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そこは質素な黒と茶色の針葉樹でできた森の中央だった。そこにルゥーダーとその母が暖かい焚き火を囲んでいる。
ルゥーダーの母が言った。
「青い火花の力で守られた巨大な黒い森に永遠の衰退と死を」
ルゥーダー
「先に進んだ者たちは殺さなくても自滅する」
ルゥーダーの母
「ウロボロスの世界樹と同じくらいの年月を生きるのなら自滅とは言わない」
私の意識はどうやらルーダーと呼ばれる男性の体の中のようだ。私がそれに気付くと意識は急速に上へと向かう。
…………
7月26日。
翌朝。私はいつもよりも1時間30分も遅く起きてしまった。いつもは6時00分に起きるのに……それから、朝食や着替え。今は無論7時30分である。
完璧に遅刻である。
私は青くなった顔で、携帯の目覚まし機能であるアラームを調べる。目覚まし時計は家にはなく、いつも携帯の目覚まし機能で起きていた。昨日は信じられないことに、毎日の習慣の目覚まし機能をオンするのを忘れていたようだ。
私は目覚まし機能を明日のために忘れずに午前6時にONにした。急いでテレビを点けると丁度、ニュースの天気予報で、快晴になるとアナウンサーが教えてくれるところだった。
朝食のいつものコンビニ弁当と歯磨き、何時も通りのことを遅く起きた時のぼんやりとした頭でのろのろとし、青い顔を洗う。
窓の外には遠くに曇り空が少し残っている程度だ。昨日の嵐のような天気が嘘のように去って行った。
私は急いで、アパートを黒いジーンズと灰色のTシャツを着て転がり出る。最近から雨
水管工事をしているようで、交通誘導のおじさんが挨拶をしてきた。いつもは交通誘導のおじさんと顔を合せた事はない。私は未だにぼんやりとした頭で挨拶を返し、駅までの住宅街の小道を辛抱強く半ば諦めたかのように足早に歩いて行った。
いろいろな職場をテンテンとしていた私は、「エコール」に入ってからは5年間も無遅刻無欠勤だった。
住宅街から、知り合いのおばさんが、ほんのちょっと世界を洗うような、朝日を浴びる庭の花に水をやりながら、
「あら、今日は遅いのねぇ。お天気ちゃんと晴れるのかしら」
と、驚いていた。5年も無遅刻無欠勤だったのがそうさせるのだろう。それにしてもいい天気だった。
「おはようございます……。この前はありがとうございます」
私は諦め顔で挨拶をした。ちょっと前に壊れかけた自転車を直してもらった。