TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
シェアするシェアする
報告する

あれから昼休みは毎日アーサシュベルト殿下の食事の介助をしている。

そして、お決まりのようにセドリック様はなにかと言い訳を作っては、大ダッシュで執行部の部屋を出られて、いつもふたりきりに強制的になる。


「エリアーナ、今日もありがとう」


殿下は階段から落ちて、腕の骨を折っただけでなく心まで弱っているのか、わたしに毎日お礼を言われるようになった。

それとも頭も激しく打って、塩対応の方法を忘れた?


深いグリーンの瞳を真っ直ぐわたしに向けて真剣にお礼を言われる。


殿下の綺麗な瞳にわたしが映る。


いままでこんな経験がなく、あまりにも恥ずかしいのでナイフとフォークを持つ手を見ながら首を縦にふる。


「どうぞ」

「ありがとう。エリアーナに食べさせてもらえるなんて、俺は幸せだよ」


こんな甘い毒を吐きながら、眩しいキラキラ笑顔をわたしに向けられる。

やっぱりアーサシュベルト殿下は階段の事故からおかしくなった。

これにはどう返事して良いのか非常に困惑してしまう。


最近は殿下の提案で、介助の後にわたしも持参したお弁当を執行部で食べて、その後にお茶を一緒にするようになった。


「実はエリアーナにお願いがあるんだ」

「なんでしょう?わたしに出来ることでしたら」


「うん。実は…」

殿下は少し言い躊躇(ためら)っているようだ。

「アーサシュベルト殿下?」

わたしに言い躊躇うなんて、珍しいこともある。

いままでは、嫌味もサラリと出ていたではないか。


「エリアーナ、俺達は婚約者同士だ。アーサーとかアッシュと愛称で呼んで欲しい。それから同級生でもあるし、敬語も使わないでいい」


な、なにを!

突然の愛称で呼んでくれ!の訴えに眼をひん剥いて狼狽える。


「それは…いくらわたしがアーサシュベルト殿下の婚約者だからと言っても不敬では…」

「アッシュだ。」

グリーンの瞳が近づいてくるが、あまりにもの圧で目を逸らすことができない。


「エリアーナ、ふたりきりの時だけでいいからアッシュと呼んで」


わたしの隣に座っていた殿下の左手の指先が私の唇に触れた。


一瞬、なにが起こったのか、わからなかった。

触れられた唇が、殿下の指先から熱を感じとる。


「その可愛い唇でアッシュと呼んで。エリアーナだけが呼べる俺の名前を」


わたしの頬が急に熱を持つ。


「ア…アッ…シュ」


聞こえるか聞こえないかぐらいの小さな声で途切れ途切れ呟く。


殿下の瞳が大きく見開かれたのがわかった。


「…うれしい、ありがとう」


殿下はわたしの唇に指を置いたまま、春の柔らかい陽射しのような微笑みをした。

「春の殿下」恐るべし。

これが噂の春が来たような微笑み…


まともに食らって、クラッときた。


「ねぇ、もう一度」

眩しい微笑みで殿下からおねだりをされる。


無理… 絶対、もう無理ですから!

悪役令嬢を回避しようと足掻いている公爵令嬢は前世を思い出した王太子殿下に溺愛される

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

44

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚