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【🍌視点】
生々しい傷口と、スーツに滲む血が俺を混乱させる。
まだ呼吸がある筈。まだ間に合う筈。
手を伸ばして、早くしなきゃ死んじゃうから。
そう思っても手が震えて、動けなくて。
気づけば、手の先から足の先まで冷たくなる貴方。
「ぼんさん,,,,帰ってきてよ,,,,」
貴方の体に縋る自分が、馬鹿馬鹿しくて。
もう助からないって分かってるのに。
この人の事だから、サボってるのかなとか悪戯かなとか。
現実に向き合いたくなくて、自分の中で言い訳を作って。
サングラスの下に見える顔は、安らかで。綺麗な。
大きくて冷たい手を握りしめても、話しかけても何も返ってこない。
貴方の体にそっと顔を埋めると、少し焦げ臭い苦い煙草の匂いがする。
ただ、その匂いが心地よくて。
血の錆臭い臭いを掻き消すように。
嗚呼、こんなふうに甘えられたら、貴方が死ぬ前に貴方の胸に飛び込んで抱きしめて。
そしたら、優しく抱き返してくれるかなぁ…。
end