テラーノベル
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ドアが閉まったあと。
部屋は一気に静かになる。
さっきまでの慌ただしさが、嘘みたいに消える。
セブンは立ったまま。
動かない。
クールキッドはその場にいる。
少しだけ首を傾げている。
「……パパ?」
呼ぶ。
反応を待つ。
数秒。
セブンはゆっくり口を開く。
「……やるな」
低い声。
短い。
それだけ。
クールキッドは瞬きをする。
「……?」
意味を探す顔。
でも、続きはない。
「やめろ」
もう一度。
同じ言葉。
それ以上は言わない。
理由も。
説明も。
ただ否定だけ。
クールキッドの表情が少しだけ曇る。
さっきまでの楽しさが消える。
「……なんで」
小さな声。
でも——
セブンは答えない。
視線も合わせない。
ただ立っている。
それが答えみたいに。
「……」
クールキッドは黙る。
理解はしていない。
でも。
“ダメなこと”だとは分かる。
少しだけ俯く。
それから。
ぽつりと。
「……すごいの、だめ?」
小さな声。
誰に向けたのか分からない言葉。
でも。
セブンは何も言わない。
その沈黙が、答えになる。
クールキッドはそれ以上聞かない。
ただ——
静かに、その場を離れる。
積み木のところへ行く。
いつもより少し乱暴に積む。
崩す。
音が少し大きい。
笑わない。
繰り返すだけ。
セブンはそれを見ている。
止めない。
でも、近づかない。
距離ができる。
目に見えない距離が。
——同じ頃。
ピザ屋。
エリオットは走り込む。
「すいません遅れ——」
途中で止まる。
店内の様子が、おかしい。
「……何だこれ」
カウンター。
注文用のタブレット。
全部、バグっている。
画面が勝手に切り替わる。
注文履歴が消えて、戻って、また消える。
「おい、これどうなってんだ!」
店長の声。
「分かりません!」
バイトの焦り。
エリオットは息を整える間もなく近づく。
画面を見る。
一瞬で理解する。
「……またか」
昨日。
さっき。
全部繋がる。
でも今日は違う。
規模が大きい。
一台じゃない。
全部。
店内のシステムが巻き込まれている。
「ちょっとどいてください!」
操作する。
でも反応が遅い。
入力がズレる。
「くそ……」
そのとき。
画面の端に、一瞬だけ映る。
小さな、見覚えのある動き。
ログの流れ。
不規則。
でも特徴がある。
「……」
エリオットの顔が少しだけ強張る。
思い出す。
朝。
部屋。
小さな手。
「……おいおい」
小さく呟く。
「これ……」
止めようとする。
でも。
完全には止まらない。
むしろ、反応しているみたいに動きが変わる。
試されているみたいに。
遊ばれているみたいに。
「……マジかよ」
半分呆れた声。
半分、納得。
そして。
少しだけ、笑う。
「すげえな……」
ぽつりと。
否定じゃない。
純粋な感想。
周りは焦っている。
でも。
エリオットだけ、少し違う視点で見ている。
「おい、直せるのか!?」
店長の声。
「……やります」
短く返す。
画面に向き直る。
指を動かす。
「遊びすぎだ」
小さく言う。
誰にでもなく。
でも。
どこか届いているみたいに。
一瞬だけ、動きが緩む。
「……そこか」
すかさず修正を入れる。
完全じゃない。
でも、少しずつ戻る。
正常に。
——その頃。
部屋。
クールキッドは積み木を崩している。
何度も。
笑わずに。
でも。
ほんの一瞬だけ。
手が空中で動く。
誰にも見えないように。
小さく。
試すように。
そして。
また積み木に戻る。
「……」
セブンはそれを見ている。
全部。
分かっている。
でも。
まだ、何も言えない。
言葉が足りない。
否定しか持っていない。
それが。
一番、まずいと分かっているのに。
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あめ猫
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