テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

その夜、電気をつけたまま布団に入った僕は、眠気に逆らいながら目を閉じていた。心の中では、「大丈夫、大丈夫」と何度も唱えていたが、安心にはほど遠かった。
夜中──再び、足音が始まった。


今度は階段の軋む音に加えて、かすかな鼻歌のようなものが混じっていた。低く、湿った声で「ふふふん…」と何かの旋律を繰り返している。はっきり聞こえるわけではないのに、耳の奥に直接届くような、不快な響き。


そして、またあのノックの音。


「コツ、コツ……コツ」


だが今度は、間を空けずに4回目が続いた。


「コツ」


その瞬間、僕のスマホが震えた。画面には通知も着信もない。ただ、ただ震えただけ。そして──部屋の片隅から、かすれた“声”がした。


「……どうして逃げたの?」


耳元で囁かれたような錯覚に、僕は飛び起きた。部屋のどこにも人の姿はない。でも、確かに聞こえた。帽子を被った“誰か”の声。低く、寂しげで、怒りとも悲しみともつかない声。


その声に反応するように、机の上に置いていたお守りが「カラン」と音を立てて落ちた。拾い上げようと手を伸ばした瞬間、僕は机の引き出しが少し開いていることに気づいた。何かが挟まっている。引っ張り出してみると、それは一枚の写真だった。


知らない風景。霧のかかった森の中、ポツンと立っている人影。帽子を被って、こちらに背を向けている。


「誰だよ…これ…」


すると、写真の裏に、細い字でこう書かれていた。


「まだ一人で行かないで」


その言葉を見た瞬間、背中に氷を流し込まれたような寒気が走った。


──この写真はいつから、ここにあったんだ?

──なぜ僕の部屋の引き出しに?


恐怖がピークに達した時、再び声がした。


「……つれてって」


小さく、しかし確かに。


僕は、お守りを強く握りしめながら、次の日、神社へ向かう決意をした。

このままでは、僕は“あの誰か”に連れて行かれる。そんな確信があった。

桜井家の本当にあった怖い話

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

11

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚