーの側から離れられなかった。
「アイビー、大丈夫か?」リクは震える手で彼女の頬をさすりながら声をかける。
だが、アイビーの目は虚ろで、呼吸も浅い。
背後からは骨の群れが近づく音。だが、ロビンが矢を放ち、冷静かつ的確に敵を狙い撃ちしていた。
「俺が全部受け止めるから、お前はアイビー守れ」とロビンの声が届く。
リクは精一杯アイビーの体を支え、彼女の体にXPの力を注ぐよう集中する。
「絶対に諦めない…アイビーも、俺たちも…ここを乗り越えるんだ」
冷たい砂の上、リクの手から放たれる微かな光がアイビーの身体を包み込む。
時間は刻一刻と過ぎ、夜明けまではあと少し――
アイビーがゆっくりと目を開けると、眩しい太陽の光が彼女の瞳に飛び込んできた。
辺りを見回すと、骨のクリーチャーたちは一匹もいなくなっていて、3人は古代遺跡の石造りの休憩所で休んでいた。
リクが隣でアイビーの手を握り、安堵の表情を浮かべている。
「アイビー、よかった…目、覚めたんだな。」
アイビーはまだ少しフラフラしながらも、かすかに微笑み返す。
「リク…ありがとう、ぜんぶ、ありがとうね…」
ロビンは少し離れたところで警戒を解かず、遺跡の入り口を見張っていた。
「俺は…休憩すこしだけ。すぐまた進む。」
砂漠の熱風が遠くから吹き抜ける中、3人は次の冒険への決意を胸に、短い休息を取った。
アイビーはふと自分の体に違和感を覚えた。
じっと自分の腕や脚を見ると、以前は痛みを伴っていた傷跡が、きれいに包帯で覆われている。
しかもただ巻かれているだけではなく、何か薬のようなものが塗られた形跡もあった。
「リク…これ、いつの間に…?」
リクは顔を少し赤らめながら目を逸らした。
「アイビーが倒れた時、放っておけなかったんだ。…俺、ずっとお前のそばにいたくて、つい…」
アイビーの胸の中には、言葉にできない、でも確かに温かい感情がじわじわと広がっていく。
感謝と、戸惑いと、少しの恥ずかしさ。
でもそれ以上に、「この人は、私のためにここまでしてくれたんだ」という思いが強かった。
「…ありがとう、リク。」
声がかすかに震えた。
リクは嬉しそうに微笑み返した。
「…アイビー、俺はお前を絶対に守る。