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「蜂楽!」
「あいよ!」
2種の籠った声が横から聞こえ、次に聞こえたのは発砲音と何かが破裂する音だった。おそるおそる知里は目を開くと、そこにはゾンビではなく、2人の銃を持った少年だった。
サイバーパンクな衣装に身を包み、1人は黒髪に青の瞳をした少年で、もう1人は茶髪にインナーに黄色が入った個性的な少年だった。しかし、1番目を引くのは彼らの口元を覆うガスマスクであった。
「こんな危険区域Cのエリアになんで女の子が……しかもマスク無しで……」
「よく、アンデッドにならずに済んでるね〜さっきの様子からまだ人のままっぽいし?」
「どうするか……一旦、保護して本部に戻った方が良さそうだよな」
「そう行きたいけれど今日の任務って核の破壊でしょ?本部に戻ったらさらに荒廃化が進んでここもそろそろ危険区域Aになるんじゃない?」
知里の目の前で繰り広げられる会話は、わからない単語で埋め尽くされており自分はまだ夢の中にいるのかと肩を落とす。ふと、彼らを挟んだ向こう側に見慣れた影を見つける。
このわけのわからない世界に共に来た黒猫だった。唯一自分が知っている存在に、疲弊した重い体を起こして黒猫へと駆け寄ろうと彼らの間を抜ける。
「え!?」
「ちょ……!」
「待って!早く夢から醒めさせて!」
黒猫は駆け寄ってくる知里を見つめるも直ぐさま塀へと飛び乗りそのままどこかへ行ってしまう。
「え、このエリアに変異してない黒猫?」
「あ……ちょ、君!」
知里は黒猫を追いかけようとするも限界が来た彼女の体は動かず地面へと崩れ落ちる。それを見た、黒髪の少年は知里へと駆け寄り、上体を起こし顔をのぞき込む。顔は青白く、呼吸も浅くなっており明らかに体調が悪いことが彼、潔世一が見てすぐに分かることだった。潔は、すぐに自身のつけているマスクを知里に付けると彼女を抱え自身の相棒、蜂楽廻に声をかける。
「本部に戻ろう、蜂楽。この子、さすがにここの黒霧にやられてる」
「OK」
そう言い知里を抱えた彼らは腕に着けた時計に目をやる。
「プルアウト」
唱えられた言葉に反応するかのように腕時計は光だし、彼らの姿はパズルのピースになるかのようにバラバラになっていく。そして、そのまま知里を連れた彼らの姿は完全に消え、ピースは冷たく吹く風と共に塵となっていった。