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苦手な方回れ右
それではスタート
その日は、放課後の空気がいつもと違って見えた。
「ゆあんくーん!」
高めの声。
廊下の向こうから駆け寄ってきたのは、クラスの女子だった。
「この問題さ、教えてほしいんだけど」
「え? あ、うん」
ゆあんくんは少し困ったように笑いながら、ノートを受け取る。
その様子を、教室の入り口からうりは見ていた。
――近い。
距離も、声も、笑顔も。
胸の奥が、じわっと熱くなる。
「……」
声をかけるタイミングを逃して、うりはその場を離れた。
ーーー屋上ーーー
風に当たりながら、ベンチに座る。
“ただ勉強教えてるだけ”
“俺が気にすることじゃない”
頭ではわかっている。
でも、心が言うことを聞かなかった。
しばらくして、屋上のドアが開く。
「うり?」
ゆあんくんの声。
「ここにいたんだ」
「……うん」
隣に座る気配。
でも、うりは顔を向けなかった。
「さっきのさ」
ゆあんくんが、少し間を置いて言う。
「見てた?」
「……見てた」
空気が、張りつめる。
「誤解しないで。頼まれただけで――」
「わかってる」
うりの声は静かだった。
「わかってるけど……嫌だった」
その言葉に、ゆあんくんは黙る。
「笑ってたでしょ」
「……無意識だった」
「それが、嫌」
風が強く吹いて、うりの前髪が揺れる。
目が、少し潤んでいた。
「俺ね」
声が震える
「ゆあんくんが、誰かに取られそうになるの、怖い」
ゆあんくんは息をのんで、うりの方を向いた。
「俺は、取られない」
「でも……」
「俺が好きなのは、うりだけ」
その真っ直ぐな声に、うりはようやく顔を上げた。
「……本当に?」
「本当」
間髪入れずに答える。
「誰に笑いかけても、うりのこと考えてる」
その言葉が、胸に刺さって、うりはぎゅっと制服の裾を握った。
「ずるい……」
「え?」
「そんなこと言われたら、怒れない」
ぽろっと、涙が落ちる。
ゆあんくんは慌てて、でも優しく言った。
「ごめん。気づけなくて」
そっと、うりの手に触れる。
「嫉妬していい。言っていい」
「……ほんと?」
「恋人なんだから」
うりは少し迷ってから、ゆあんくんの胸に顔をうずめた。
「……独占欲、強いって思われる?」
「可愛いって思う」
「ばか」
小さくそう言いながら、でも離れなかった。
夕焼けが、二人を染める。
嫉妬は、痛くて、苦しくて、
でもそれ以上に「好き」を教えてくれる。
「ねえ、ゆあんくん」
「なに?」
「次からは……俺のところ、ちゃんと戻ってきてね」
「うん。必ず」
指を絡めて、強く握る。
不安も、嫉妬も、
二人でなら、乗り越えられると信じられた。