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#bl注意
ゆ
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Guest79
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おはうよp@6秒で殴る天才子役
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おはうよp@6秒で殴る天才子役
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放課後の自習室は、妙なほど静かだった。
窓の外では、傾きかけた西日が校舎を赤く染め、古びた木製の机の上へ細長い影を落としている。
部活動へ向かった生徒たちの声も、廊下を走る足音も、もうほとんど聞こえない。
そんな静寂の中。
「カチッ」
「カチッ」
「カチッ」
シェドレツキーは、机に頬杖をついたまま、シャーペンの先を意味もなく何度も出し入れしていた。
茶色の巻き毛が額にかかり、シャツのボタンは上から二つほど無造作に外されている。
目の前には、進路希望調査の用紙。
教師から渡された、未来について真面目に考えろという圧力の塊。
しかし。
そこに書かれているはずの「将来の夢」も「希望する進路」も、現在のシェドレツキーにとってはどうでもよかった。
白紙のまま放置された用紙の横。
彼の興味は、ノートの端に描いた落書きへと完全に移っていた。
「……退屈だなぁ」
小さく呟く。
そして、シャーペンを握り直した。
「こういうの、考えろって言われても思いつかねぇんだよな」
カリカリ、カリカリ。
ノートの端へ、乱雑な線が走る。
最初に描かれたのは、猫の顔だった。
吊り上がった目。
いかにも性格の悪そうな眉。
口元には、今にも誰かへ噛みつきそうな鋭い牙。
その頭には、王冠を思わせる歪なトゲ。
さらに身体を描き足していく。
細い腕。
尖った爪。
そして、まるでガラス細工のように肋骨が透けて見える胴体。
その上には黒いパーカー。
長い黒尻尾。
「……なんか、悪役っぽいな」
シェドレツキーは少しだけ満足そうに呟いた。
次に赤いボールペンを取り出す。
目を赤く塗る。
そして首輪の中央に、反逆の印でも描くように赤いバツ印を入れた。
尻尾の先にも、同じようなバツ印。
「よし」
さらに、身体の横へ名前を書き込む。
『Gatito』
スペイン語で子猫。
響きだけなら可愛らしい。
しかし、その名前を与えられたキャラクターの顔は、どう見ても可愛らしくない。
世界で一番生意気。
世界で一番強がり。
主人公の邪魔をしては返り討ちに遭い。
ボコボコにされても、次の話では何事もなかったように復活する。
そして、なぜか魚だけは異様なほど大好き。
そんな、典型的な「憎めない悪役キャラクター」だった。
「世界で一番生意気で、強がりで……」
シェドレツキーは顎に手を当てる。
「……魚が大好きな黒猫の悪役キャラ、と」
自分で描いておきながら、かなり適当だった。
設定もない。
過去もない。
目的もない。
ただ暇つぶしで描いただけ。
それでも。
なぜか、このキャラクターだけは妙に気に入った。
「お前、主人公に何回負けても絶対へこたれなさそうだな」
もちろん返事などない。
シェドレツキーは小さく笑った。
「まあ、せいぜい頑張れよ。落書き野郎」
その瞬間だった。
パチッ。
自習室の蛍光灯が、一度だけ不自然に明滅した。
「……?」
シェドレツキーが顔を上げる。
窓の外の夕焼けが、妙に赤い。
さっきまで橙色だったはずの光が、まるで血を溶かしたような深紅へと変わっている。
空気が重くなった。
静かな自習室の中で、何かが軋む。
ギギギギ……。
「……なんだ?」
シェドレツキーが椅子から身体を起こした。
その背後。
空間そのものが、ゆっくりと歪んだ。
まるで透明な布を内側から引っ張っているように、景色が波打つ。
そして。
その裂け目から、一人の男が滑るように姿を現した。
赤いシルクハット。
赤い瞳。
整った服装。
そして何より。
そこにいるだけで、この世界そのものが「こいつは普通じゃない」と告げているような異様な存在感。
スペクターだった。
「おや」
その声に、シェドレツキーの肩が跳ねる。
「……誰だよ、お前」
「これはこれは」
スペクターはシェドレツキーには答えず、机の上のノートへ視線を落とした。
そして。
「……実に味わい深い」
細い指先が、ノートに描かれた黒猫の輪郭をなぞる。
「ほう」
目。
爪。
肋骨。
尻尾。
最後に、乱雑に書かれた名前。
『Gatito』
スペクターの口元が、ゆっくりと吊り上がった。
「現実の人間たちは、皆似たような顔をしている」
「は?」
「夢だの、進路だの、将来だの。実に退屈な話ばかりだ」
スペクターは楽しそうに笑う。
「だが」
指先が、Gatitoの赤い目を軽く叩いた。
「こういうものは面白い」
「……何が?」
「誰かの暇つぶしから生まれた、意味のない悪役」
スペクターの瞳が赤く輝く。
「設定も薄い」
「背景もない」
「存在理由すらない」
「それなのに……」
スペクターは、ひどく嬉しそうに笑った。
「生きる気だけは、異様なほど強そうじゃないか」
「いや、ただの落書きだぞ?」
シェドレツキーが呆れたように言う。
「そうだね」
スペクターは頷いた。
「だからこそ、面白い」
「……は?」
「本当の命を与えてみよう」
その言葉を聞いた瞬間。
シェドレツキーの顔から、笑みが消えた。
「……おい」
スペクターの掌に、赤黒い光が集まり始める。
「待て」
「この子を私の箱庭へ連れていけば」
「待て待て待て」
「きっと素晴らしい騒ぎを起こしてくれる」
「お前、まさか……」
スペクターが指を鳴らした。
パチン。
瞬間。
ノートが眩い光を放った。
「うわっ!?」
紙面に描かれていた黒い線が、まるで生き物のように蠢き始める。
シャーペンの黒鉛が浮き上がる。
赤いボールペンの色が渦を巻く。
紙の上に描かれていた猫の輪郭が、ゆっくりと立体へ変わっていく。
「おいおいおいおい!!」
シェドレツキーが椅子を蹴って後退する。
紙が膨らむ。
盛り上がる。
そして。
バリィッ!!
ノートの中央を突き破って、小さな腕が飛び出した。
続いて。
頭。
胴体。
尻尾。
そして最後に。
「……グルル……」
低い唸り声。
紙の中から這い出してきたのは。
シェドレツキーが数分前に描いたばかりの黒猫だった。
ただし。
絵だった頃より、遥かに生々しい。
黒い毛並み。
鋭い爪。
透けるように浮かび上がった肋骨。
黒いパーカー。
そして頭には、いつの間にか緑色のドミノクラウンが輝いている。
背中のパーカーには、シェドレツキーが適当に描いた魚の骨の模様まで、見事な刺繍として再現されていた。
小さな身体。
しかし。
その存在感は、到底「子供ほどの大きさの猫」と呼べるものではなかった。
赤く潤んだ眼が、ゆっくりと開く。
「……んだ?」
Gatitoは周囲を見回した。
「ここ……どこだ?」
そして。
目の前にいる二人を見つける。
「……」
「……」
数秒の沈黙。
Gatitoの眉間に、深い皺が刻まれた。
「お前ら……」
緑色の爪が、シャキィンッ!! と伸びる。
「俺を勝手に描いたの、どっちだこの野郎ッ!!」
「えっ」
シェドレツキーが指を自分へ向ける。
「俺?」
「お前以外に誰がいるんだよ!!」
「いや、待て待て! 描いたのは確かに俺だけど!」
「だったらテメェか!!」
Gatitoが飛びかかる。
「うおっ!?」
シェドレツキーが机を盾にする。
「ふざけんな!!」
「ちょっと待て! お前、落書きだぞ!?」
「知るか!!」
「いや普通そこ気にするだろ!」
「俺は俺だ!!」
Gatitoは机の上に飛び乗る。
「紙切れに描かれて、紙切れの中で終わるようなタマじゃねぇんだよ!!」
「……」
シェドレツキーは思わず目を丸くした。
そして。
「……ああ」
小さく笑う。
「そういうキャラだったな、お前」
「何笑ってんだ!!」
「いや」
シェドレツキーは肩をすくめた。
「本当にそのまんま出てきたなと思って」
「誰のせいだと思ってんだ!!」
Gatitoが再び飛びかかろうとした。
その瞬間。
ズズズズズ……。
床から赤黒い霧が噴き上がった。
「……ん?」
Gatitoの身体が止まる。
「なっ……なんだこれ!?」
霧が足へ絡みつく。
腕へ。
尻尾へ。
そして、全身を包み込んでいく。
「離せ!!」
Gatitoが必死にもがく。
「俺はまだ何もしてねぇぞ!!」
「そうだね」
スペクターが笑う。
「だからこそ、これからしてもらうんだ」
「はぁ!?」
「君には新しい舞台を用意してある」
赤黒い霧の向こう。
空間が大きく裂ける。
その先には。
暗い空。
崩れた世界。
そして、どこまでも続く異様な領域。
「名はFORSAKEN」
スペクターは楽しそうに告げた。
「捨てられた者たちが集まり、絶望と殺意が渦巻く、最高に素敵な箱庭さ」
「知らねぇよ!!」
「そこで君には、好きなだけ暴れてもらおう」
「嫌だ!!」
「爪も振るっていい」
「魚は!?」
「……」
スペクターが一瞬だけ黙った。
Gatitoの目が鋭く光る。
「魚はあるのか!?」
「……もちろん」
「よし!!」
即答だった。
「行く!!」
シェドレツキーが呆然とする。
「お前、そこで決めるのかよ……」
「魚があるなら話は別だ!!」
「現金すぎるだろ……」
Gatitoは霧に包まれながらも、最後まで威勢よく叫び続けた。
「おい、そこの描いた奴!!」
「ん?」
「俺を勝手に生み出した責任、絶対忘れんなよ!!」
「……はいはい」
「いつか絶対、テメェのところまで戻ってきてやるからな!!」
「それは怖いな」
「覚えてろぉぉぉぉぉっ!!」
Gatitoの叫び声が、空間の裂け目の向こうへ吸い込まれていく。
そして。
パタン。
裂け目が閉じた。
自習室に静寂が戻った。
蛍光灯も元通り。
夕焼けも、いつもの色へ戻っている。
残されたのは。
椅子に座ったシェドレツキーと。
机の上にぽっかりと空いたノートの穴だけだった。
「……」
シェドレツキーはしばらく黙っていた。
やがて。
「……マジかよ」
自分が描いた黒猫がいた場所を眺める。
数分前まで、ただの落書きだった。
意味なんてなかった。
暇つぶしだった。
なのに。
今はもう、どこかの世界で本当に生きている。
しかも。
よりによって、あんな生意気な性格で。
「……無事に生きていけんのかね、あいつ」
少しだけ心配そうに呟く。
しかし。
その直後。
シェドレツキーは肩をすくめた。
「まあ……あいつなら大丈夫か」
何度負けても立ち上がる。
何度追い払われても戻ってくる。
何をされても、絶対に自分だけは諦めない。
そんなキャラクターとして描いたのだから。
きっと。
あの黒猫は、どこへ行っても生き残る。
たとえそこが。
FORSAKENのような、理不尽と殺意で満ちた世界だったとしても。
「……魚、ちゃんと食わせてもらえよ」
シェドレツキーは小さく笑い。
穴の開いたノートを閉じた。
そして、何事もなかったかのように鞄へ放り込む。
進路希望調査の用紙は。
結局、最後まで白紙のままだった。
ただし。
その日から。
どこか遠い異世界の片隅では。
一匹の黒猫が。
「魚よこせぇぇぇぇぇっ!!」
と叫びながら緑色の爪を振り回し。
理不尽な運命そのものへ、全力で喧嘩を売り続けることになる。
それが。
シェドレツキーのくだらない暇つぶしから生まれた、世界で一番生意気な悪役。
Gatitoの。
長い長い物語の始まりだった。
コメント
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控えめに言って最高です 続きをヘドバンしながら楽しみに待ってます^^