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1989年11月9日、ベルリンの壁崩壊。
そして、今日、1990年10月3日、俺は嫌な胸騒ぎがして、俺の主達の居るドイツへ全力で走った。
ドイツへ着くなり俺の分身達は、俺の中に戻って行った。
ふと、近くにある公園を見ると、東の主が消えかかっていて、泣きながら西の主が、抱きついていた。
「兄さん、嫌だよ」
「嘘、だよな」
俺の口からポツリと声が漏れた。
俺はこんな事実を受け入れられなかった。いいや、それは違うな。受け入れたくなかったんだ。受け入れてしまえば、本当に、東の主が死んでしまいそうで。
俺は、いずれ、東の主が死ぬのを知っていた。
東の主と俺は、目の色が違うかったのだ。俺達ドールにとって目の色というのは、とても大切で、主と自分が繋がっている、主従関係だ、というのを示すものでもあるのだ。
愛なら、日本と同じ紅色の瞳。鈴なら、にゃぼんと同じ桃色の瞳。兄貴なら、ナチスと同じ、赤色。という感じだ。だが、俺と東の主の瞳の色は違う。だから、東の主が死ぬかもしれないというのをなんとなく知っていた。理解していた。でも、俺はそれを認めたくなかったのだ。
「そうだ、兄貴から貰った万能薬があった」
念のために持ってきた万能薬を東の主に急いで飲ませた。