第5話【わくわく】
ヒロイがキヨの動画を見終えた頃、キヨは、全然返信をよこさないヒロイにどきどきしていた。
ーここからキヨ視点ですー
ヒロイ…せっかく返信が来たと思って安心したら、また3時間ぐらい既読がつかなくなった…
どんだけ俺を心配させるんだよ…!!!
ピロリン
ん?
〈ごめんなさい!!!キヨさんの動画見ててメッセージ見てませんでした😭2度もごめんなさい😭😭😭😭😭〉
お、俺の動画見てたのか…
それならまあ、仕方ないか!俺の動画面白いし!!!
〈良かった。なら明日さっそく動画撮ろうと思うんだけど、予定は大丈夫?〉
〈はい!discordでキヨさんと話すんですよね?〉
〈うん、そうだね〉
俺はヒロイと会話をするのが楽しくて、メッセージが来たらすぐ既読をつけて話している。
すると、ヒロイから予想外なメッセージがきた。
〈あ、ごめんなさい!いまさっきカレンダーみてきたんですけど、明日美容院の予定があって…なので、やる時間が少しズレるかもです…!ごめんなさい😭〉
まじか…、美容院、遠かったらもしかしたら出来ないかもしれないのか…。
…ん?
俺は、頭に天才的な案がよぎった。
〈美容院が遠くて帰る時間長くなるんだったら、そのまま俺の家にきて動画撮る?〉
…….。
ヒロイから10分ぐらい返信が来なくなった。
こいつまた…!?
スタンプ連打でもしてやろうか、とイライラしながらヒロイとのメッセージ画面を見つめる。
すると、やっとヒロイからの一通の返信が来た。心のうちのイライラが一瞬で消え、ゆっくりとヒロイからのメッセージを読む。
〈いいんですか!?ありがとうございます!では遠慮なく帰りに寄らせていただきます!ごめんなさい!ありがとうございます!〉
感謝と謝罪を繰り返すメッセージが来て、俺は頭に『?』を浮かべながら了承されたのを嬉しく思い、家の掃除を始めようと掃除機を持った。
なんだよ!ヒロイの為に掃除するんじゃないからな!
…そういえば俺ら、ずっとXで連絡してるな…。コラボするならもうLINEとか繋いでもいいのでは?…まあそれは会った時に言うか!
ーコラボ当日ー
今日はヒロイが俺の家に来る日だ。
俺は1日前(昨日)にヒロイに俺の住所を送って、来てもらうことになった。一応全ての部屋は掃除機をかけたりして綺麗にしたし、お菓子もヒロイと会ったコンビニから買ってきたし、迎える準備はいつでもできている。
そろそろ来るかな…
まだかな…
まだ…?
…なんで俺、こんな急かしてるんだよ。
ピン ポーン
…きた!!!
俺は、一応確認のためインターホン越しで話しかける。
『はい…?』
[あっ、広つk…っじゃない間違えたヒロイと申しますっ!]
ひろつか…ね。こんなにすぐ本名教えちゃうとかばかだなぁ。
『どちらさま…ですか?』
〈えっ、?あ、え、でもここのはず…っ…〉
『っ…くくっ…くっ…(笑)』
〈〜〜〜っ!!!ばかキヨさん!!!一瞬騙されたじゃないですかー!!!早く開けてくださいこじ開けますよ!!!!!!!〉
『くくくっ…(笑)いや一瞬じゃなかっただろ笑はいはい、開けますね〜』
ヒロイ、かわいいなぁ。
ん?…かわいい?
〈早く開けてくださいキヨさん寒いですー!〉
『あぁ、ごめん』
俺はさっき自分の心の中で言った言葉を不審に思いながらドアをゆっくり開け、ヒロイを招き入れた。
「お邪魔しますっ!…わわわ、推しの家…いい匂い!!!」
『変態(笑)』
「はっ!?!?ふざけんなです」
ヒロイは怒った顔で俺を見てきた。
愛らしい。まるで猫だな。
…じゃない!YouTuber(俺のファン)にそういう感情は抱いてはダメだ。ダメ…。
「あっあの、動画いつとります!?」
『んー、広塚さんが落ち着いてからかな』
「え?」
『ん?』
ヒロイは、俺を驚いた顔で見つめてきた。
「な、なんで、ほほほ本名知ってるんですか!?」
『さっき言ってたじゃん、自分で』
「聞いてたんですか…萎え…..」
『ははは、ごめんね〜』
「絶対本気で謝ってない…なら私だって本名で呼んでやりますよ!!」
『俺の本名知ってんの?』
「うっ…」
『はは、ばーか。』
「ばかって言った方がばかなんですよばーか!」
俺はヒロイと他愛もない会話をしばらく交わした。そのひとときはだれにも邪魔されず、俺だけの時間。とても気持ちが良かったし、楽しい。
そして、会話をしている時に俺は気づいた。
会った時よりもヒロイは可愛く見えるし、いい匂いするし、ひとつひとつの動きが可愛く見えるし、家に上がってきた時や、隣に座ってきた時、手が触れた時、俺は、すぐ緊張して、心臓の音が止まらなくなる。
俺は、ヒロイが好きなんだ
こんな会ったばっかで、すぐ好きになってしまう俺はどうかしている。恋愛脳過ぎるかもしれない。まあでも、 どうせすぐ冷めるだろう。だってこういうことは何回もあったから。
「キヨさん!聞こえてますか!?」
『…うぁ!ごめん、なに?』
「ぼーってするの珍しいですね!ホラゲーそろそろ始めましょ!」
『あぁ、もう時間か。ハイハイ準備するね』
俺はさっきの考えを後に回そうと、動画の準備をサクサクと始める。
『じゃ、撮るよー』
「はい!!!」
『俺、事故物件に住むわ。』
『ども。今回はぁ、この【𓏸𓏸】っていうホラゲーしていくぞ〜」
「俺がふたり用のゲームを1人でするのかって?なわけないじゃないですか皆さん。今回はね!初めてのコラボということで!』
「みなさぁあああああん!おつおつ〜ヒロイだよおおおおおお!」
『うるさ』
「うるさい!?うるせえ!!今回は推しとのコラボで緊張してるの!!!みんな!!!夢のコラボだよー!!!!!ねえ視聴者みてる!?!?!?」
『…ごめん、ここカットするから言ってもいい?』
「どうしました?」
『俺よりもうるさいじゃん(笑)』
「あっえっ、ごごごごめんなさい!!!」
『はは(笑)元気でいい事だよ、続きしよっか、遮ってごめんね。』
俺は、順調にヒロイと動画を進める。
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