「嘘だろ…」
自分の耳を疑い部屋の窓を開けると
「リョウコちゃ~んっ」
とはっきり聞こえる。
俺が部屋を出ると同時に佳佑も出て来た。
深夜だがそんなことは関係ない。
ドドドッ……と階段を駆け下りると、1階の和室で寝ていたはずの両親も揃って出てきた。
「あれ…何?」
「酔っぱらい」
「良子ちゃんが絡まれてるの?一人で怖いでしょうね。子どもだけでなくあなたも行ってきて」
「おう、あれ恵麻ちゃんか」
父さんと俺たちがリョウの家に行った時には、クソ人間の親がクソを引っ張っていたが酔っぱらいの力は強い。
隣の家の窓からも人が覗いている。
「恵麻ちゃん、飲み過ぎ。帰れ」
父さんが言おうがお構い無しのクソが‘ヨシコ’と連呼し始める。
親たちは何事かわかっていない中、俺と佳佑の苛立ちは限界を超えた。
「最低以上に最低…腐ってる」
はっきりとそう言った佳佑に続き、俺は言った。
「おじさん、おばさん、とりあえず早く家に入れないと俺通報するから」
「通報って…」
「何があったか教えます。そしたら俺の気持ちがわかると思いますよ」
自分の家に押し込まれると同時に玄関で寝たクソを放って
「話を聞きたいから上がってくれ」
とクソの親に言われた。
「俺たちこいつと縁切ったんで、もう幼なじみでも友達でもありません」
「だからここで事実だけお伝えして失礼します。長居はしたくない」
父さんもいたが、父さんは俺たちを窘めることなくじっと聞いていた。
俺たちは、今日の同窓会でクソ本人が言っていたことを全て伝え
「以上が事実です。その後のこの行動です。異常ですよね?」
「それは…お酒を飲み過ぎたから…」
「だから今まで俺たちを欺いていた事実を漏らしたんでしょうね」
「俺たちは今後挨拶ひとつする気はありません。では失礼します」
俺たちが玄関を出ようとすると父さんが
「白川さん、今回のことは息子たちに言い過ぎだと言うつもりはありません。同じ子を持つ親として……女の子を持つ親として、良子ちゃんと佐藤さんの気持ちを考えてください。よーく考えて……」
最後は声を震わせて言うと先に玄関を出た。
「良子ちゃん…うちへ久しぶりに飯、誘え。明日でも明後日でも」
「「わかった」」
だが……それが叶うことはなかった。