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免許は無い。自動車が高いという認識を前から持っているからだ……。
昨日の頑丈な赤レンガの喫茶店の前を駆け足で通り、大きな公園の真ん中を突っ切るとロータリーに出た。行き交う通行人は、いつもは背広姿しか見なかったが、今日は遅くに来たせいか学生服や私服が目立った。時間帯が少し違うだけで、その場の雰囲気も景色も微妙に違ったものとなる。
今日はいつもとかなり違った陰鬱な気分でホームに立っていると、通勤快速ではなく普通列車が来た。この電車に乗るのもこの五年間で初めてのことだった。
電車の中は普通列車だけあって、学生と背広とで大分混雑していた。それでも、私は座席に座ることに成功した。丁度ここの駅で降りる人の座席が空いたのだ。右側に背広を着た男性、左側には女子大生らしい人が二人、挟まれる感じになった。
電車で三駅。だいたい10分くらいだ。私は仕事に遅刻したことを中村・上村と谷川さんに、どう弁解しようかと考えていると、急に眠気が襲ってきた。
…………
まどろむ意識で無理に考えていると、急に辺りが薄暗くなりだした。
電車の照明が消えかかっているのかと上を見ると、すべての照明は闇にすっぱりと覆われていた。
周囲がどうもおかしい。それに冷房が効きすぎているみたいになんだか氷に囲まれたように寒くなりだした。
目の前の手摺りを掴んでいる人たちは、服や手足、そして頭部はよく見えるのだが、顔の鼻の上、つまり目の位置だけが日陰になっているかのように暗くて見えなくなっている。
「なんか暗いわね」
と隣の人が呟いて辺りを見回す。
左側の大学生らしい人は、ピンクのワイシャツと緑色のスカートの服装で、黒い髪はツインテールをしている。均整のとれた顔、クリクリした眼の可愛らしい小柄な女性だった。
「それと、気持ち悪いよね……」
その小柄の隣に座っているほっそりが言った。青いノースリーブと黒のジーンズ。そして、スラリとした体、茶色い髪のソフトソバージュ。切れ長の目の凄い美人である。
私は右側に目を向ける。背広の男性は、やはり目のところが暗くなっていた。
突然、悲鳴が車内に響き渡る。小柄の女性だ。小柄の女性が周囲の人々の目の辺りの暗さや現状を不気味がったようだった。
「何これー! 怖い!」
小柄の女性が泣き叫んだ。ツインテールを振り乱し、