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早朝。いつもより早く起きてしまったので、珈琲でも淹れよう。
隣で寝ている君を起こさないよう、ゆっくりベッドから下りる。
通り際に、廊下の姿見に映る自分を見つめる。
何故か変わらずある二つの傷の跡。
視力の弱い右目。
私は、何が為にもう一度生かされた?
地動説が定着し、浸透したこの世を見る為?
それとも、私に何か特別な…
いや、荒唐無稽だ、こんなの。考えたって仕方の無い事だ。
レースカーテンの隙間を貫くように、朝のリビングに陽が差し込む。
珈琲と、一枚のパンを用意した。
あとは…うん。 新聞配達は来ている頃だな。回収しよう。
玄関ドアのポストには新聞が届いていた。
手に取ると、とある記事が目に入る。
″社会現象を起こした人気小説 新刊発売″
オクジー君も、この小説を好んで読んでいた。
今度彼から借りて読んでみるか。
新刊の事は知っているだろうか?今日買ってきてやろうか…
…急に彼の事が気になりだした。
いつもふとした瞬間、この気持ちは私の頭に居座る。一度思考を広げてしまえば、それは留まることを知らない。
朝食の事など忘れ、寝室へ足を運ぶ。
彼はすうすうと静かに、まだ眠っていた。
仰向けで寝ている大きな体に跨り、徐々に顔を近づける。
いよいよ触れそうになる瞬間、オクジー君の目がぱちりと開いた。
「バっ…バデーニ、さん?」