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「ご迷惑をおかけしてお騒がせしました。…恥ずかしいところも見せちゃって」
恐縮気味にぺいんとたちに謝るトラゾーはそれでも嬉しそうな顔をしていた。
「いいって、友達じゃん俺ら!そんなこと迷惑だなんて思わねぇよ!」
「そうですよ。寧ろ、トラゾーさんはもっと人を頼るべきです!だから、今回話してくれて僕たち嬉しかったんですよ」
「ホントに…?鬱陶しくなかった?」
「「ないない!」」
声を揃えて言う2人にふはっ、と無防備に幼なげな顔でトラゾーは笑った。
謝るために帽子を外していたからその表情は丸見えだ。
ガタガタ!と教室中で音が鳴る。
「……おっと」
「これはマズイのでは?」
「?え?」
今はお昼休み。
他の生徒もいる。
そして、普段帽子で顔を隠しているトラゾーの顔を見慣れない人たちばかりだ。
しかも、そんなレアな状況に更にトラゾーの無防備な笑顔を見た人たちの反応は様々だ。
大半は驚きであるが、中にはよからぬ感情を抱く者や口に出す者もいた。
「トラゾー」
「はい?」
「おいで」
自分の膝を叩く。
「え、乗れってことですか?俺、重いですよ」
「いいから、おいで」
腕を引いて座らせる。
対面にして、他の奴らから顔を隠すように。
一層と教室が騒がしくなった。
「トラゾー、俺以外に見せちゃダメって言ったでしょ?」
「ぇ、な、何のことですか」
「………」
「「流石、天然タラシ」」
「学校終わったら教えてあげる」
未だに理解できてないトラゾーは首を傾げたが、小さく頷いた。
「ふふっ、こうやってると安心する」
「〜〜ッ!、もう」
「クロノアさん、頑張ってください」
「応援してますよ」
大変ですね、と付け加えるしにがみくんに苦笑した。
「ありがと」
「あ!よかった!」
まだざわつく教室にらっだぁさんが入ってきた。
「ん?あれ?トラゾーどうした?」
「俺にもさっぱり。でも、あったかいんでいいかなって」
にへ、と笑う顔にむっとする。
「俺も胸ならいつでも貸すよ」
そうしれっと言うらっだぁさんにきょとんとトラゾーはして
「何かあった時はお願いします…?」
と返事していた。
「こら、お願いしない」
らっだぁさんから庇うようにしてトラゾーを抱きしめる。
「ノアは嫉妬深いなぁ。猫だもんな、しょうがねーか」
あの時のようにトラゾーの頭を撫でようとした手をはたき落とす。
「お」
「「お?」」
「触らないでください」
「えぇ?誰のおかげか分かってる?」
「ソノセツハアリガトウゴザイマシタ」
感謝はしてるけどそれはそれ、これはこれだ。
「綺麗な棒読み!…あ、そうじゃなくて!」
はっと思い出したかのようにらっだぁさんが声を上げる。
「トラゾー、今度また演劇の脚本一緒に書こう」
「え?俺でいいんですか?」
ぱぁと嬉しそうな顔になる。
「うん、また詳しいことLINEすんね」
「はい!」
「じゃ、またねー」
手を振り嵐のように去っていったらっだぁさんに律儀に手を振りかえしたトラゾーは楽しそうな嬉しそうな表情だった。
「わぁ、今度はどんな話にしようかな」
「……」
トラゾーのよく回る頭の中ではきっといろんな構想が練られているだろう。
こだわりも強いからきっと面白い話を書いてくれるのだろうけど。
「今は、俺に集中ね?」
「ぅひゃ!」
耳を触ると大袈裟に肩が跳ねていた。
「び、びっくりするからやめてくださいよ!」
「トラゾーは俺だけ見ててよ。…ね?」
「ゔ…」
俺の肩に顔を埋めて、その顔を隠してしまった。
「言われなくたって、ずっとクロノアさんしか見てません…」
「ゔっ…」
不意打ちにそう返されて顔に熱が集まる。
顔を上げればぺいんととしにがみくんがニヤニヤと笑っていた。
「何はともあれよかったです」
「終わりよければ全てよしってやつだな」
ニヤニヤしていた顔は本当に嬉しそうな顔になっていて、
「クロノアさん」
「トラゾー」
「「お幸せに!」」
心からの祝福の言葉と笑顔。
その言葉に顔を上げたトラゾーはあの時のように嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう、2人とも大好きだ!」
「僕も大好きです」
「俺も大好きだぜ!勿論、クロノアさんも」
「僕もクロノアさん大好きです」
「ふふ、ありがとう。俺も2人とも大好きだよ」
トラゾーを見れば俺の方を見ていて、嬉しそうに笑っていた。
「クロノアさんも大好きです」
「俺は愛してるよ」
「な゛…ばっ、…ッッ〜、もう!」
「おやおや、トラゾー真っ赤になって可愛いねぇ」
「あらあら、ホント。トラゾーさん可愛いですねぇ」
「揶揄うなよ、バカッ!」
照れて真っ赤になっているトラゾーはそれでも嬉しそうであった。
「いくら反応が可愛いからってあんまトラゾーを揶揄わないの」
「「はーい」」
「クロノアさんも、あんま恥ずかしいこと言わんでくださいよ…」
「好きな子はいじめたくなるでしょ?俺、もう我慢しないことにしたからさ」
ぎゅっと抱きしめると、慌て出すトラゾー。
「受け止めてくれるんでしょ?覚悟しててね、トラゾー」
「ふぇ…⁈」
と、そこでお昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。
「さ、席に戻りな?」
自分の上からおろして、笑いかける。
「クロノアさんイケメーン」
「カッコいー」
「2人もね」
「「はーい」」
七味兄弟は自席に戻っていた。
「トラゾー?先生来ちゃうよ?」
ぐっと制服を引っ張られる。
「わっ」
「クロノアさんこそ、俺がどれだけ我慢してたか覚悟してくださいね」
恥ずかしさで赤い顔のままそう告げて、逃げるように席に戻っていった。
「………、」
周囲のクラスメイトに何とも言えない顔を向けられる。
「……それは俺もなんだよな」
とりあえず学校が終わったら色々と教え込むことを決めた。
「…覚悟してろよ」
その呟きは教室の引き戸を開ける音に掻き消された。
おわり