っ…少し…目眩が…また…熱が出てきたのかな…。熱を測っても、平熱。突発的なものだったのだろう。
学校へ。いつもどうり、何事もなく過ぎていく。授業も、部活も、普段と変わらない。でも、帰り道のときだけ、違った。
「早苗、帰るぞ。」
「わかってる。」
「でも、俺は帰りたくない。」
「どうして…」
「本当は、分かってるだろ。お前は。」
そうだよ。分かってる。家に帰ったら、また、虐待がおきる。帰りたくない気持ちも、分かる。でも、
「他に、行く場所がないから…帰らないといけない。」
「もう…嫌なんだ。」
「分かってる!でも…私には、何もできないよ…」
「…ああ…」
せめて、少しでも、楽になってくれたら…
「どこかに、寄ろうよ…」
「どこに…」
「あの場所…あそこなら、見つからない。」
「そうだな。」
「行こう。」
あの場所。夕焼けを見た場所。誰も、来ないから。
「なぁ、早苗。お前は、良いのか?ここにいても。」
「大丈夫だよ。きっと。」
「そうか…。」
彼は、いつもどうり。いつもと変わらない表情で、空を見上げてる。
「星が、よく見える。」
「ホントだ。綺麗…。」
「早苗…聞こうと思っていたんだけどさ、お前、何かあったのか?」
「何かって?」
「ぱっと見、いつもと変わらないのに、少しだけ、疲れた顔をしてる。」
今日…何も、なかったのに…いや…一つだけ…っ!また…目眩…。
「おい、大丈夫か?」
「大…丈夫…少し、目眩がしただけ。」
「帰ろう。今日は。」
「でも…」
「俺は大丈夫だから。」
「分かった…」
帰ることに。その帰り道。
「早苗…無理するなよ。」
「分かってるよ…あ…」
「おい!」
また目眩…倒れそうになった。
「おい、大丈夫か。」
あれ…意識が…
「おい!早苗!」
ごめん…怜…
起きたら、私は、病院のベットの上にいた。
「…起きたか…」
「私…どうして…」
「倒れたんだよ。」
「…ありがと。」
「ああ…」
扉が開く。
「早苗さん。」
医者だ。
「受け取り難いかもしれませんが…」
「大丈夫です。」
「そうですか…あなたには、脳梗塞が発見されました。」
「脳梗塞…?」
「脳の血管が詰まっているのです。そして、発症してから時間が経っており………」
そこから先の出来事は、覚えていない。ただ、分かったことは、私は、もうすぐ、死ぬと言う事だけだった——-。
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