テラーノベル
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佳奈子が連行され、嵐のようだった病室に静寂が戻る。手錠をかけられた輝道だったが、その足取りは驚くほど軽かった。7階からの墜落による痛みに耐えかねてか、あるいは張り詰めていた緊張が解けたせいか、輝道の身体が不意にぐらりと傾く。
「おい、大丈夫か」
勇一が咄嗟に手を伸ばし、輝道の肩をガシッと抱きとめた。輝道もまた、はにかむように兄の肩に腕を回す。ガチガチの刑事と、裏社会の逃亡犯。本来なら許されないはずのその姿のまま、二人は支え合うようにしてゆっくりと歩き出し、病室のドアへと向かった。去り際、二人は同時に振り返り、ベッドの上で未だに状況が掴めず、信じられないものを見る目で震えている朝原卓を見た。10年前、共に文芸部で笑い合っていた親友。形は違えど、それぞれが必死に生き抜いてきた10年間。勇一と輝道は顔を見合わせると、同時に吹き出し、悪ガキのように笑いながらこう言った。
「卓は変わんねぇなー。まだ寝てるぜ」
「本当だな。昔から肝心な時にいつも寝てやがった」
「はぁーこういう時に跡部さんに会いたいな」
「だなー」
その顔には、刑事の冷徹さも、殺し屋の暗さもなかった。あったのは、あの旧校舎の部室で、くだらない話をして笑い合っていた高校生の面影だけだった。
「さあ、行こうぜ、輝道。積もる話が山ほどある」
「ああ、兄さん。取り調べなら、いくらでも付き合ってやるよ」
肩を組んだ二人の背中に、朝の光が眩しく降り注ぐ。彼らの進む先にはまだ多くの謎と戦いが待っている。しかし、もう二人が離れ離れになることはない。廊下を歩いていく二人の笑い声が、病院の静かな朝にいつまでも響き渡っていた。
しかし……
コメント
1件
うわあ…涙出そうになったよ。10年ぶりに戻ってきた「兄弟」の空気感、本当に丁寧に描かれてた。刑事と逃亡犯っていう立場を超えて、肩を組んで悪ガキみたいに笑う二人の姿に、思わず胸が熱くなった。卓くんを置き去りにして「寝てる」って笑うところ、昔の文芸部の空気がそのまま蘇ってて、その優しさが切ない…。でも「しかし…」って続くんだよね?もう、この先が気になって仕方ない。続き、絶対読みます🌙