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果汁ドロップ
いつものスーパーで18時を超えると安くなるドロップがある。
偶然土曜日の18時過ぎに出会って何となくで買い始めてたドロップ。
今となっては仕事の味方である。
ただのドロップなのになんだか特別な気持ちになるそんな不思議なドロップ。
──────
episode1 甘い
小説の編集室は随分静かな空間だ。
俺が担当をしているのはSNSにあげられたバズった携帯小説の紹介ページの編集。
小説マガジンを刊行する会社なので駆け出しの俺は作家さんのものには携われない。
いつかできるようになりたいと思いながらも今ある仕事をしっかり大切にする。
コピーを取って席に帰ろうとした時同期の志津蒼太に事故キスという名のものをしてしまった。
「…ごめん、志津!大丈夫か、?」
「あ、うん、なんか甘…光嶋なんか食ってる…?」
「甘い…?、果汁ドロップかも、いやそれよりほんとごめんな怪我とか紙で切ったりとかしてないか、?」
たった数秒唇が触れ合っただけなのにそんなにすぐわかってしまうものなんだろうか。
それと同時に、ファーストキスが事故キスになってしまったことを後に思い返す。
恥ずかしさと申し訳なさしかないキスなんてしたくなかった。
「あ〜ドロップね、1個ちょうだい」
「…じゃぁ俺の机まで来て、」
episode2 図星を突くな
相変わらず編集に追われてる編集部の室内はパソコンのタイピング音が鳴り響き続けていて俺たちの事故なんて無かったような雰囲気だ。
そのお陰で気まづくならずに済むなのなら膨大な仕事量に感謝が尽きなかった。
自分の机に戻りドロップを手に取りあげようとした瞬間耳元で囁く。
「休憩室一緒行こ、俺ここで飴食えない…」
「しかたなねぇな笑普通に食べればいいのに笑」
腕を掴まれて休憩室に向かう。
いつでも使っていいはずなのになんだか悪いことをしているみたいでドキドキと心臓の音が鳴り止まない。
「さっき食べたの何味?」
「えっと、確かりんごかな。」
「じゃぁそれ、それがいい。」
早く口に入れろと言うような顔で口を開けて待つ。なんでこんなに恋人みたいなことしなきゃいけないんだ。と思いながらりんご味を探すが中々見当たらない。
「…ね、まだ?」
「ごめん、俺が食べたやつが最後だったわ…
他の、、、」
ただの同期にキスできるわけない。
こいつ俺が好きなのか。
勘違いしていいのか、と思わせるようなさっきよりも長いキス。
「ん…なが、息できない、」
「そんなに、?お前何初キス?」
「図星を突くな…」
りんごのためにキスされたんだろう。なのに
りんごのためにキスされるのはなんだか嫌だ。
episode3 ちゃんと話してください
夕方の休憩室は意外と人が入ってこない。
なぜなら折り返しの電話が沢山来るからだ。
絶対人がいる時間を狙ってこの時間はかけられやすいのだろう。
だから二人きりのまま。
「なんで急にキスしたんだよ…そんな事故キス上書きしたいなら他の女としろよ…ちゃんと理由を話せよ、、」
「俺お前が好きなんだよね。
入社式で俺を助けてくれた時から」
とんでもない一言が耳を刺して棘を生やしたようだった。嬉しさよりも驚きが先にきて、
想像もつかない天と地がひっくり返ってしまうよほど。思い返せば入社式の隣には確かに志津蒼太が座っていた。
急にもたれかかってきて、熱くて咄嗟にペットボトルの水を渡して飲ませて一緒にロビーに出て
響いた声を聴きながら相手の迎えのタクシーを待った。
「そんだけやん…惚れる要素ないし」
「お前の主観だろそれ、俺はここで惚れたってだけ。関節キスしてんだから今更事故キスが嫌とか思わねぇよむしろラッキーだったわ」
確かに今話したことは全部俺の主観だった。
蒼太がどんな気持ちとか考えとか汲み取れてなかった。だから、こいつは俺よりも早く出世できたのだろう。
「あごめん…そうだよなありがとう
正直俺驚いててさ…ちょっと時間欲しい」
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「時間ってどれくらい…?」
「10分くらい、ちょっと落ち着きたい」
沈黙が流れる10分間答えは決まってるのに
なんだか驚きみたいなのが抜けきれなくて
自信もっていいよと伝えたいのに伝えれない。
冷たい缶コーヒーがだんだん自分の温もりを伝わっていってぬるくなってしまいそう。
今の俺みたいだ。
「なんで泣いてんだよ笑」
「だって俺、自信もっていいよって言いたいのに
俺のこと好きなのが驚きで抜けきれなくて自信もって言えないんだもん…ごめん、」
「ばか、どんな声色でも嬉しいわ笑
いいよって言ってくれるの?俺じゃぁ今日から彼氏?」
episode4 りんご味
休憩室で泣きじゃくっていたら、編集部名物になってしまった。
どうやら、休憩室を使おうとした女性スタッフが
俺たち二人で寝ていた事を目撃したらしく
それも机にもたれかかってドロップ缶を出しっぱなしで何粒かこぼしてたとか。
それを他同期が、掃除してくれたりブランケットをもってる社員がかけてくれたりと、優しくしてもらった。なんでここまで優しくできるのかそれは編集部のスタッフはこういう珍事件みたいなのが好きという伝説があり、この伝説は設立以降も知らないうちに引き継がれ続けていたのだろう。
「んやば、今何時だよ。20時30分
やばいあと30分で門閉まるじゃねぇか…
洸希!起きろやばいって…おい、光嶋!」
「…え、やばい俺たち寝てたってこと、!?
えやばいやばい、荷物。荷物どうにかしなきゃ…」
誰もいない編集室の電気は俺の卓上ライトのみだった。
急いで互いの机に戻って荷物をまとめる。
「蒼太準備できた?もうエレベーターのとこ行かなきゃ止まるよ」
「大丈夫、洸希いくぞ走れるか?」
急いでエレベーターに乗り込むこれを逃したら階段を下ることになっていた。
上がった息を整えながら9階を下っていく。
「よかった間に合って…
あ、りんご味まだあった。ほら口開けて。」
「うん、美味…けどお前の方が美味いかも
色んな味がしてうまい、得した気分になる」
「ん…っお前なんでそんなすぐキスしてくんの…」
「好きだから」
いつものスーパーで18時を超えると安くなるドロップがある。
偶然土曜日の18時過ぎに出会って何となくで買い始めてたドロップ。
今となっては仕事の味方である。
ただのドロップなのになんだか特別な気持ちになるそんな不思議なドロップ。
こんな気持ちになるなんてトラップだ。