テラーノベル
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12年前。
私は、あるSNSで偶然EXOを知った。
最初に私の目に留まったのは、二二だった。
botを通して二二のことを知り、そこから少しずつEXOのことを調べるようになった。
『Wolf』。
『Overdose』。
そして『EXO’s Showtime』。
何度も映像を見ているうちに、私はいつしか一人のメンバーを目で追うようになっていた。
――ヨル。
最初は、どうしてヨルが気になるのか自分でも分からなかった。
でも、笑っている姿を見ると嬉しかった。
メンバーと一緒にいる姿を見るのも好きだった。
気がつけば、写真を探すようになっていた。
動画を見るようになっていた。
そしていつの間にか、
「ヨルが好き」
それが私の中で当たり前になっていた。
一年、二年……。
時間が過ぎても、その気持ちは消えなかった。
気づけば――12年。
────────
12年後
2026年。
私は、久しぶりにEXO-L Japanに戻った。
そして、ずっと迷っていた。
「行きたい」
そう思っていたEXOのコンサート。
12年間好きだった人を、初めて自分の目で見る。
それは私にとって、とても大きなことだった。
私は聴覚障害がある。
だから、普通の人と同じように音を楽しむことは難しい。
コンサートで歌を聴くことも、会場の歓声を聞くこともできない。
それでも――
姿を見たい。
ステージに立つヨルを、自分の目で見たい。
そう思った。
仕事が終わってから向かうことになった。
急いで準備をして、東京へ向かう。
そして――
2026年7月11日。
千葉。
会場へ着いたとき、胸がいっぱいになった。
「本当に来たんだ……」
12年間、画面の向こうにいた人。
その人を、今日は自分の目で見る。
会場に入り、ステージを見つめる。
そしてヨルが姿を現した瞬間。
私は言葉を失った。
音が聞こえなくても分かる。
照明。
動き。
表情。
ステージから伝わってくる空気。
何より――
ずっと好きだった人が、そこにいる。
「ヨル……」
12年間の時間が、一気に胸の中へ押し寄せてくる。
最初にEXOを知った日。
二二を知ったこと。
『Wolf』を見たこと。
『Overdose』を何度も見たこと。
『EXO’s Showtime』を見て笑ったこと。
そして、いつの間にかヨルを好きになっていたこと。
全部がつながっているような気がした。
コンサートが終わったあと。
私はしばらく会場を離れられなかった。
「来てよかった……」
聞こえるかどうかではなく、
自分の目で見られたこと。
それだけで幸せだった。
────────
韓国へ
その経験が、私の中に新しい気持ちを生んだ。
「もっとEXOの思い出を作りたい」
そう思った私は、韓国へ行くことを決めた。
目的は観光ではない。
EXOの聖地巡り。
12年間好きだったEXOに関係する場所を、自分の足で歩いてみたかった。
写真でしか見たことのない景色。
昔の映像で見た場所。
EXOを好きになった頃の自分を思い出せる場所。
一つずつ巡っていく。
「12年前の私が知ったら、びっくりするだろうな」
そんなことを考えながら、私は街を歩いていた。
そして夕方。
突然、雨が降ってきた。
「え……傘、ない」
急いで近くのカフェへ駆け込む。
店内を見渡す。
席はほとんど埋まっている。
どうしよう。
そう思っていたとき――
「ここ、座ってもいいですか?」
一人の男性が話しかけてきた。
私は聞き取れなかった。
すると男性は、すぐにスマートフォンを取り出した。
画面に文字を打つ。
『ここ、座ってもいいですか?』
私は頷いた。
「はい」
男性が向かいに座る。
しばらくすると、彼の視線が私のバッグに向いた。
そこにはEXOのグッズがついていた。
彼がまた文字を打つ。
『EXOが好きなんですか?』
私は笑った。
「はい。12年くらい好きです」
男性が驚いた顔をする。
「最初は二二だったんです」
私は少し笑う。
「でも、いろいろ見ているうちにヨルが好きになって……」
そして、何気なく言った。
「もう12年間、ずっと好きです」
男性はしばらく黙っていた。
そして、ゆっくりスマートフォンに文字を打った。
『そんなに長く好きでいてくれたんですね』
私は頷く。
「はい」
そのときだった。
男性が少し迷うようにこちらを見た。
そして、マスクを外した。
私は固まった。
見覚えのある顔。
何度も見てきた顔。
12年間、好きだった人。
男性は少し照れたように笑い、スマートフォンをこちらに向ける。
そこには――
『僕がヨルです』
と書かれていた。
「……え?」
声が震えた。
目の前にいる。
夢じゃない。
画面の中ではない。
12年間好きだった――
ヨル本人だった。
雨音だけが、静かに窓の外から聞こえていた。
そして、この瞬間から。
私の12年間の「好き」は、
ただの憧れではなく――
一人の男性との物語へと変わっていくことになる。
第1話 終
コメント
3件
まーりさん、第1話読みました。12年もの間、画面越しに好きだった人を自分の目で見る——その瞬間の胸の高まりがひしひしと伝わってきました。特に、聴覚障害があるからこそ「姿を見たい」という想いが強くなったという描写に、心が動かされました。雨宿りのカフェでの偶然の再会……マスクを外して「僕がヨルです」と伝えるシーンは、まさに運命の一瞬ですね。12年の想いが、ただの憧れから現実の物語に変わる始まり。続きがとても気になります!