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「位置について、ヨーイ!」
ド!!!!! オオオオオォォォォォンンンンン………
ある昼下がりの体育の授業、毎年恒例の運動会のリレー競争の練習の為、スタートの空砲と同時に発生した轟音と土柱と砂埃が収まった跡には、
深々と刻まれた足跡を中心として広がったクレーターと、その縁の辺りでヤムチャしている一般生徒の屍の数々であった。
少しして、全身金属製の装甲に大リーガー養成ギブスめいた拘束具を着けた志子ちゃんがグラウンドを一周して駆け込んできて、
「あれ?次のランナーの方はどちらに……?」
と不思議そうに見回していたのだが。
「志子ちゃん、ゴメン。頑張ったけどやっぱり無理そうだわ」
頭を下げる俺と、ウム、とばかりに頷く無被害生徒達。
何が悪かったと言えば、俺の不用意な一言だろうか。
「旦那様、体育祭とはどの様な催しなのでしょうか?」
と言う無邪気な質問に、
「うん、紅組・白組とクラス毎に所属した組の勝利の為に、全員が持てる力の全てを尽くして競い合うお祭りだよ」
と答えた。答えてしまった……
「それは素晴らしい催しですね!私も精一杯頑張ってみようと思います!!」
と無邪気にハシャイだ志子ちゃんが事前予行練習でグラウンドに大穴をいくつも開けて、危機感を覚えた一般生徒達の抗議?助命?活動が興りそうだったので、急遽ハンデを付けるべく、様々な手を打ったのだが、その結果がさっきのアレである。
これでも大分マシになった方なのである。
初期の頃はソニックブームで校舎のガラスが一枚残らず割れたりしたし。
高ランクの冒険者に依頼してデバフ掛けてもらったり、黄泉津大神(イザナミ)様に呪いを掛けてもらったり、
その上でドワーフ製の動作阻害用の拘束具めいたサムシングを装着してもらって、
その結果がご覧の有様である。
うん。正直神様甘く見ていたわ。
こちらでの日常生活でそんな素振りが無かったのは相当に気を付けてくれていたんだなぁ……
とはいえ、このまま志子ちゃんと淡姫ちゃんが体育祭に参加したら文字通りの血祭りが開催されてしまう……
だけどあんなにも楽しみにしていたのになぁ……
曇らせたくない、この笑顔。
俺は覚悟を決めた。
小野麗尾興業㈱は俺に万が一の事があった際に遺してしまう人・召喚モンスターの為に立ち上げた会社であるが、
何だかんだで結構な規模と影響力を持ってしまった会社でもある。
ここで二人の希望を叶える事位……どうにかなると……いいなぁ……
「と、言う訳で会社の総力を挙げてわあるどわいどな規模のイベントを開こうと思うんだが。だが!!!」
「だが、なんだって?しがない酒屋の息子には協賛会社に名を連ねる事すら躊躇われるんだが?」
「拙者の父上の事務所もとてもとても……」
「新聞部も広報活動は難しいッスよ」
「先生、流石にそういった事のお手伝いは難しいわ」
放課後、冒険者部室にて緊急会議を開いた俺に対する第一声がこれである。
「言い方が悪かった。金とかコネ云々じゃないんだ。知恵を貸してくれ」
あからさまにホッとする面々。
「で、最初に開催の候補地なんだが。国立競技場の貸し出しが無理そうなら自前で候補地見繕って土地の買収から始めようと思うんだが」
「おいおい、まずはイベントの内容からだろ?」
「オリンピックと被りが薄い内容で肉体競技中心の構成で。SASUKEェ!も入れる」
「団体競技はどうしますかな?」
「無しにするとイカンだろ。盛り下がる。とはいえ何なら人が対抗できそうか……」
「ちょっと待て。コンセプトは何だ?」
「参加資格:神に挑む気概を持っている事。人よ、挑め。的な?」
「あ、そういうコンセプトですので文章先生は強制的に参加登録しておきますので」
「待ってください!」
「大天使カルテッド持ちの方に拒否権がおありだとでも?」
冒険者登録の初回講習中のダンジョンで4大天使のソウルカードを”偶然”手に入れてしまった注目の大型新人冒険者として名を馳せた先生だし。
聖女認定の噂は噂で済むのか……
「賞金は150億もあれば足りるよね?」
「相場は知らんが、その金額はどうなんだ……?」
「協賛が増えれば余裕でござるか……?」
流石に国から補助は出ないだろうけど。
「と、言う訳でまずはイベントのガワ企画して国立競技場に打診する所から行ってみようか」
「な、何か聞いてはいけない事を聞いているような気がしてくるっス……」